神と奴隷の誕生構文(シンタックス) (電撃文庫)

【神と奴隷の誕生構文(シンタックス)】 宇野朴人/きくらげ 電撃文庫

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 翼をもつ民からの侵略を受ける有角種。君主セレィのもと、奮戦するも既に戦局は深刻化の様相を呈し、有角種は滅亡寸前の状況であった。
 しかし一人の若者が戦場に舞い降りる。自らのことを『若き神』と称する彼が、ここにやってきた目的はただ一つ。翼の民に加担し、異世界より来る『歴史を改変する者』を打ち滅ぼすためだった。
 世界を自らの理によって律しようとする強大な勢力に、一人で立ち向かおうとする『若き神』。その双眸には秘めたる決意が映っていた。
 神と奴隷の誕生秘話に迫る、期待のハイ・ファンタジー、いよいよ開幕!

SFファンタジー戦記とは良く言ったもので、これは凄いなあ。ある程度ジャンルの違う世界観は一緒の所に閉じ込めても上手く混ざらないものだけれど、この作品は実に絶妙な配合で同一線上に攪拌されている。なるほど、ファンタジーの世界の上位にある神話世界を、SFの世界観と=で繋げているから上手く合致するのか。
ギュウギュウに盛り込まれた設定群の大津波にも圧倒されたけれど、それ以上に主人公である若き神「導神クラァシン」こと奄倉信の寄って立つ背景の事情が凄まじいを通り越して凄絶である。彼の背負うものの悲惨さは、これヘヴィとかハードとか言ってられないよなあ。ある意味、彼についてはもう既に終わってしまっているとすら言っても過言ではないはずだ。彼個人はもう救われることはないだろうし、幸福な結末なんてあり得ない。彼と共に歩いてくれる人は死者以外に存在せず、彼が愛し彼を愛した人々は本人が望むと望まざると彼を苛む呪いとなり、彼を縛る鎖となり、彼を否定する在り方として寄り添うしかなくなっている。結局彼のやっていること、やろうとしていることは彼が生前にできなかった事をやり直しているに過ぎず、自分と同じ惨劇を他所で繰り返させないための足掻きであり、それは彼個人を救うものではないんですよね。それ以上に、彼がやっていることは対処療法に過ぎず、元凶を揺るがすものではない以上、ひとつの世界を守りきったとしてもその次の世界に旅立ち、永遠と終わることのない防衛戦を続けなければならない無限地獄だ。そして、戦いを続ければ続けるほど彼の神としての在り方は負債を相乗に負わせ続け、彼の苦しみは増して行く。
そこに、救われる余地など何処にもない。
これだけの業と罪と呪いを主人公に背負わせて、これ、どうやって決着を付けるつもりなんだろう。
もし彼が救われる可能性があるとすれば、それこそ発展界が他の界に侵攻する根本原因である、人間存在に対する絶望と諦めを根底からひっくり返すようなナニカがなければ始まらないわけだが、それを遥かに文明の遅れた植民界のセレィたちが示せるのだろうか。それでなくとも、クラァシンの神の罪の痛みを、彼女らは癒せるのだろうか。何れにしても、非常にハードルが高い前提条件である。