姫婚オールアバウト (コバルト文庫)

【姫婚オールアバウト】 野梨原花南/雪リコ コバルト文庫

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バツイチ姫の再婚ファンタジー!
10歳でクーヴ国の王子に嫁いだものの、革命が起きて王家が滅亡、バツイチになったレッカ姫。街中で静かに暮らしていたが、ある日、父王から呼び出され、西の山の魔王と再婚するように言われ…!

エピローグで突然はじまった展開に、え? 何が起こってるの? と目を白黒させていたら、最後の一文が目に入って、お腹を抱えて大笑い。なにこれ、そういう話だったの?(爆笑
【ちょー】シリーズのラストもそうだったけど、野梨原さんって締めの一文に時々必殺の威力を持たすよな。華麗にして鮮やかな幕引き。その見事さに、読み終えたあとにちょっと浸るかのような放心に陥るくらいの。
に、してもだ。中身を読むと上のウェブ上に掲載されてた簡潔なあらすじ、大きく間違い過ぎじゃないか? 革命なんか起こってないし、父王に呼び出されて再婚しろとか言われてないじゃないですか。呼び出しがあったのは確かだけど、その内容は「王の娘を嫁に、と言ってきたので、一度王宮に顔出してよ、家族会議するから」というもので、特にレッカを指名しての事じゃなかったにも関わらず、レッカ姫は王宮に向かわず直接魔王の住む西の山へと向かっちゃうわけだ。
これは自己犠牲でも蛮勇でもなく、レッカが過去を克服するために自らに課した試練であり、半ば癒えたとは言え、未だ根強く彼女を苛む心の傷に決着を付けるための戦いである事が先々分かってくる。奔放で自由闊達に見える姫様が抱える心の傷。かつて、まだ幼かった彼女がどれだけ残虐に、惨たらしく心をズタズタに引き裂かれていったかの回想を見るに、よくまあこれほどまでに立ち直ったものだと感心させられてしまう。それ以上に、再び彼女の前に過去の残照が現れたときに、その時が来たのだと躊躇わずに立つ勇気。勿論、克服を目指しているということは、彼女の中にはまだ恐怖や痛みが色濃く残っているわけです。実際、心の奥底では怯えが貼りついていたようですし。伝令係のメレンくんを王宮に返さずに無理やり同行させたのは、単なる気まぐれじゃなくて、どうやら一人でも多く自分を助けてくれる人が側にいて欲しい、という心境が意識してか無意識かはともかく、あったようですし。
このレッカ姫が心磨り潰され、絞め殺されていったやり口が、また凄まじいんですよ。正直、読んでてゾッとしましたわ。ここまで陰湿に人間の心を殺していくやり方は見たことない。吐き気がするような悪意。露骨であからさまで無い分、えげつないんですよ。これやられると、相手を憎むんじゃなくて、むしろ申し訳なさや負い目に苛まれ、萎縮し、どんどん自分に絶望して行ってしまうという悪循環のスパイラル。
よくぞまあ、そんな所からたった一人で逃げ出してきたものです。家族が、そんな彼女を褒め、全力で守ろうとしたのもよく分かる。時に、人は如何なる犠牲を払ってもたった一人を守らないとと思い定める時が訪れる。ファルサン王家と魔王の壮絶な戦いは、まさにそれだったのでしょう。どうやら、それによって生まれた犠牲も多かったようですし、レッカ姫が今、勇気を振り絞り過去と向き合おうとしたのは、自分一人の為ではなく、かつて自分を守ってくれた人たちに対する責任を果たそう、という意味もあったのでしょうね。
イイ女じゃないですか。
イイ女だからこそ、最後にあんな有様になってしまったわけですが。姫様、メンドクサイで決めちゃうなよ!!(爆笑
いや、私はイイ女ならそういうの全然アリだと思うんですけどね。逆ハーレムw