ブラック・ラグーン 2 (ガガガ文庫)

【ブラック・ラグーン 2.罪深き魔術師の哀歌】 虚淵玄/広江礼威 ガガガ文庫

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月刊サンデーGX連載中のガンアクションコミック『ブラック・ラグーン』を、超人気シナリオライター・虚淵玄が完全オリジナルで小説化する、大ヒット企画の第二弾! 舞台は再び、無法者の街・ロアナプラ──その、世界的にも例を見ない悪の「緩衝地帯」で、CIAが、遂行しようとする秘密計画とは?さらに、中国マフィアはどう動き、 ラグーン商会は何を狙う? 一つの事件を様々なキャラクターの視点から描き出す、まさに外伝ならではの胸躍る構成。『ブラック・ラグーン』オールスターズのそろい踏みを堪能せよ!!
……これって、今回の事件で一番貧乏くじを引いてしまったのって、エダに見せかけて実は坊っちゃんだよね? 張大哥も認めるナイスガイにも関わらず、どうしてあんなビッチに(苦笑
あの女はあかんだろう。もしかして、CIAとしてはミッションは大失敗したものの、アメリカの国益としてはプラスじゃないのかしら、あれ。あんな女、トラブルの元にしかならない気がするぞ。坊っちゃんがイイ男なだけに、可哀想過ぎる。いや、自分から勇躍助けに行ったんだから、自業自得なのかもしれないが。それでも、貧乏くじだよなあw

まあ先々の苦労は兎も角として、今回一番ご苦労様でした、なのはエダでしたね。所属しているCIAが組織の黄昏を迎えている中で、余計な足掻きをするその余波がもろに現場工作員であるエダに被ってきてしまうわけで。この辺、親元の組織があるとはいえ、ロアナプラで独立独歩の自分の領域を構築している他のメンツと違って、宮仕えの辛いところである。NSAとCIAの足の引っ張り合いはドン引きですけどね。仮にも同じ国の諜報機関同士にも関わらず、これじゃあお互い最優先の仮想的扱いじゃないですか。足の引っ張り合いどころか、殆ど殺し合い寸前みたいなものだし。

さて、タイトルにもあるように、今回の主役はあのロアナプラの道化師ならぬ魔術師ロットン・ザ・ウィザードである。彼が出てくる以上、話が真面目に進むはずがないんですよね。コメディだろうとなんだろうと、バギャバギャ人が死んでいくのは変わらないんですが(苦笑
せっかく主役になったのだから、ついにあのロットンの正体というか真価が見れるのでは、と期待したのですが……だ、ダメだ、こいつの事はやっぱり良く解らん! 結局、最初から最後までありとあらゆるものを惑乱させたまま突き抜けやがった。頭にお花畑が咲いていて言葉が通じないような時もあるし、普通に会話が出来て意思疎通出来る場合もある。でも、あとになって考えてみると、意思疎通が本当に出来ていたのか信じられなくなってきて、でも割とまともな思考を持ってる感じもして、ととにかくその心底が見えない。ヤクを決めてラリってる、という様子では一切ないだけに、尚更わからない。とてつもなく奥深いキャラにもみえるし、深く考えるのが馬鹿らしいくらい底が浅いようにも見える。その実力も含めて、結局謎が深まっただけだった。
でも、運だけじゃないんですよね。これは絶対。ロアナプラは運だけで生き残れるような場所じゃないし、仮にもあの凄まじい達人相手に一対一で真正面から互角にやりあえるはずがない。
でもでも、ロットンが密かに実力者だ、と言われると壮絶な違和感があるのである。いや、それはないだろう(笑
今回の彼の行動の原因というか動機、明らかになってみるとものすごく素朴で可愛らしいとも言えるんですよね。やっぱり難しく考えない方がいいんだろうか。何にせよ、シェンホアたちは仲良くていいよねえ。
そう、そのシェンホア一家が、なんかロアナプラでも一種独特のチームになってきましたよね。笑えるコント集団みたいなノリのくせに、やたらと凄味のある顔ぶれになってるという風に。いい意味でも悪い意味でも、ここだけは誰も死なずに生き残りそうなw
シェンホア、なんでロットンやソーヤーみたいなとんでもない連中を居候で置いてやってるのかと思ってたら、本当に放り出すとあっさり死んでしまいそうで心配だから、という理由だったのか。何気にお人好しというか、面倒見いいよなあ。
まさかとは思うが、あの人まで加わらんだろうな。加わったら、本気であらゆる意味で最強チームになってしまうんだが。さすがに、あれは小説限定キャラだから大丈夫だと思うが……別に広江さんが本編の方出しちゃっても全然違和感ないんだよなあ(苦笑
にしても、全然あの人には気付かなかった。それこそ、正体明かされるまで。素晴らしい隠行である。ただ武器を振り回す強さだけじゃない、まさに目指すものを極めた真骨頂だよなあ。

今回の混乱の渦を巻き起こしたのがロットンなら、その渦が出来る根源となったのはCIA。そして、一連の混乱を利用してその根源を引きずりだそうと画策したのが、ゲームメイカー・ロックだったわけだ。
そんな訳で、ロットン一党の大騒ぎと並走するように、今回はロックにも焦点が当たっている。この事件の時系列はラブレスのメイドがNSAの特殊部隊とドンパチ繰り広げたあの事件のあとになるようで、そうちょうど、漫画の単行本の直後ということになるのか。
あの事件で際立ったロックのゲームメイカーとしての変質と、その方向性の微修正がこの戯けたお祭り騒ぎのなかで、それなりの重要なポイントとして描かれている。
あのままでは、確かに自分の享楽のために他人を駒にしてその生き死にをほくそ笑みながら勝手気ままに左右する陰謀家への道をひた走りそうだったからなあ。バラライカ姐さんのテコ入れは実に的確だった。
あの姐さんは、何だかんだと世話好きだよなあ。享楽を気取ってるけど、実際やってることはロックを下衆や卑俗に堕ちないように矯正しながら、立派な悪党になるように教導しているようなものだし。死んでしまえばそれまでよ、という所が鬼だけど。

いい人と言えば、エダも何だかんだとこの街の住人としてはいい人なんですよねえ。ロックが死地に首を突っ込んできた時の、エダの一瞬の葛藤。彼を殺さざるをえない事へのやるせない憤りを、一瞬でねじ伏せたのは一流のエージェントとしてもロアナプラの住人としても相応しい在り方なんだけど、一瞬でも忌避感を抱き、殺したくないと思うあたり、エダは本心からロックに親しんでいたんだなあ、と嬉しくなった。その友人をあっさり切り捨てて殺そうとしているのに変な話なんですけどね。でも、一瞬でも「情」で躊躇ってくれるあたり、エダはロアナプラの中でもやはりまともな人間なんだな、と思った次第。

さりげに、最近本編で怪しい素振りを見せていたダッチについても何やら突っ込んだ事書いてたし、彼についての正体も原作者から教えられてたんだろうか。今後本編は、身内こそが信じられないような展開になってくるのかなあ。
一巻に引き続き、最高に楽しいエンターテイメントでした。面白かったーーっ。

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