月見月理解の探偵殺人 4 (GA文庫)

【月見月理解の探偵殺人 4】 明月千里/mebae GA文庫

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「兄貴は、ほんとは私のことなんか嫌いだよね?」

 その《探偵殺人ゲーム》に勝てば、全てが叶う……。《探偵殺人ゲーム》のコミュニティ『黒の箱庭』。そこは、勝つと願いが叶う、と言われている一方、参加者に行方不明者が出ているという噂があった……。
 そんな『黒の箱庭』に初の妹、遥香が興味を見せているという。遥香を心配する初だったが、その『黒の箱庭』の創始者こそが、月見月家に因縁のある《グラウンド・ゼロ》だった! さらに交喙の追う《ドッペルゲンガー》も関わっているという。
 遥香を追い、ゲームに参加する初、それぞれの思惑が交錯する中、《探偵殺人ゲーム』は幕を開ける!

このシリーズ、面白いことに二巻以降、表向きの倒すべき敵と、れーくんが本当に勝負をしている相手が実は同一ではないんですよね。二巻は対ドッペルゲンガーでありながら、れーくんがゲームの中で向き合っていた相手は星霧交喙でした。三巻は月見月悪夢という脅威と立ち向かいながら、本当に勝利のやり取りをしていたのは水無月さんでした。そして今回、グラウンド・ゼロという悪意の攻撃に晒されながら、彼が相手取っていたのは実のところ、あの子ではなくて妹である遥香だったんですよね。
アレは、本当の意味で自分がれーくんに相手にもされていないということに気づきもしなかったようですが。それこそが、最も大きな敗因の一つであるというのに。

どうも、傍目の印象ではれーくんこと都築初は、なんとかギリギリ瀬戸際で勝利を得ているようにも思えるし、事実れーくん本人もそのように捉えているんだが、あの忌月老人にしても、今回の敵さんにしても、あるいはれーくん本人にしても、れーくんというプレイヤーの力量を過少に見誤っている。
正直、今回の敵さんというやつは道化だった気がします。自分が理解とれーくんに完膚なきまでにこてんぱんに負けたことを受け入れることも出来ずに負けてない負けてないと言い張る子供のような見苦しい小物さんでした。理解とはそもそもプレイヤーとしての役者が違いすぎる。そして、敵さんは絶対に認めないし信じようとしないだろうけれど、れーくんとも多分、格が違うんじゃないだろうか。
思わせぶりに、自分こそがラスボスなのだと言わんばかりの偉そうな態度でございましたが。
果たして、れーくんがゲームにおいてなんの制約もなく、ただ勝つ事のみを追求できたとしたら……。ただひたすらに、敵を倒すことに専念できたなら。
都築初という青年は、あの月見月理解に勝っているのだという事実を、理解当人以外あまりにも軽く捉えているようだ。それが、どれほど凄まじい事なのかを、れーくん自身もわかっていないというのは、理解にとってどういう心境なんだろう。笑える話なのか、それとももどかしいものなのか。

前巻の感想でも触れているのだけれど、れーくんという人は本当に肝心な部分では、つまり負けてはいけない場面においては、絶対に勝利を収めているんですよね。彼が、負けてはいけないところで敗北を喫してしまったのは唯一、一巻の対理解戦のみ。逆に見ると、敗北などその辞書に存在しないように常勝不敗を続けている月見月理解という怪物に一敗地に塗れさせたのは、唯一れーくんだけなのである。
今回の敵さんが、ある意味底をさらけ出してしまったのを見ると、自ずとれーくんが最終的に勝利を収めなければならない相手が誰なのか、この物語におけるラスボスが一体誰なのか、見えてくる。
鮮烈なまでに鋭利で危険な人間性を際立たせていた理解という少女が、先の三巻、そしてこの四巻と随分と丸くなり、大きな変質を迎えると同時に、彼女に課せられた役割が徐々に明らかになりはじめている現状は、れーくんがもう一度正面から理解と向き合うこと、つまり彼女と戦うことが求められようとしている事が示唆されているのではないだろうか。
修復不可能かと思われた遥香との仲が取り戻せたように、理解から離れていくしかなかった水無月さんを押しとどめられたように、破綻しかけていた交喙を戻らせたように、れーくんの戦いと勝利は相手を打ちのめすのではなく知略の果てに自分の在り方を示し、自分をさらけ出すことでお互いを理解し、受容させている。倒すのではなく、取り戻すことに終始している。
だから、物語としても、もう一度れーくんと理解が戦わなければならない場面は、絶対に求められると思うのだ。理解し合ったその先が。


さて、今回は一巻以来、久々に宮原さんが大暴れというか大騒ぎしてくれていて嬉しかった。地味なんかじゃないよっ、宮原さんは!(笑
完全に賑やかしでしたけどねっ。宮原さん、吠える吠えるっ。なにやら、ムードメーカーみたいになってますがな。お陰で、重くなりそうな雰囲気に、いい意味での脱力をもたらしてくれた気がします。黒いくせにイイ人なんだよなあw

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