H×H! お風呂は異文化コミュニケーション!? (一迅社文庫)

【H×H! お風呂は異文化コミュニケーション!?】 神尾丈治/丸ちゃん。 一迅社文庫

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どんな種族にも効く霊薬の材料を探して旅をする少年・リュート。古代遺跡に辿り着いたリュートの前に現れたソフィーという幼女は、遺跡の主である吸血鬼だった! ソフィーの許しを得て亜人種の集う村に滞在することになったリュートだが、そこではお風呂は男女種族関係なくみんな一緒で……。ドキドキ混浴ファンタジーラブコメ!
多かれ少なかれ、タイトルやキャッチフレーズと中身が違ったりするケースはあるけれど、ここまで実際の内容を違ってるのも珍しいな。これはタイトル詐欺と言われても仕方ないぞ(苦笑
これで中身がぜんぜん面白くなかったら激怒なんだが、むしろ話の筋立ては硬派で、確固とした主題を物語に対して貫き通している良作だったので、怒るに怒れない。温泉ネタ愛好家としては、混浴混浴と喧伝して置きながら、実際の温泉ネタがあのくらいというのはやっぱり不満なんですけどね。でも、これは作者の責任じゃないよなあ。でもでも、温泉ネタが持ちネタだというのなら、もっとエロい描き方はあるとおもうんだが。いや、ミトラさんのお誘いは良かったですよ、うん。

実際の物語はというと、温泉を追い求める山師の話などではなく、医聖と呼ばれた伝説の医者の弟子である少年医師が、霊薬を探して、オークや吸血鬼、獣人族といった所謂モンスターと呼ばれる異種族たちが暮らす村に迷い込み、そこで滞在しながら医療を通じて信頼を築いていくという医療ファンタジーだった。人間相手じゃなく、モンスター相手の医療というのがそれぞれの種族に合わせた治療のやり方や、種族特有の持病なんかがあって、面白かったですね。もっと謎の生物を相手にした試行錯誤の医療、という側面があったらもっと楽しめたかもしれませんが、獣人特有の回復力の高さに合わせた外科治療や、オーガという種族特有の持病とその対処法。他にもオークや吸血鬼相手の医療を、安易に魔法でパパッと解決するのではなく、ちゃんと症例に合わせた具体的な療法を見せてくれるので、興味が尽きない。
これで主人公のリュートがただの善人の医者だというのならそれまでの話なんですが、彼はその辺ちょっと変わってるんですよね。もちろん、彼が好感の持てる善人であるのは間違いないのですが、彼の持つ医療に対する情熱というのは他者に対する愛情や好意といった善意に基づくものとは少しズレているのです。それは、ある意味、医の修羅道というものであり、医聖と呼ばれるほどだった伝説の医師が、技術や魔力では決して秀でていないリュートを唯一の弟子とした理由でもあるわけです。魂の継承、生き様の後継。それは呪いであると同時に、医療という人を救う行為でありながら、紛れもなく血塗られた修羅の道を行く話であり、世代を超えて地獄で戦い続ける物語である。だからこそ、そんな少年の生き様に憤激し、哀しみ、感謝し、愛し慈しんでくれる人たちと出会えた事は、幸いなのだろう。
タイトルからはちょっと伺えない、なかなかに熱いパトスの迸る良作でした。