なれる!SE3 失敗しない?提案活動 (電撃文庫)

【なれる!SE 3. 失敗しない?提案活動】 

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話題の萌えるSE残酷物語、第3弾登場! 今度のミッションは営業活動!?

 とある企業から出入り禁止処分となったスルガシステム社長・六本松。しかし、その企業は大規模案件の発注を控えており、諦めきれない六本松がそのコンペに参加するべく自らの代打として白羽の矢を立てたのは、あろうことか新卒の桜坂工兵だった!
 右も左もわからないまま、立華や梢の力を借りて提案書の作成をはじめる工兵だったが……。立ちはだかるのは先方の潔癖キャリアウーマンに業界大手の競合企業たち。はたして小規模会社の新入社員・工兵に勝算はあるのか!?

……こ、これで新卒!? うへえ、こんなん即戦力どころの話じゃないでしょう、すげえよ工兵くん。いや、マジに凄い。一巻や二巻の段階でも新人としてはあり得ないくらい使える奴だったんですけど、それでもまだ今までの段階では与えられた、任せられた仕事で期待以上の成果を出す、というレベルだったんですけど、今回のは根本から違うでしょう。こいつ、新人のくせに自分が戦うべきフィールドを自力で構築しやがった。例えば、室見さんたちはまさに天才的な前線指揮官と言ってもいい才覚を持った人材ですけど、その才能を活かすための戦場がなければ何も出来ないわけです。その戦場を用意するのが、営業でありこの会社で言えば社長なわけですけど……工兵が凄いのは単に戦うための戦場を用意したのではなく、本来なら今回の案件は戦う前に敗北していたはずの状況をひっくり返してしまった事なのです。その広く高く柔軟な視野と発想は賞賛してあまりありますが、彼の特筆すべきところは何よりガムシャラで諦めが悪く負けず嫌いで頑固で闘志に満ち満ちているところなんですよね。食らいついたら離さない闘犬のようなしぶとさ、しつこさ。これってまさに「24時間働けますかッ」のキャッチフレーズが踊り踊っていた頃のサラリーマンの威風だよなあ。
あらすじの「SE残酷物語」という言葉はそろそろ撤去した方がいいですよ。明らかに、この作品の方向性はそっちから逸脱しつつある。デスマーチをボロボロになりながら生き延びる話ではなくて、過酷で残酷で悲惨で悲愴で人間扱いされていないよな仕事環境を嘆くのではなく、むしろそうあることがチャンスであり、成果であり、望むべき結果であり、耳まで裂けそうな笑みを浮かべてむしゃぶりつくべき甘露なのだと哄笑する話だ、これは。
働き狂うことを地獄に落とされたように苦しむのではなく、充足と光悦をもって満喫する話だ。達成感、充足感、自分が何をしようとしているか、仕事の意味も価値も十全理解し、何を成し遂げようとしているかをすべて理解している連中の話だ。
いや、今回は社長が取ってきて丸投げする形ではなく、室見や梢も携わり一緒になって掴んだ仕事だからこそ、その後に来るだろう修羅場に対しても悲鳴をあげるのではなく、むしろ嬉々として挑み掛かれるんだろうなあ。
……社長は、仕事はとってこれるのかもしれないけど、社員の使い方についてはやっぱりどうなんだろうと疑問に思うよなあ、これ。今回の案件だって、工兵に押し付けたあと放ったらかしだったみたいだし。あれ、どうなったの? とか聞いてこなかったのか、これw

正直、細かい部分は専門用語が多くて具体的にどういう内容の案件なのかさっぱりわからなかったんですが、そんなの関係ありませんでしたね。中身はわからなくても、その仕事がクライアントの側でどう扱われ、それをどう勝ちとり契約するに至るかの流れのラインはむしろ分かりやすいくらいで、バッチリでしたし。
工兵が突破口を見つけてからの疾走感に、アテられてアテられて、火がついたみたいに熱かったッ。
激燃えでした!

工兵はこれ、現場の1SEとしておくには勿体無いよなあ。二巻の運用部との折衝といい、機械を相手にしているよりも人間を相手にしている方が実に生きる。室見が言ってるように、間違いなく社長の側の人間だわ。とはいえ、いきなり上に引き上げるのも違うな。彼が新人というのは実に都合がいい。このままSE部に置いておきつつ、色んな仕事をさせて経験を積ませりゃ、とんでもないのが出来上がるぞ。
仕事が出来る男って……カッコイイなあ。

1巻 2巻感想