カナクのキセキ1 (富士見ファンタジア文庫)

【カナクのキセキ 1】 上総朋大/さらちよみ 富士見ファンタジア文庫

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人々に魔法を広めた紅の魔女マール。彼女を信奉する少年カナクは、とある秘密を胸に遺された石碑を巡る旅に出ようとしていた。だが、なぜか彼が恋する天才美少女ユーリエがくっついてきて――。それは、奇跡の軌跡。
純粋な恋が、世界を変える。第22回ファンタジア大賞金賞受賞作!
え…ええええ? あ、あれぇ? ナニコレ。どうしてこうなった?
うーん、おかしいな。最後の最後まで実に楽しく読めてたのに、オチに至った時のこの拍子抜けというか、肩透かし感の大きさときたら、思わず意味もなくカバーを外して裏を覗いてみたりしてしまった程。いや、そんなところには何も無いって。
何なんだろう、この真相と現実とのチグハグした感じは。噛み合ってないというか、繋がってる気にならないというか。ぶっちゃけ、話の真相そのものは読み始めた途端に即座にだいたい見えたし、女王陛下の国でのやりとりでほぼ確信に至ったから、最後に何が起こるか分かっていたんだけど、予想がついていたからこそなのか「え? そりゃ無いんじゃない?」という気分にさせられてしまった。いや、予想外の展開を望んでいたわけじゃないんですよね。そういう結末に至るのを前提とした上で、その場面を大いに盛り上げてくれて、その後の読後感も充分浸らせてもらえると信じていただけに、なんかあっさりというか、素材を調理せずにそのままポンと出されてさあ食えと言われたみたいな無造作な見せ方に、唖然としてしまったんですよね。
なんだか、あの奔放で明るく天真爛漫なユーリエと肝心のあの人とが印象一致しないまま、それを擦り合わせる描写もないまま放置されたものだから、どうも暁の賢者の寂しい一生が既に過去の歴史になった関係ない他人事にしか思えなくって。
つまるところ、最後の最後まで主人公とヒロインに感情移入しながら読んでたのに、クライマックスでいきなり二人の想いから振り落とされて、所謂泣き所だったにも関わらず、感情面で置いてけぼりにされてしまって、呆然としてしまった、というところか。
そこに到るまでは、ユーリエとカナクの二人の旅を追いかけるのは見てて本当に楽しかったんだけどなあ。いや、このラブコメな二人の掛け合いは素晴らしかったんですよ。なかなか、こんなに愛らしく可愛らしいヒロインは居ないし、拙くとも一生懸命にお互いの想いを擦り合わせ、気持ちを通じ合わせようとする健気な恋の交感は、とても微笑ましいものでニコニコして読んでいられましたし。ポップでコミカルな二人の旅の描写は、むちゃくちゃ面白かったんですよ。ホントに面白かった。だからこそ、勿体無くて仕方ないんですよね。うーん。
二人があまりにイキイキとしてたからこそ、ラストの顛末とのギャップが大きすぎて二人に起こった出来事として馴染まなかったのかもしれないなあ。実感させてくれるだけの描写が唐突すぎてなかった、というのもある。あれだけ、あからさまにかなり初期の段階で真相を伏せられずにあからさまに露呈してしまっていた以上、何が起こるか知っていてなお感動させるだけの迫真たる盛り上がりが必定だったはずなんだが、それがだいぶ足りていなかったと思う。
実に勿体無い。

これで話が終わっていたなら、それこそ「え? なにこれ?」で終わってしまう所なんだけど「1巻」という巻数表示がある以上、続き、あるんですよね? 続かせてくれるなら、ちゃんとあの可愛いユーリエの人生を納得出来るものにして欲しいです。今のままじゃ、どうにも消化不良ですから。