ココロコネクト ミチランダム (ファミ通文庫)

【ココロコネクト ミチランダム】 庵田定夏/白身魚 ファミ通文庫

Amazon


そして──永瀬伊織は壊れていった。

「太一とは、付き合えません」太一は正式に伊織に告白し──玉砕した。異常な現象が起こっていても関係ないと、決死の覚悟で臨んだ想いは儚く散り、その上、重い足を引きずり向かった部室でフられた事をメンバーに知られてしまう! 部内は騒然となり、稲葉は動揺を隠せない。伊織が場を取りなそうとしたその瞬間、彼女の心と感情が響き渡り……。そして、その日を境に永瀬伊織は変わってしまった──。愛と青春の五角形【ペンタゴン】コメディ、岐路と選択の第4巻!
傑作。最高傑作。読み終った後に、これほど胸がぽかぽかにアッタマって、キューッと本ゴト抱き締めたくなってしまったような作品を傑作と言わずしてなんという。
ああもう、この子たちは素晴らしい、素晴らしいなあ。一人ひとり、ギュッと手を握って、ギューーゥと抱きしめて、バンバンと背中叩いて、ナデナデと頭を撫でてあげたい。君たちは本当に素敵でかっこ良くて可愛くて愛おしい子たちなんだと思ってることを、直接伝えてあげたくてたまらない。その代わりを、こうやってキーボードを叩いて発散しているわけなのだが。
もう、キューーッ、である。ムギューーーッ、である。たまらんぜー。みんな大好きだっ。

ふぅ、一先ず行き場のない塊を発散できた。落ち着け落ち着け。
 
実のところ、今回の「ふうせんかずら」が仕掛けてきた現象「感情伝導」は、今まで太一たちに起こった数々の現象と比べるとまだ大人しい部類のものだった。身体と精神が入れ替わってしまったり、理性が働かずに欲望のままに動いてしまったり、精神ごと身体が過去のものに若返ってしまったりといった現象に比べれば、「感情伝導」は太一たち身内の間にしか発言せず外部には直接影響が派生しない。そういった意味で、一番おとなしい現象のはずだったのに……伊織の破綻によって影響は普段の学校生活や友人関係にまで及んでいってしまうことになる。地味に最大のピンチだったんですよね。何気に、文化研究会を解散しなきゃならないんじゃないか、とまで思いつめる事になったのは初めてだった訳だし。
ただ、落ち着いてよくよく考えてみると今回の「感情伝導」で壊れてしまったのが伊織だけ、というのは凄いことなんですよね。これまでで一番大人しい現象とはいえ、外部に影響が出にくいだけの話で、その内容はというと自分が心のなかで思った、考えたことが感情ごとテレパシーみたいに伝わってしまう、という自分の心の中を洗いざらい見られてしまうようなものなのです。普通なら耐えられないでしょう。まともに、お互いの顔も合わせられないはず。自分の全部をさらけ出して、平気で居られるはずがない。多分、最初の頃の彼らならやっぱり耐えられなかったでしょう。五人の関係はズタズタに修復がきかないくらいに切り裂かれてしまっていたはず。
そう考えると、今のこの五人の関係というのは凄いというか凄まじいというか。これまでの事件を経て、もうこの五人は自分の弱い部分も醜い部分も、こいつらになら見られても仕方ない、心の奥底まで覗かれてしまっても、こいつらなら大丈夫、という関係になってるんですよね。勿論、そんな境地や関係に到るまでに彼らはそれこそ心がズタズタになる寸前にまで傷めつけられ、その上で痛みを乗り越え、お互いを信じ、友情を深めていったその結果として今があるわけです。安易な仲良しごっこの結果なんかじゃありません。心を傷だらけ血塗れにした上での信頼関係なのです。
今回の伊織の破綻もよくよくみると、自分の心が覗かれる事そのものについて忌避してた訳じゃないんですよね。彼女が壊れたのは、これまで上手くやってきた事が突然出来なくなってしまったから。どうやって今まで自分を、永瀬伊織という人間をやってきたのかがわからなくなってしまったから。彼女自身、難しく考えすぎていてたというのもあるんだろうけど、これまで普通にしてきたことが突然やり方からわからなくなってしまった時って、とてつもないパニックになるんですよね。当たり前のようにしてきたことだから、これまで通りにしようとしてもその方法がわからない。多分、前巻のラストらへんから、やや自分のあり方考え方について情緒不安定になっていた所に、今回の感情伝導で外部から自分の内側を観測された際に伊織らしくない、と皆から否定されて締まったことで、何が自分なのか訳分かんなくなっちゃったんでしょうね。もう、今回の現象は明らかに伊織をピンポイントで狙っていたとしか思えない。
そんなパニックになってしまった伊織に、真っ向からぶつかっていく太一と姫子、唯と青木の四人。すれ違い、戸惑い、右往左往しながらも、これまで一緒にボロボロになって、全部さらけ出して乗り越えてきた皆の絆は、変わり果ててしまった伊織に対して、困惑や怯えは生まれたとしても不審や疑念だけは抱かせない。当たって、ぶつかって、お互いに傷ついて、図らずも傷つけあって、それでも憎しみや怒りには変貌しないんですよ。自分を哀れんだりせず、ひたすらに相手のことばかり思ってる。薄っぺらな偽善や信念などではなく、それはこれまでの時間で彼らが勝ち取ってきた確かな強さな訳です。どれだけ傷ついても痛めつけられてもへこたれない、強くなったこの子たちが、本当に眩しかった。最初の弱かった頃を知っているから、此処に到るまでの必死の頑張りを余すこと無く知っているから、この子たちが最後まで負けまいと、伊織を失うまいと俯かずに歯を食いしばって頑張る姿が、ひたすらに嬉しかった。
最高だよ、君たちは。

