ガブリエラ戦記I 白兎騎士団の窮地 (ファミ通文庫)

【ガブリエラ戦記 1.白兎騎士団の窮地】 舞阪洸/優木きら ファミ通文庫

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清純な乙女だけで構成される鋼鉄の白兎騎士団──類まれな機転と発想によって、入団後1年も経たずに団長となったガブリエラ・リビエラ・スンナは、まだ若くあどけない少女だった。そんな彼女の就任直後、騎士団は未曾有の危機に直面する。バスティア大陸の中でせめぎ合う大国は活発に動きはじめ、否応なく戦いに巻き込まれていくガブリエラ達。団長としての真価が問われるその局面で、果たして彼女は団を導き、勝利を得ることが出来るのか!? 最強乙女騎士伝説、開戦!

ガブリエラが団長になったことで装いを改め、【鋼鉄の白兎騎士団】からこの【ガブリエラ戦記】という新シリーズへと移行した本作。てっきり、タイトルを変えて仕切りなおしをしただけだと読む前までは思っていたのですけれど、基本的なところは勿論変わっていないのですが、より舞台が大きくなり、本格的な戦記物になった、という感じですね。
前シリーズでは、ガブリエラが所属する雛小隊はレフレンシア団長代理の肝煎りで彼女の戦略、謀略、策謀を実行に移す裏方の実働部隊、みたいな扱いで影に日向にと駆けまわりつつも、その活動内容はどちらかというとイリーガルな方面に寄っていた。まだ、本格的な戦争が起こっていなかった、というのもあるんでしょうね。
ところが、今回からガブリエラが騎士団の団長へと座り、同時に白兎騎士団のパトロンであるベティス大公国と、ルーアル・ソシエダイ王国との本格的な戦争が起こるに至り、物語は数千を超える軍勢同士が各地へ侵攻し、都市を攻略し、激突するという展開へと突入する。
奸智を極めるガブリエラの智謀も、そこ矛先は敵の軍勢をきりきり舞いさせる奇抜な戦術と、敵首脳部を惑乱させる奇想天外な戦略という大局的な舞台で振るわれ、敵も味方も含めた国家という巨大な組織を相手取り、戦争そのものを左右する立場となったのが、この【ガブリエラ戦記】という新シリーズなのである。
実際、これまで小競り合いだった合戦は、何千もの軍勢がまともに激突し合うものとなっているし、ちゃんと白兎騎士団が直接介入していない戦場も、情勢に関わりある以上しっかりとその流れが描かれている。本気で戦記物をやろう、という気概は細かいところにも現れていて、本作、イラストの挿絵以外にも地図に兵棋を並べて戦況の推移を記した戦況図を、数ページに渡って掲載している。視覚的にもこれは戦況を理解しやすくて非常に助かったのだが、ライトノベルでこれをやるにはかなり決断が必要だったはず。他じゃまず見たことないものね。

と、前シリーズからかなり大胆に歯車を入れ替えてきた感はあるが、それはどちらかというと描かれる舞台、ガブリエラたちが活躍するステージの段階があがっただけで、彼女らの様子はというとほとんどいつもどおりだ。あの気の抜けた弄り合いと、ガブリエラの暢気そうな顔をして暗黒大魔王と慕われる腹黒い智謀に敵も味方も口をあんぐりと開けて度肝を抜かれる様を楽しむのも変わらない。
その変わらなさは、ガブリエラの貫禄にも出てしまっていて、まだあんまり団長っていう感じにはなっていないんですよね。さすがに新米騎士の段階は通り過ぎているけれど、前シリーズ後半のなんとなくレフレンシアの知恵袋、もしくは騎士団の軍師役、みたいな役どころからはあまり変わっていない気がする。トップに座ったとはいえ、担がれた御輿に乗っているだけという感じ。まあ、レフレンシアによって御輿に担がれたのは紛れもない事実で、実質レフレンシアが団やベティスとの交渉を取り仕切っているのも間違いない話ですしね。
まだ一年生のガブリエラに、いきなり団長としての貫目を見せろ、というのも厳しい話ですし、そこはそれ、経験を積んでいけば自然と備わっていくものなのでしょう。立場は人を作る、と言いますしね。

しかし、今回ガブリエラがひねり出した敵を陥れ、殆ど被害なく勝ってしまうというあの作戦は、実のところあれですよね。よく、私なんぞはゲームの信長の野望シリーズで使った戦術です。
でも、現実でやるとなると……ガブリエラが黒い黒いと言われるのも仕方ないな、こりゃ(笑
この作戦、何気に都市の市民に対してもかなりキツい状況を強いてるんですよね。元々、敵国側の都市であった以上、敵軍も無茶しないだろうという判断はあったにせよ、極限状態になれば何をしでかすかわからない危険性は無視できない確率であったわけで、ガブリエラがそれを考慮に入れていないはずもなく、彼女が決して「優しい将」でないことが理解できる。
怖いけど、頼もしい話である。

さて、今回はこのガブリエラが鮮やかに勝利を収めた裏で、敵ルーアル・ソシエダイ側もまた別の戦場で鮮やかすぎる大勝利を得ており、どうやらそこで見事な指揮を見せた敵国の女将軍こそが、当面の白兎騎士団の好敵手となるっぽい。恐ろしくやり手な才女というのは伝わってきたけど、まだまだ人となりも明らかでないので、敵側もこの調子でもっともっと掘り下げていって欲しいな。

アスカ姐さん、なんかジアンを自分の本職に引き抜きたいと思ってるみたいだけど、その娘、引退したら某国の国王の側室になるの決定してるから多分無理(笑
ただ、安穏と暮らしたいと言いつつ、そういう生活耐えられないみたいだから、側室やりながら防諜組織でも作ってその頭目にでもなりそうなんだよな、ジアンってw

舞阪洸作品感想