Landreaall 17巻 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

【Landreaall 17】 おがきちか IDコミックス ZERO-SUMコミックス

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長い夏休みが開けた、新学期。学内外問わず、スピンドルの事件は様々な方向へと影響を及ぼしていた。
リドは、自分の血筋の天恵が研究されているとみられる、天恵研究所に、ルーディー&DXとともに向かうことに。
一方、ライナスはフィルを連れ、DXが捜している人物を見つけるため、ロイヤルマイルを目指す。そこで二人が出会ったのは…?


全体を一気にまとめようとすると感想を書くときあまりに書くことが多すぎた上に結論をまとめることが出来ずに、感情的に逃げ出してしまうことは、以前から度々経験していたことなので、色々と考慮した結果、つまるところ章ごとに細かく感想を書いていけばあれこれ詳しく書けるんじゃないか、という結論に至ったので以下のように。


ACT86 <壁の穴>

人が集まり賑やかなのはよい
リドの親父さんも、わざわざ掛け軸にしてそんな言葉を息子に贈る辺り、息子を留学として異国に送り出すにあたり、何を望んだのかがうかがい知れる話だなあ。そして、孤独だった弟は異国の地で掛け替えの無い友人たちを手に入れる事ができたわけだ。
というわけで、夏休みも終わり、ようやくアカデミーに戻ってきたDXたち。何事も無く夏休みに入っていたならともかく、リドが帰国しそれを追ってDXと六甲が不在だった中であのスピンドル事件があった事で、なるほど学園の空気はどこか違っている。一般生徒たちの心持ちが、自覚と自立と自制を備えて、一つ階をあげたとでも言うべきか。
皆、スピンドル事件を自分たちでなんとか克服したことで調子に乗るのではなく、むしろ自分の至らなさを悔み、向上心を募らせて、自分が何を為すべきなのかを見直そうという姿勢に赴いているのは実に素晴らしい。なんという健全な成長なのだろう。
こんな子たちが、王国の次代を担うというのだから、この国の未来は明るいよなあ。これも、現状国を支えている良き騎士団と、政治家たちの在り方の延長線上、というところか。
ある意味、現状が最上ならば現状維持を望んでしまう勢力もありそうなものだけれど、それでも「王」は必要とされているのだろうか。いや、だからこそ「王」を必要としている人たちもいるわけか。あの玉階のように。それとはまた考え方の違う形でオズモおじさんも「王」を望んでいるわけで……複雑だなあ。
無力さは努力をしない言い訳にならない!
権力のある人間が馬鹿なのは、敵が強いより始末が悪い!
次代を担う若者たちを教える人たちが高らかにこんな言葉を生徒たちに語りかけてくれるのだから、アカデミーってほんとに……。

ところで、あのファレル母さんのフライパンに変わって、イオンが振り回したモップの柄が今や女子寮のお守りになってるのか。変なところで母から娘へと受け継がれてしまってるな(笑


ACT87 <cropper>
ちょっ、アリス・ケリーの戦略と指揮の講義、レベルたっけえ。いきなり学生にそんな知識と判断力を問うのか。勿論、人によって当たりは変えるのだろうし、DXは地元である程度モンスター討伐については経験あるから実体験から判断できるんだろうが、これよっぽど知識の蓄えが無いと反応も出来ない講義だよなあ。それくらいの予習はしておけってことか。こりゃ、確かにちゃんとした向上心のある人でないとついていけないわ。これが、本物の学校なんだろうなあ。
というわけで、軍略研究家だというアリス・ケリー講師。つやっぽいというよりも、熟女? R・ケリーの娘さんって、あの人ちゃんと結婚してたんだ。って、当たり前か。でも、あの人の娘ということはもう三十は超えてるよなあ。旦那や子供もいるんだろうなあ。
ティティとDXを招いての論壇。これは面白かった。現場に居なかったDXに、スピンドル事件において彼なら指揮官としてどういう対応をとったのかを問うのだけれど、最初の答え方からDXという人物を色々と穿って見れて面白い。それ以上に興味深かったのは、実際の方法論。なるほど、それはDXらしい!! ティティの指揮はほぼベスト、とケリー講師にも褒められているけれど、彼の資質としてDXみたいな考え方は出来ないよなあ。いや、発想自体は出来るか。しかし、そこでたぬきになりきれるかというと、一癖も二癖もあるティティだけれどそういう腹芸はタイプが違うんだよなあ。
これは、まさに傭兵の発想というべきか。面白いっ。
この、交渉はティティに任せられるし、とにこやかに言ってのけてしまうあたりが、王様が案外似合うと言われる要因だと思うぞ、DX。

