プリンセスハーツ 〜これが最後の恋の巻〜 (ルルル文庫)

【プリンセスハーツ 〜これが最後の恋の巻〜】 高殿円/明咲トウル ルルル文庫

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ついに暴かれ始めたジルの正体、マシアスの目的…! 
“あの夜の約束”を胸に、それぞれの戦いに乗り出した
ジルとルシードだが……


パルメニア王冠を目前についにシングレオ騎士団攻略へ歩を進めたルシード。世界会議の舞台で自分の正体を知る他国王たちに挑むジル。“あの夜”の約束を胸に、それぞれの戦いに乗り出した二人だが、大公夫婦のいないアジェンセンにはオズマニアの脅威が迫り……!? さらに姿を消していたマシアスも再登場! ジルとルシードに協力していた理由もついに明らかに……! 王宮ラブロマン、いよいよ怒濤の最終章へ突入!
そうかっ、ジルの正体がパルメニア王女メリルローズの偽物であり娼婦の娘という事実は、もう秘密にならなくなってきたところで、さらに当人も知らないジルの本当の出自の秘密こそが、これ以降重要なキーワードになっていくのか。
そもそも、ジルたちの母親だったクリスの正体が、びっくり仰天だったよ。いきなりハクラン王の過去回想が始まった時には、今になっていったいどういう話なんだろうと思って読んでいたのだが、まさかそんな所に着地するとは。あの人がハクラン王の前から姿を消した、という話になった段階でも全然気付かなかったし。実は彼女はあの人だったのです、と答えを提示されて、ようやく「えええっ!?」と驚いた次第。この件に関しては恐ろしく自分は察しが悪かったみたいだ。
しかし、ジルと二人の姉妹の血が繋がっていない事はだいたい予想がついていたけど、まさかキキとあの男女が……ねえ。びっくりだよ。びっくりだよ。
そうなってくると、気になってくるのがジルの正体だ。彼女が思わず漏らしているように、この物語には双子が多すぎる。いつの間にか、分たれた兄弟姉妹こそが秘められていた主題だというように浮き上がってきている。あの「墓場」という存在がこんな形で深く関わってくるとはなあ。
となると、メリルローズとジルは、単に他人の空似じゃないと考えるべきなのか。場合によっては、ジルはメリルローズの身代わりやニセモノとしてではなく、ジルとしてルシードの本当の王妃になれる可能性も出てきた、って事になるんですよね。ある意味前途は開けてきたと言えるんだろうけど……まだ、何か予見できない恐ろしいトラップが潜んでいる気がする。
なんにせよ、ハクラン王がどちらかというと、ジルの味方になってくれる人で良かった。ルシードと離れて行動しないといけない今、これまでになくルシードと心つながった今のジルは、だからこそ一人で頑張らせるには不安な所があったから。
と、心配する必要もなかったんですけどね。まだまだ、この女の恐ろしさを甘く見ていたかもしれない。オズマニアの鍍金王と雹王子の巧みにして嫌らしい攻勢は、ジルとルシードにとって瀬戸際に追い詰められるものであり、今の状況下において最悪のピンチなのだとばかり思っていたのだけれど……なんだよこれ、全部ジルの手のひらの上だったんじゃないか。
まさに、コテンパンに打ちのめされるオズマニアの親子の惨憺たる有様に、喝采をあげるよりも呆気にとられたのであった。隙に見えた所には、全部ジルが罠をしかけていたんだな。でも、尋常な罠ではない。まともな罠に、あのオズマニア王と雹王子が引っかかるはずがないんだから。一癖も二癖もある人物だけど、二人とも飛びっきり有能で優秀な指導者であり王族だったのだから。それが、ああも鮮やかに引っ掛けられるとはなあ……参った。

一方でルシードも、宝剣エヴァリオットこそゲット出来なかったものの、無事シングレオ騎士団の忠誠を得る事ができ、さらには……。
まさかまさか、ですよ。マシアス、ただ姿を消していたんじゃなかったのか。それはもう、これ以上ないルシードへの助けを携えての再登場。正直、シングレオ騎士団を味方に付けることは大きいけれど、それだけでパルメニアを掌握できるか、というといまいち条件を満たしていない気がしていたんですが、マシアスが携えてきたものは、シングレオ騎士団を指揮下に収めること以上に、パルメニアの王冠を手に入れるためのお墨付きとなるもので、これ両方揃ったら情勢は一気に変わり、ルシードの野望は夢物語などではなくなるはず。
同時にそれは、ルビコンを渡るということでもあり、もはや後戻り出来ないところまで踏み込んでしまった、という事。尤も、ジルの為にももうルシードに躊躇や迷いはない。あとは突き進むのみ。
マシアスも、居なくなったことで散々とルシードとジルを悩ませ苦しめた罪は、これだけのものを持ってきてくれたなら清算してもらっていいよ、許す。おかげで、ルシードも独り立ち出来たわけだしね。

あとはジルの正体を明らかにし、メリルローズとの直接対決を待つばかりか……いや、それが一番怖いんですけどねッ。

高殿円作品感想