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最強の妹、再び! 一般人にも関わらず、歴戦の魔法使いたちをも圧倒するそのバイタリティは以前から些かも衰えること無く、それどころかむしろパワーアップ?
かのアディリシアが手も足も出ないんだから大したもんだよなあ。小姑としては手ごわいってレベルじゃないんだが、これで勇花はとびっきりのアディ贔屓だからむしろ頼もしいくらいか。アディの内面にここまでズケズケと入り込んで気合入れられるのなんて、見渡してもこの娘くらいなものですもんね。ダフネは何だかんだと遠慮があるし、穂波にはアディは弱味なんて見せられないだろうし。
しかし、妹ちゃんとしてはもう兄貴の彼女はアディ一択なのか。穂波とは顔を合わせてないって事もあるんだろうけど、事実として今現在、明らかにアディの方がリードし出してるもんなあ。イツキも完全にアディのこと意識しだしているし。
魔術結社の世界の大戦争が始まる前に、こうした魔法が一切関係の無い話が挟まったのは、場合によっては変に間が相手しまう所なのかもしれないけど、今回に関しては必要な話だったんでしょうね。魔法とは関係の無いところでアディの決心が固まり、先の抗争のお陰で距離感を掴めなくなっていたイツキとも、元に戻る以上の位置に戻れたわけですしね。
それ以上に、二部に入ってからブーストしっぱなしだったイツキの状態、彼に対する変化の認識を落ち着かせてくれた勇花の功績は大きい。彼女が見て指摘してくれたイツキの大きすぎる変化の本質は、まさにポンと手を叩いてしまうような鋭いもので、ややもイツキの覚醒に対して戸惑いを隠しきれていなかった登場人物たちにも納得と安心を与えてくれるものでしたしね。何より、誰よりもイツキという人を知っている妹ちゃんが、変わったけど何も変わってないよ、と太鼓判を押してくれたのは、何よりの安心材料でした。さすがは最強の妹。こりゃ、誰も頭上がらんわ。
あとクロエさん、色々と残念な素顔が明らかになりすぎw みかんたちに、時々物凄く面白い人になるよね、とか言われちゃってるし。同じ穴のムジナだw

そして、二話目は「魔法使いを罰する魔法使い」として働く穂波たちの現況。と、「協会」の対螺旋の蛇戦であるフェーデへの準備話。穂波にしても猫屋敷にしても、アストラルに居た頃から凄まじく一皮剥けちゃってるなあ。ただ、過酷で殺伐とした仕事内容にも関わらず、中身の方は変わらずにいてくれてるようで一安心。
協会の代表の正体、まだ詳しいところは明らかになってないけど、おおよそ螺旋の蛇の当主がああいう存在だった以上、協会もと思っていたら案の定だった。正しく黄金の夜明け系魔術結社の階梯を踏んでいるとも言えるが。影崎の場合もそうだけど、魔法って極めれば極めるほど実存から遠ざかっていくものなのか。だとすれば、やはり魔法が現実世界における生に基づく幸せと乖離していくのも当然なのか。それを摺りあわせていくのは、魔法使いも幸せになっていい、とするイツキの思想はやっぱり困難極まるんだろうなあ。

そんな魔法使いの幸福が真っ向否定されたたきつぶされた話が、三話の隻蓮さんの過去のお話。隻蓮さんとアディの父親であるオズワルドが友人同士だった、というのは以前隻蓮の口から語られた事でしたが、本当に二人、仲が良かったんだなあ。以前に一度オズワルド氏が過去の回想で登場したときは、まさに魔法使いらしい魔法使い、非情で冷酷な実際主義者という印象だったんだが、これほどまでに人間味溢れる人だったとは。人の夫として、人の父親として惜しみない愛情を注ぎ、大切なモノを守らんとしていた魅力的な当主。その人としての生き様と魔法使いとしての生き様の狭間で苦しみ、魔法とはなんなのか、それを極めるに意味があるのかを疑問し続けた人。そんな人が、どうしてあんな魔法の残骸となるような最期を辿ることになったのか、その発端にして結末とも言うべき事件が、今回の話だったわけだ。後に魔法そのものに成り果てるオズワルド氏が、ここまで魔法に絶望と疑問を感じていたなんて。でも、それも当然なんですよね。この人は、魔法に大切なモノを奪われ続けたわけなんですから。隻蓮としては、その悲劇を目の前で防げなかったことは痛恨事だったんだろうなあ。
アディの母親はまさにアディの母というべき勇ましくも美しく凛とした気高い麗人で、素敵な人だったんだなあ。
そして、このエピソードは同時に、アディが捧げようとしている代価の重たさも明示しているわけで、アディを待つ試練は予想していたものよりも遥かに重く、想像を絶する厳しいものになりそうで、気が重い。
……ところで、ダフネさんは十歳は年上の異国の僧侶に完全にお熱ですか、そうですか。もう隻蓮への態度が凄いことになってます、ええ(笑

そしてそして、ついにあの人物が戻ってくる。やっばいなあ、胡散臭いどころじゃない、得体が知れない上に何を考えているかさっぱりわからない、不気味すぎるぞ、伊庭司。

三田誠作品感想