銀の河のガーディアン2 (富士見ファンタジア文庫)

【銀の河のガーディアン 2】  三浦良/久世 富士見ファンタジア文庫

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魔力を封じるオーロラの下、旧同盟軍残存部隊との交渉に挑め!
皇帝の娘という高すぎる身分と低すぎる己の魔力に悩む親衛隊の少女ラリエナと、膨大なな魔力を持てあます天才魔術師セーヤ。コンビとなった2人は、叛徒が潜伏する惑星の調査に赴くが、ラリエナの身に危機が!?


いやあ、面白い! 前巻でべた褒めしたものだけれど、やはりこの作品のスペースオペラとしての世界観は非常に高いレベルで綿密に構築されているようだ。魔法というファンタジーな要素が根底にあるにも関わらず、エーテルと重力子を密接に関連付けることでロジカルなSFとしての側面を強固に補強しているし、なによりも魔力と科学が併存する世界観における社会構造が確かな実体感を以て構築されている。銀河帝国などというと、ついつい中世的な統治システムを連想してしまうけれど、その辺はむしろ【星界の紋章】を想起させる、銀河という広大な空間を統治するために洗練された機構として立脚してるんですよね。それでいて、魔術というファクターをふんだんに取り込んだ、独特の世界観になっている。
うーん、自分でもびっくりするくらい、この世界観には惚れ込んでるなあ。いっそ、ページ数を分厚くするかハヤカワ文庫みたいに文字を小さくして、事細かく世界観に付いて解説して欲しいほど。正直、今の情報量じゃ物足りないくらいなんですよね。

物語の方は、もしかして実はこの二巻をもってようやくプロローグが終わった、ということなんじゃないだろか。一巻は主要メンバーのキャラクター紹介と、人間関係の構築。そして、二巻は散らばっていたそれらメンバーを一所に集めて、一つの部隊として取りまとめることで、ようやく物語が動き出すための下準備が整った、みたいな?
カン艦長とトゥバ副長の迷コンビなんか、一巻の段階ではどうやってラリエナとセーナの主役コンビと絡ませるんだろう、と不思議に思ってたものなあ。なるほど、一つの特殊部隊に取りまとめて、カン艦長を指揮官にしたら、確かに全部うまくいくわ。
舞台背景が戦後十年という月日が経ち、戦後でありながら時代が変わりゆく過渡期として各地で情勢の不安定さが露呈し始める時期、というのもこうした対テロ特殊部隊が活躍する舞台としてはピッタリだし。そこに、ヒロインのラリエナが不肖の皇帝の養女という立場も、単なる火消し役というだけでなく、政治的な不安定に対しても能動的に関わることが出来るわけだし、物語のポテンシャルはやはり非常に高いつくりになっている。
ラリエナが単なる戦力ではなく、社会の在り方について強く訴えかけることのできる存在であるということは、この二巻のラストにおける敵叛徒の演説に対する反論と糾弾を見れば、確かなはず。
つまり、この物語は圧倒的な力でテロ組織を叩き潰す話というよりも、時代が変わりゆく中で不満を抱き、武器を手に取る人々に対して、暴力だけではなく理性と理想と論理を以て立ち向かう物語でもあるわけだ。ラリエナはそれを体現する主人公であり、セーナは彼女の理解者であり、彼女の心を支え、体を守り、彼女が目指すものを貫かせる、剣であり盾であり矛、かけがえの無いパートナー、ということなのだろう。
まだはじまったばかりの二人だけれど、絆はしっかりと結ばれている。出来れば、これからもっともっと二人の関係が醸成されていくところを、つきっきりで見ていたい。
その為には、このシリーズがもっともっと続いてくれなくては、困る、とても困る!!
ほんとに期待してるんですよ、このシリーズには。売れろー! 売れろー! って、前の感想見返したら、やっぱり売れろーと叫んでた自分が居た(笑


さて、多くの人が言及しているようだけど、やっぱりカン将軍のキャラはすごい、というかエグい(笑
これほどだったとは。あのラストの発想は無いわー。普通はその効能が分かっていたとしても、あんな真似は出来ないよ。この人が俗っぽい割に有能極まりない人だということは、作中でも多くの人の共通認識なんだろうけど、有能さよりもやはりどうしようもない変人として、どこか緩くてついつい侮ってみてしまう部分が強い。あの式典が爆笑に包まれた事からも、彼がいい意味でユーモアがあり親しまれ頼みにされる指揮官として皆に認められた事がよくわかる。
それが彼の資質であっても何も問題ではなかったんですけどね。……いや、セーナがビビるのもわかるわ。あれを完全に作為としてコントロールしたのだから、このカン将軍、かなり怖い人だ。伊達に、旧敵国人であり魔術師でないにも関わらず、艦長という城の主となり、また今回対テロ部隊の隊長として将帥に駆け上っただけはある。逆風の中で出世できる人間が、くせ者でないはずがないのは分かっていたつもりだけれど、思っていた以上にヤバいわぁw
直属の上官となるんだから頼もしいのは確かだけれど、頼り切りにするのは非常に危険な人物なのだとよくわかった。少なくとも、彼にとって有用な人材だと、少なくとも邪魔になったり害悪になる人物ではないのだと証明し続けないと、あっさり切り捨てられそうだ。いい意味で緊張感のある関係になれそうだな、これ。

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