戦え!神群活動保全課 カミカツ! (HJ文庫)

【戦え!神群活動保全課 カミカツ!】 翅田大介/シコルスキー HJ文庫

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時は二十一世紀。神様は地上に姿を現していた。猫耳メイド喫茶『猫神さまっ!』の店長バステトに傭兵会社『蝿の翅音』を経営するベルゼブブ、ホストとして迷える子羊たちを導くガブリエル。人間界に紛れ込んだ神様と、神様降臨に戸惑う人間たちが巻き起こす愉快で神懸かりな事件に神群活動保全課、通称『カミカツ』の守倉惟月と薊谷サキが挑む!

あははははっ、これはいい、面白い面白い♪
あとがきを読むと、執筆前に【ダイハード】【リーサル・ウェポン】【ビバリーヒルズ・コップ】【沈黙の〇〇】【あぶない刑事】などを見て自己洗脳した、と仰っていらっしゃって、思わず納得してしまった。主人公にヒロインに当面の敵キャラさんに巻き込まれるモブの人に到るまで、なんとも賑やかで軽快に大騒ぎ、といった感じが実にこれらのバディ活劇モノの雰囲気を取り込んでいて、実に楽しかった。
こんな根っから笑って楽しめるコメディアクションを書いたのが、あの人間の内面の奥深くへとじんわりと切り込んでいくような語り口のディープで純粋なラブストーリー【カッティング】シリーズを書いていた翅田大介さんだというのだから、ビックリだ。このヒト、こんな話も書けたんだ!!
【カッティング】のあとに書いた【相剋のフェイトライン】という作品が、いわゆる熱血バトルアクションものだったんですが、どうにも中途半端でやはりしっとりとした心情描写を丹念に描いていく作品こそがこの人のフィールドなんじゃないのか、と思っていただけに、このキャラが活き活きとして跳ね回るコメディには二重に驚かされたわけです。
ただ、完全にスタイルが別人になってるわけじゃないんですよね。愉快な掛け合いの狭間に、よく見るとさすがは【カッティング】を書いた人らしい、思わずフッと吸い込まれてしまうような内面描写や、恋心の芽生えみたいなのが描かれていて、なかなか油断できない。『ああ、あたし傾きかけてるな』には、かなりゾクゾクさせられましたしw
恋愛劇というものは、大なり小なり男女の駆け引きや間合いの計り合いみたいなものがあってこそ輝くもの。好意だろうと思慕だろうと、すれ違いすら無い一方通行の関係というのは単純で分かりやすいけれど、易しすぎて単調で退屈なんですよね。ラブコメやハーレムものって、その辺軽視されてるケースが結構あって、辟易することも多いんですよ。ラブコメだからこそ男女の関係って繊細に、丁寧に、複雑に、綱引きをやって欲しいと思うことも度々。
そして、その点においてこの【カミカツ】は充分以上に期待に応えてくれてるんですよね。馬鹿でエッチな掛け合いばっかり繰り広げているようで、主人公の守倉惟月とヒロインの薊谷サキの関係と感情はかなり入り組んだものになっているのである。
惟月にとっての「神様」であり、世で言う「魔王」、そしてサキの母親であるキョウカという存在が二人の間に介在していることで、惟月にとってもサキにとってもお互いの存在を単純に恋愛感情の対象にすることも、逆に無視する事もできない関係にしてるんですよね。実のところ、二人ともお互いに惹かれ始め、そんな自分を自覚しているのだけれど、二人とも何らかの形で「キョウカ」と決着をつけないと多分、お互いの事を好きな異性、とは見ることが出来ないようになってしまってる。でも、二人が惹かれあうキッカケは、キョウカの存在にあるわけで、プロローグ冒頭にしか登場してないくせに、随分重要なキャラクターになってるなあ。さすがは「魔王」。

ともかく、何が面白いって主人公の惟月である。これだけお調子者で脳天気で「イイ性格」をした主人公はなかなかお目にかかれない。そんな彼にギャーギャーを噛み付きつつも、実際のところノリノリで息があった無茶無理無謀っぽりを共演している薊谷サキもそうとうぶっ飛んだヒロインと言えるのだろう。そんな大迷惑で大暴走な二人が、ライトなエロネタ振りまきながら大暴れするのだから、そりゃあ面白いに決まってるw
惟月のセクハラは、サキに対しては半分くらい逮捕されても仕方ないレベルに至ってると思うだが(苦笑
いきなり胸を弄られまくって呂律が回らないほどイカされるヒロインってどうなのよ(笑

ここしばらくHJ文庫ではこれだ! という目ぼしいシリーズが出てなかったので、ぜひぜひこれは目玉として前面に出して欲しいですね。なにはともあれとりあえず、続きをッ。