六甲が正式に生徒になり、五十四さんもR・ケリーと女子生徒たちの要請から、応急処置の仕方を教える講師に。二人のニンジャも、夏休みを経て立場が少しずつ変わっている。女生徒たちが後期から応急処置の講義を受ける人が急に増えてしまった、というのも先のスピンドル事件の影響。それこそ、ゼクスレン教官が語った
無力さは努力をしない言い訳にならない!
を踏まえた流れなんですよね。良い生徒たちだ。それにR・ケリー、ホントに五十四さんのこと気に掛けてたんだなあ。


ACT88 <ロビン>
っとに、ライナスは面倒くさいな(笑
可哀想なことに、周りの人間達もライナスが面倒くさい人間でないと、もう信用できないくらいに彼の人柄というのはそういう方向で認識が固定されてしまってるんですよね。実際、そういう方向性の認識でいいと思うし、ライナスもそれを望んでいるんだろうけれど、どうにも微笑ましい苦笑いを浮かべてしまうのであるw
でも、DXの性質を考えると建前だけでも打算的なライナスくらいの方が、付き合い易いのかもしれないなあ。考えてみるとDXの身近な友人たちというのはその顔ぶれを見ると人間関係の距離感というモノに対してとても思慮深い面々が揃っているんですよね。フィルにしても、リドにしても、ティティにしても。ルーディーにしたって、ライナスの相棒を長らく務めているだけあって無神経とは程遠い。
この話って、DXという男と本気で友達づきあいすることの難しさを表してる気がするんですよね。
わかったんです。DXさまに言ったら、本当のことになっちゃうんだって
ロビンの述懐は幼少の頃の事だけれど、ライナスが今も変わってないぜ、とつぶやくように今のDXもその傾向は何も変わっていない。彼は、望まれた事に対して自分の力で出来る限り事を成し遂げようとする。それこそ、望んでしまった相手が呆然として恐怖を抱くほどに。それはDXという人物の誠実さなんだろうけれど、果たしてその膨大な誠実さに対してこちらも同じだけの誠実さを以て報いる事が出来るのか。それは、ちょっとした絶望に近いものなんじゃないだろうか。
だいたい、報いるなんて発想が生まれてしまう時点で、DXと友達付き合いできるのかどうか。面白いことに、DXがアカデミーに来てようやく手に入れた同世代の友人たちは、そうしたDXの性質を彼我の関係においてごく自然なものとして受け入れてるんですよね。DXがどれだけの事でも実現してしまう事実、そのポテンシャルの大きさ、特異性にビビるのではなく、ごくシンプルに彼が親しい人の為に尽力できる人物である事だけを注視し、ごく自然に彼らもまたそんな友人のために出来ることをしようとしている。それだけの、本当に当たり前のことに落とし込んでいる。
得難い友人ですよ。ありえないほどありがたい。お互いに対して何も望まない関係って、普通に見るならとても冷めた関係にも思えるけれど、ことこのDXと友人たちの関係については全く逆だよなあ。


ACT89 <エタンセル>
DXが探していた相手を勝手に探す事にした友人たち。その内、ライナスとフィルのコンビが、なんかとんでもないものを見つけてしまう。いや、え? んんん!?
おい、おいおいおい。ちょ、なにこれ!? ええっ!? とんでもない爆弾じゃないのか、これ。しかも、クエンティンが囲ってるというのはどういう事なの。よりにもよってクエンティン。どう考えても王女関係じゃないか。どういうつもりなんだ、クエンティン。

そして、DX激怒編。うははは、こりゃ、もうね。DXのやつ、ウルファネアでの一件で吹っ切れたというか、自分が公子であることを武器として使うことに、必要と有らば躊躇わなくなったんだなあ。まさか、いくら怒っているとは言え、あそこまで権威を盾にした言い回しで攻撃するとは。勿論、相手が地位と身分と血筋という権威を私的に振り回し、かつて過去にルーディーをひどい目にあわせ、今またリドに対して失礼を働こうとした、つまりDXの逆鱗に触れてしまったからなんだけど、うん。でも、痛快だ。痛快だった!! ルーディーもまさにこういう気分だったんだろうな。当事者だから、一入か。でも、イヤなんだなDXは今でも。ううん、そうじゃなくて、昔の嫌だった理由と今の嫌だった理由は少し違うんだな。その悩みは、果たして解消出来る領域のことなんだろうか。


