ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈3〉動乱編

【ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 3.動乱編】 柳内たくみ アルファポリス

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皇帝に代わり帝国政権を掌握した皇太子ゾルザル。主戦論を掲げ、講和派議員に対する容赦ない大弾圧を敢行し、これにより帝国と日本との講和交渉は完全に決裂してしまう。事態を憂慮した日本政府は、投獄された講和派を救出すべく大規模な特殊軍事作戦を決行する。上空を無数の落下傘が舞い、瞬く間に帝都を制圧する自衛隊。そして伊丹耀司と異世界美少女達も、皇城で孤立しつつあった皇女ピニャの救出に乗り出す!――物語はいよいよ佳境へ!超スケールのエンタメファンタジー、待望のシリーズ第3弾!
菅原さん、あんた男を見せ過ぎだよ(涙
先の伊丹と同行してゾルザルフルボッコにした際もそうだったけど、やり手の外交官にも関わらず、野心だって出世欲だって人並み以上にあるのに、それを上回ってこの人は情が厚すぎる。ここで注目すべきは、菅原さんの判断を正しいとも間違っているとも断定せず、褒めもせず批判もせず、ただその判断が招いた現実をそのままに描き、菅原さんとシェリーがそれが自分たちが選び招いた事なのだと受け入れさせた事でしょう。
いや、それ以上に菅原がここで気がついた真理は重たいなあ。悪人正機説じゃないけど、人が人を助ける事は、善行であると同時に悪人たらんとする事なのだという事を人は自覚していきるべきなのかもしれない。でも、普通はそういう事考えたくないよね。卑怯ではあっても、無知ではあっても、それは幸せだ。たとえそれが罪なのだとしても。
人はなかなか、自分から罪を背負って生きる事を受容するのは難しい。でも、背負う事は無理なのだとしても、せめて知っておくべきなんだろうなあ。知ることそれすらも逃げ出すのは、本当の卑怯者なんだろう。

さて、はからずも皇帝陛下がお倒れになったことで、皇太子の野心とコンプレックスが爆発し(恣意的に爆発させられた?)、帝国は旧ソ連のような政治将校、つまりあれだ、NKVDだな。そんな連中が台頭し、講和派貴族を一掃した挙句に思想統制まで行い始める。
この顛末はある程度はゾルザルの馬鹿さ加減の自業自得によるんだけれど、裏で糸を引いていた黒幕が巧妙に自体をより過激に、悪化する方向へと誘導していったからこその惨劇なんですよね。悪意、あるいは八つ当たり? それで、一つの国が僅かな時間でこんな有様になっていくのだから、人の組み立てる社会というのは思いの外脆いものなのかもしれない。
ただ、八方塞がりというのではなく、この作品、どのルートでもきちんとどんでん返しの為の楔は打ち込んであるのが、痛快エンターテイメントとしての面目躍如ですよね。流しの料理人古田さん然り、暗愚なマスコミに対する紀子嬢の起立然り。
帝国側も、まだ自覚の足りなかった講和派貴族たちが今回の弾圧を通じて帝国がこれから歩むべき道筋を理解し、それを自分たちが導いていくのだという覚悟が定まったようだし、日本国内向けには支持率下がりまくっているようだけれど、今回の政争は結果的に特地との交流において劇的な進展をもたらすことになるんじゃないだろうか。これまでは、自衛隊や日本の能力じゃ、帝都を攻撃できても
占領は出来ないって話だったわけで、行き詰まりは確かにあったわけだし。
結果的にはだけど現地の政体を一度解体して新たに親日的な政府を作らせる形となった、というのはある意味基本的な戦後政策なんだよなあ、これ。正当性を主張するのに、もしかしたらピニャ皇女だけじゃ、ちょっと辛かった気がするんですよね。ここで皇帝陛下も連れてきたのは、大正解だったんじゃないだろうか、伊丹さん。
この皇帝、もうちょっとボンクラなのかと思ってたが、これ予想以上に強かなのか?

肝心の自衛隊の活躍はというと、とうとう虎の子の空挺団まで引っ張り出してきましたよ(笑
こりゃあもう、あと残るは戦車と海自に活躍してもらうしかないんだろうが……海自は活躍の場がなさそうだし、戦車はゲート通れないんだよなあ、多分w ファントムみたいに分解して組み立て、とかやっちゃうんだろうか。
こっそり、また自衛官、今度は健軍一佐か、彼がフラグ立ててた気もするけど……一佐なんだから、もう既婚者だよね? さすがに実の娘みたいな年齢の少女に手はダサんだろうな、おい。……まあ、まだ十二歳の子供相手に嫁宣言してしまった菅原さんと比べると、もう何でもオッケーな気もしてくるがw

そして肝心の主人公であるところの伊丹であるが……このヒト、もう自衛隊とか関係ないんじゃね?(笑
資源調査名目で単独行を命じられたもんだから、もう部下もついておらず、上官としての振る舞い、自衛官としての振るまいに気を取られることもないし、周りにいるのは気心の知れた女の子たちばかり。ええ、ロウリィ様は可愛いですよ?
レレイがメインとなる学術都市でのお話は、ファンタジーの醍醐味たっぷりでこれはこれで楽しかったなあ。
にしても、伊丹って特殊作戦群でのコード。アヴェンジャーだったのか。よりにもよってアヴェンジャー(爆笑
いや、もうなんかすげえ納得した。
んでもって、同じ特殊作戦群のセイバー、アーチャー、ランサーなどと帝城急襲。なんかもう名前だけで強そうだよw 実際、その戦果はピニャと皇帝の救出に留まらなかったわけだし、特殊作戦としては大成功だよなあ、これ。
もう、伊丹の戦歴だけ見ると、あり得ない事になってますよ。そりゃ、元部下の連中も実体と実績のギャップにメダパニに陥るわ(爆笑

本シリーズはどうやら4巻で完結の模様。名残り惜しくはあるけれど、やはりなるべく早く読みたいですよねえ。夏くらいで期待できるんだろうか。

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