無限のリンケージ 5 −ナイト・オブ・ナロート− (GA文庫)

【無限のリンケージ 5.ナイト・オブ・ナロート】 あわむら赤光/せんむ GA文庫

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 ハルト・ミウラに手痛い敗北を喫したラーベルトだが、再戦の機会は予想以上に早く訪れた。2オン2のエキシビジョンマッチ〈アスラ・カーニバル〉の出場選手として、人気投票で選ばれたのだ。
 しかも相手はハルトとディナイスの強力タッグ。BTRに楽しさを見出したラーベルトにとって、それは喜び以外の何物でもなかった。

 だが、そんなラーベルトにナラウタを解放する策としてアーニャ姫から告げられたのは、「試合中にハルト・ミウラを暗殺せよ」というもの。衝撃的な主命にラーベルトは思い悩むが……?
 無限のリンケージ、堂々のクライマックス!
登場人物のほぼすべてが納得のいく形での終わりを、しかも妥協の産物ではなく、迷い悩み苦しんだ果てに独りでではなく仲間や友人や愛する人、家族の助けによって答えにたどり着き、全力を出し切って満ち足りた充実感とともに勝ち取ったハッピーエンドを迎えた、という意味において、まさにこれこそが大団円! 大団円オブ大団円ともいうべき大団円だったのではないでしょうか大団円ッ♪ww
元々読み応えのある良い作品だったけど、期待していたものよりも遥かに素晴らしい最終回を持ってきてくれたのではないだろうか。こんな素晴らしい終わり方をされたんじゃ、作品そのものの評価もうなぎのぼりに上げざるをえない、というかあげさせてください。

先のハルトとの戦いでの敗北は、前巻の感想で大きなターニングポイントになるのでは、と書いたのだけれど、予想していたラーベルトの戦意や戦う姿勢、サクヤとの関係についてのものではなく、ダイレクトにナロート救国の政治問題へと波及していったんですよね。これはちょっと驚いた。と、同時に感心させられた。単に戦いに負けた影響による曖昧な精神的な揺らぎによって、主人公とヒロインの関係を揺らすのは定番なんですけど、いささか理由付けとしては説得力に乏しいんですよね。それが、この政治問題によってハルトの暗殺を命じられた事により、ラーベルトの騎士としての義務感と国を失ってしまったことによる贖罪の念、というラーベルトの弁慶の泣き所を具体的に攻める事によって、彼が自分を見失うほどに追い詰められていく様に、大きな説得力が生じている。
しかも、物語の焦点をラーベルト独りに宛てがってしまうのではなく、問題の影響は連鎖的に登場人物たちに波及していき、キャラクターたちの様々な想いがアスラ・カーニバルの一戦を頂点として螺旋を描くように絡まりながら集約していく。そりゃあ、盛り上がるさ。
そして、この最終巻が素晴らしいのは、ラーベルトを初めとしたキャラたちが直面していた心の停滞を、肝心の最終決戦を前に一気に解決し、暗闇を吹き払ってしまった所なんですよね。鬱々としたもの、仄暗い感情を抱いたまま戦いに赴くのではなく、まさに後顧の憂いをなくし、皆が心晴れやかに全力で力を発揮できる状態になってから、最終決戦に。
そりゃあ盛り上がるさ。

毎度毎度よく悩むラーベルトでしたが、今回は特に飛びっきりでしたね。悩むというよりも、自分の本心と騎士の責務に挟まれて、身動きが取れなくなってしまった、というべきか。それでも、騎士として、かつて国を失ってしまったモノの贖罪として、自分の本心を押し殺して徹しようとするものの、越えてはいけない境界を前にしたとき、怯え立ちすくみ恥も外聞もなく泣きじゃくってしまうのでした。あのラーベルトが。
そして、進退極まったときに彼が求めたのは、サクヤの姿。彼が泣きじゃくりながら、心の中で何度もサクヤの名前を連呼し、彼女の助けを求めながら蹲ってしまった様子は、色々な意味でショックでしたよ。この二人の関係って、自分が見えていたと思っていた部分はほんとに表層だったんだなあ、と。同時に感動でもあったんですよね。彼にとって、あの娘の存在というのはそこまで絶大なものになっていたんだと分かって。
そんなサクヤとラーベルトを見守るベックスが、もう惚れそうなほど頼もしいんだ。この人は最初から最後まで、本当の意味で兄貴分でした。ラーベルトにあんな歳相応の、いや年齢よりも幼い本音の顔を引き出すのなんて、ベックス以外には出来なかったでしょうし、サクヤという難しい子の本心をいつだって見逃さず、妹分として見守り導きここまで連れてきたのは、間違いなくこの人でしたもんね。
他のチームスタッフも素敵な人達ばかりで、誰一人欠けてもダメだというのが伝わってくる、そして皆がこのチームを心から大好きなのだというのがビリビリと伝わってくる、とても素晴らしいチームでした。ライバルとなる王者ディナイスの旦那も、もう惚れ惚れするようないい男だったしなあ。生意気王子のシグも、その生意気さが可愛くて、アーニャ姫を前にしたときのヘタレっぷりがまた可愛くて、子憎たらしいキャラなんですが結局敵に回ること無く、ラーベルトと変な意味で息のあった漫才を繰り広げてたあたり、実は仲良くなってない?
なにより一番ほんわかさせられたのは、アーニャ姫がちゃんと幸せになれたことかしら。周囲の目には彼女が一人で不幸を背負ったみたいに見えてるのかもしれないですが、亡国の王女として彼女は望むべき最良の結果を手に入れた上で、本来なら敵国の王子であり、また自分の国を滅ぼした仇敵の息子である少年、というどう考えても幸せに結ばれることがないであろう相手との恋を成就させることができたんですからねえ。ラストの彼女、心から幸せそうで嬉しかったなあ。
強さを求めるあまり、武人として歪んだ道を歩み続けていたハルトにもまた転機が訪れ、復讐に身を焦がすあまりに破綻しかかっていた「スミス(笑」もなんだかんだと自分の居場所を手に入れたみたいだし。まさかのブリュックナーだったよなあ、あれは。厄介な問題児なんだと思ってたら、厄介な変態だというのは変わらなかったけど、あんななんとも痛快で気持ちのいい人だったとは、見かけにはよらないもんだ。

そして、本当の騎士としての矜持を掴みとり、正々堂々と全力を尽くせる戦いの場と好敵手にこれから挑み続けることが出来る環境に至り、そんな自分を親愛と友情と共に支援してくれる仲間たちが傍にいて、そしてそして、心を捧げる愛する人を見つけることができた。ラーベルトにとって、そしてサクヤにとって、そして彼らを取り巻く人達にとって最上の大団円。
心が温かくなり、胸が熱くなり、爽快で爽やかな素晴らしいハッピーエンドでした。
売り上げ的にはモニョモニョ、だったらしいですね。うーん、やっぱりなあ。面白い良い作品だったんだけどなあ。でも、それでも5巻まで出してくれたGA文庫編集部はグッドジョブでした、ありがとう♪

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