サクラダリセット4  GOODBYE is not EASY WORD to SAY (角川スニーカー文庫)

【サクラダリセット 4.GOODBYE is not EASY WORD to SAY】 河野裕/椎名優 角川スニーカー文庫

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相麻の死後、春埼はリセットを使えなくなってしまい――。

「リセットを、使えません」
相麻菫(そうますみれ)の死から二週間。浅井ケイと春埼美空(はるきみそら)は、七坂中学校の奉仕クラブに入部する。二人は初めての仕事を振られるが、春埼はリセットを使えずにいた。相麻の死をそれぞれに考えるケイと春埼。ケイは、相麻が死んだ山へと向かい……。(「Strapping/Goodbye is not easy word to say」)。中学二年の夏の残骸、高校一年の春、そして夏――。壊れそうな世界をやわらかに綴る、シリーズ第4弾!

前巻の続きとも言うべき話も混じっているので、一種の連作なのかと混乱したけれど、時系列も錯綜しているし殆ど独立した短篇集なのですね。
……というか、最後のサクラダとは関係ないというラブストーリーが普通に傑作なんですが。いや、驚いた。なんか、すごい素敵な話でしたよ? サクラダの面々は自己主張は強い割にフワフワとして言いたいことははっきりさせないみたいな所があるので、密度の濃い二人だけの静かな時間と空間の中で、それぞれがちゃんとお互いに言いたい事を伝え合うというのは、それだけで鮮烈で、確かな実感と共に乖離していた二人の隙間が埋まり重なるのが感じられて、なんだかぎゅっと抱きしめられたような感覚だった。甘い痺れだった。
この短編が、発表された時間的には作者のデビュー作となるのか。大したもんだ。
もちろん、サクラダの方の短編たちも素晴らしい作品ぞろいだ。面白いことに、長編の時のような大きな一本の流れとしての物語がない分、こちらの短編の方が登場人物たちが垣間見せる横顔は雄弁のように見える。もっとも、雄弁であればあるほど具体的で即物的なものからは遠ざかっていくのは、この作品らしいと言えるのかしら。あとがきを読む限り、キャラクターを中心に魅せる為のお話たちというのは、読んだ時の印象通りで得心が行ったけれど、その人となりを魅せるための言葉選びはとても不思議な羅列を描いていて、具体的な輪郭を導き出すのは難しい。まさに、感じるままに受け入れていくしかないのだろう。その透明感を、不可思議さを、美しさを。でも、それらは遠いものではないんですよね。抽象的だけれど、とても身近で有り触れた親しみすら感じてしまう。だから、春埼や野々尾の独特で特異とも言える言動に、柔らかな微笑を浮かべてしまうのでしょう。
いい作品だなあ、とこの短編集を読んで改めて実感しました。