ACT90 <paraDox>
矛盾だらけだなDXは。見返りを無視して目的だけ見てる。
ライナスはそれを「騎士道」と言ってたけど、演技(パフォーマンス)ででも目的を果すのは傭兵のやり方。
僕はそれだってDXらしいと思うよ。
動機と目的は騎士 手段は傭兵
ううん、パフォーマンス、パフォーマンス、パフォーマンス。要は相手がそうだと認識し理解してくれる事なんだよなあ、ううん。でも、頭で理解するだけじゃあやっぱりだめなのか。難しいなあ。


オズモおじさん 「王」って何?
以前、オズモに言ってしまった言葉が、革命の真実を知ったことで事実と違った暴言だった事に気づいたDXは、わざわざ足を踏み入れる事を嫌がっていた王城を訪れてまで、謝りに行くあたり、ほんとにねえ、もうなんというかこの子は……。オズモも、諸々を度外視して可愛がるよなあ。
そのオズモおじさん、DXが言うようにこのヒト、大した人物だわ。危急の王国を立て直した政治家としては勿論だけれど、人として、大人としての見識が素晴らしい。この物語に出てくる大人というのは、総じて大した人物なんだけれど、間違いなくDXに影響を与えた、そして今後も与えることになる人物になるんだろうなあ。
そしてここで、冒頭で疑問に思った今のこの国に「王」は必要なのかという自問に対しても、オズモは一つの答えをくれる。だからこそ「あの」DXから、「王」とは何か、などという問いが生まれたのだろう。それにしてもDXがよりにもよってこの質問をするなんて……。


ACT91 <裏に道あり>
ある意味、待ち望み、そして恐れたアンニューラスとクエンティンの顔合わせ。読んでるこっちまで緊張だよっ。
予想に反して、アンちゃんが余裕だったのには驚いたけれど。いや、予想通り、だったかもしれない。これはアンちゃんをどう評価するか、かもねえ。アンちゃんほどの人物が、自分以外の玉階がDXに接触する可能性に付いて考えないはずがない、と。それなのに、何の対策もしていなかったというのは、それこそ対策をする必要もナカッタノダロウ。アンちゃんが、クエンティンに対してどうして余裕だったのかの理由が思ったとおりで、思わずニヤニヤしてしまった。つまるところ、それはアンちゃんへの評価の高さと同時に、DXをどう捉えているか、だもんねえ。
予想以上だったのは、アンちゃんのDXへの信頼の高さかもしれない。信頼というか、もうベタぼれじゃん。前から惚れてたけど、正直前はもうちょっと推し量ろうという意志が垣間見えたし、もし可能ならばその方向性を幾許か自分が導く、という意志もあったんじゃないだろうか。そういうのが綺麗サッパリ取り払われて、もうDXの自由にしなさい、という考えが今のアンちゃんからは垣間見える。いや、誰にも揺るがされず自由に進むDXの行く末をアンちゃんこそが楽しみにしている、というべきか。そして、自分を含めて誰にも彼の意志を操り都合のいいように導く事は出来ないのだ、と誇らしげにすらしながら考えている。これをベタぼれと言わずして、なんと言いましょう。クエンティンほどの相手に、あんたが何をしようと彼に対しては無駄だよー、と言ってるようなもんだし。それどころか、自分は付いていくだけで精一杯。余裕が無いのはクエンティンに対してではなく、DXに対してなのだと、まあそんな楽しそうに嬉しそうに言われちゃあねえ。
挙句、DXは玉階としてあなたを選ぶ、と告げられたときのアンちゃんの顔。あの瞳。思わずこっちが見惚れてしまった。


……なんか、六甲が面白いことになってる? 生徒になって、気配消しをやめたことで、妙に女生徒たちの噂に上ることに。もしかしてイオン、これまで六甲をお付き合いの相手として他人に思われ指摘されるのって初めてだったんじゃ。いつも、姿と気配隠してたもんなあ。六甲との事が、そういう関係として見られる事もあるのだ、というのを初めて認識したということは、無からついに有が生まれたということで……ふーん、なんだろう、ちょっとこれは、ふふーん♪

そして、一方でDXの方も久々にメイアンディアと街角で再会して〜〜って、うわーー、なんて場面にーーーっ!!(笑
これはこれはこれは、ここで切るの!? なんていじわるなwww
気になる気になる気になるよ^^


掌編 Tail piese
おっ、あのちびっ子(13巻参照)、継承候補者(ウェザークラウン)だったのか。しかも、長じてはティ・ティよりも上だったとは。フィルに対するティ・ティの想いが垣間見える、絶妙な話だったなあ。DXと付き合うようになって、ティ・ティも少なくとも自分に対してまで腹芸を貫き通すようなことが少なくなったような気がする。


さて、限定版の方はこのTail pieseが違うそうなんですよね。信者としては、両方揃えるのが筋ですよね、うんうん。