神明解ろーどぐらす4 (MF文庫 J ひ 3-10)

【神明解ろーどぐらす 4】 比嘉智康/すばち MF文庫J

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池田十勝は、夏祭りでまりもから投げつけられたバケツを返そうと、まりもの住むマンションにやってきた。インターフォン越しの会話。まりもが十勝の隠し事に気づく。雑木林でのキララとのキス。十勝は、キスしたことは認めるが、留萌との約束で本当のことは話せなかった。そして翌日、まりもの携帯にキララから電話がかかってくる。いつもの卑屈なキララの様子が、会話の途中で豹変し――? キララ、まりも、さきっぽ、十勝の四人が再び一緒に下校する日は来るのか! 風雲急を告げる充実下校生活。下校、フォー・エバー! ……いや、それは留年だから。

な……なんという超展開。これ、最初からこういう話にしようと思ってたの? 唖然呆然である。
三巻の展開ですら既に超展開というべき流れだったのに、この四巻と来たら、三巻で提示された展開をひっくり返し、コチラが目を白黒させている間にさらにとんでもない爆弾を炸裂させ、泡を吹きそうな衝撃に自失していたら、トドメにさらに魂が抜けそうな信じられない事を十勝ちゃんがやらかして、とまるで洗濯機にでも放りこまれたような驚愕のどんでん返し三連続だった。
特に、最後の大どんでん返しには、全身に電撃が走りましたよ。その直前まで、身も凍るようなサイコホラーをまざまざと見せつけられ震え上がっていただけに、その浸食を敢然と跳ね除けるが如き十勝ちゃんの形振り構わない勇躍には、痺れたーーっ! もう、めちゃくちゃかっこ良かった。いや、言ってることはこの上なく最低な上に、それを公衆の面前で絶叫するというひとつ間違えれば身の破滅であろう発言なんだが、その真意を知っている読者の身としては痺れる痺れる。嬉しいのは、訳がわからないながらもちゃんと丹下が十勝ちゃんの本気と真意に気づいてくれた所である。
目茶苦茶イイ女なんだよなあ、丹下。

にしても、凄い展開である。どうしてこうなった、と口をポカンと開けざるを得ない。得ないんだが、よくよく思い出してみるとこれを書いてたのは【ギャルゴ!!!!!!】を書いてた比嘉さんだったんだよなあ。かなり作品の雰囲気が違っていただけに、おもいっきり忘れていた。異常極まる人間の精神の変調を描いたサイコホラーといい、敢えて世界観を関係者だけの閉じた世界にするのではなく、大衆という観客を引き込むところといい、主人公の極まった漢前っぷりといい、此処に来て比嘉ワールドが炸裂した、という感じ。
それでも、この展開は超展開だよなあ。あまりの作風の大転換に、これはついていけない人もいるんじゃないだろうか。仮にも前巻までは【僕は友達が少ない】と同系統のほのぼの駄弁り系日常ラブコメ、というジャンルから小揺るぎもしていなかったのに、いきなりこれだもんなあ。留萌の登場は確かに波乱ではあったけど、まさかこんな展開になるなんて想像した人、いないでしょう。
自分としては、この危急を前にして十勝、キララ、まりも、さきっぽのメインの四人が四人ともが、思わず抱きしめてあげたくなるくらい素晴らしい人間性を見せてくれ、魅力的な振る舞いをしてくれただけに、もう四人ともが好きすぎて他どうでもよくなってしまいましたよ。
さきっぽなんて、振られて失恋したと思い込んで落ち込んだまりもに、あんなに親身になって付き合ってさ、なんてイイ娘なんだろう。まりもだって、決定的な場面を目の当たりにしてもっと歪んた有様になるかと思ってたのに、振られて凹んでとなりながら、振られた女なりの矜持をしっかりと見せてるんですよね。マンションに訪ねてきた十勝への接し方なんか、見てて泣きそうになったもの。それに、鈍感な男の子に対するヒロインの対応としては、あれは満点に近いでしょう。満点過ぎて、ラブコメのヒロインとしてはあり得ないくらい。そう、好きな男の子が鈍感だったら、気付いてもらう事を期待するなんて他力本願に甘えず、ちゃんと告白すりゃ済む話なんですよ。簡単にして最良の気持ちが通じる解決法。有象無象のヒロインたちが見て見ぬ振りをしてきたそれを、まりもが失恋したと思った後だったとしても逃げずに真っ向からやってみせた時には、感動すらしてしまった。抜け駆けした(と勘違いしている)キララに対しても、怒りをぶつけながらも最終的に絆されちゃってますもんねえ。本当なら、もっと憎み怒っても良かったはずなのに、嫌いになりきれないんだから。良い子ですよ。
そして何より十勝ちゃんです。状況はどう考えても無理ゲーだったんですよね。あの状況下だと、どう足掻いたところで四人の関係は破綻し、話は最悪の方向へと転がっていたはず。それを、十勝ちゃんは決して八方美人に事態を丸く収めようとしたわけではなく、自分が信じる最善を尽くし続けた結果、辛うじて首の皮一枚で希望を繋ぎ続けるわけです。その綱渡りも、あとになって分かることで、十勝ちゃんが行動していたその時々はそんな深刻な話とは誰も認識していなかっただけで、十勝ちゃんがちょっとでもまりもたちに妥協したり不誠実だったりしていたらと薄ら寒くなる。
これは、彼の献身と誠実さ、真摯さがもたらした結果以外の何ものでもなく、それが故にこの巻の十勝ちゃんは、今までも充分男前でかっこ良かったけど、それがさらに極まった漢でした。そして、最後にトドメのアレ、だもんなあ。

「勝ち越しさんムチャクチャだよ。頼むから休場してくれ!」

この無名の男子生徒が思わず叫んだ心からの絶叫が、妙にツボに入って爆笑してしまった。このセンスは好きだなあ。

風雲急を告げる中、次の五巻でついにラスト。いやあもう、どうなるんでしょうかねえ、これ♪

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