これは永瀬伊織の限界を越えてしまったが故の破綻と、その先に太一や姫子たちの手助けで得た再生の物語。人間を人間が救うなんておこがましい。その点に置いて、太一の自己犠牲願望が彼の成長と共に鳴りを潜めていったのは良い方向性である。でも、自分を救うのは自分でしかなくても、きっと誰かの助けは必要なんですよね。助けあって生きていく、助けあって成長していく。そうする中で、支え合い理解し合うことで生じる恋がある、芽生える想いがある、弾ける衝動がある。好きだという感情が、花開く。
そのなんて素敵なことでしょう。

今回の稲葉姫子は、恋する稲葉姫子は、無敵を通り越して輝いてました。もう、無茶苦茶可愛い。史上に燦然と輝くくらいのとびっきりの、尋常じゃない可愛らしさ。もはや、兵器レベルの凶悪さ。前巻までのデレ可愛さですら、既に致命的な殺傷力だったにも関わらず、そこからさらに二段階、三段階レベルが違ってしまってる。
そんな超絶ヒロインでありながら、同時に姫子は対伊織戦の核弾頭として地べたを這いずりながらも、血反吐を吐きながらも、真っ向から歯を食いしばって突貫していく伊織のヒーローでもあったわけです。まあ、姫子に限らずこの文化研究部の五人って、自分以外の四人に対してヒーローでありヒロインでもあるんですけどね。でも、姫子はその中でもとびっきりだわ。ある意味、一番弱くて脆くて不器用なくせに小器用な責任感の強い子だったからこそ、主人公の太一を上回る勢いで縦横無尽に走りまわっていくわけです。
だからという訳じゃないけど、稲葉んが報われてよかったよー。デレばんって、どんななんだろう、もう気になって仕方ない。ああでも、そうかー、そうかそうか、うんうん。もう、相好が崩れて仕方ない。幸福感が後から後から湧いて出てきて尽きようがない。ヨカッタヨカッタ。素晴らしかった。素敵でした。最高傑作でございました。

こりゃ、始まってる漫画版とか、今度出るらしいドラマCD版も気にした方がいいなあ。今は、ココロコネクト関係、なんでも見境なく漁りたい気分だ。

シリーズ感想

FB CollectDrama03「ココロコネクト 夏と水着と暴風雨」
FB CollectDrama03「ココロコネクト 夏と水着と暴風雨」(ドラマCD) 水島大宙(八重樫太一) 豊崎愛生(永瀬伊織) 沢城みゆき(稲葉姫子) 金元寿子(桐山唯) 寺島拓篤(青木義文)

ポニーキャニオン 2011-02-16
売り上げランキング : 406


Amazonで詳しく見る
by G-Tools