シスター・ブラックシープIII  薔薇と聖歌 (角川ビーンズ文庫)

【シスター・ブラックシープ 3.薔薇と聖歌】 喜多みどり/桐矢隆 角川ビーンズ文庫

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この僧衣を剥ぎ取ってしまえば、コンスタンティンが【黒い羊(ブラックシープ)】かどうか確かめられる――美貌の司祭ユリエルに助祭の美少年コンスタンティンへの疑いが生まれる。だけど強引に【黒い羊】にキスをして傷つけた手前、コンスタンティンに「肌を見せてほしい」のひと言が言えない。そんな中【黒い羊】の偽物が現れたことで事態は急展開し!? 「怖かったか? 俺に会うのが。なあ、シスター」禁断のトリニティ・ラブ・ファンタジー第3弾!!
なんか、登場人物の殆どが多かれ少なかれ、煩悶や懊悩を抱えるようになってしまったなあ。そんな中で、ユリエル司祭の苦悩だけが、多くの人の運命を左右する事からも本来一番深刻な類の代物のはずなのに、何故か一際馬鹿馬鹿しい気がするのはなんでだろう(苦笑
いや、バカにしてるわけじゃないんですよ。本人、凄く真剣ですし、シスター・ブラックシープの正体に関わることですからね。
でも、司祭が悩んでるのって、
・コンスタンティンがどうも【黒い羊】に似ている気がする、疑わしい。
・しかし、【黒い羊】は女である。コンスタンティンは男である。
・どうやら自分はコンスタンティンに恋心らしきものを抱いているのではないか、という疑惑が……。
・コンスタンティンが女なら、この恋心は正常のものだが彼の正体が悪魔に憑かれた【黒い羊】であり、エクソシストの自分の討伐対象になってしまう。
・逆にコンスタンティンが男だと、自分は同性に恋をしてしまっているということに!?
・しかも、同性に恋をしているという事実を認めたくないがために、彼が女である【黒い羊】であってほしいという卑しい願望から、彼を疑った事になるのではないか?
と、纏めるとこう云う事になるのか。
なんか深みにハマってしまっているユリエル司祭が、最近可哀想になってきましたw
コンスタンティンが女で【黒い羊】なんだよ、と教えてあげたら、彼の悩みはとりあえず自分が好きになった人は黒い羊でしたどうしよう、という一点に絞られるので、むしろ教えてあげたくなってくる。何かいつの間にか、ユリエル司祭以外の登場人物の大半が、コンスタンティンの事を女で【黒い羊】なのだと知ったか確信してしまっているので、ユリエル司祭だけやたらと置いてけぼりになってますし(苦笑

とりあえずユリエル司祭は置いておくにしても、コンスタンティンと【黒い羊】を取り巻く状況は油断できないものになってきている。女領主はほぼコンスタンティン=【黒い羊】と確信して彼女を手に入れるために様々な清濁合わせた手を打ってくるし、悪魔は悪魔で段々と人の心と恋すること愛する事について自分の中に染み入らせ始めているけれど、その発露の方向はやはり悪魔めいていて人心を惑わすもので、コンスタンティンを人の世から引き剥がそうとしているし。
何より、コンスタンティン自身が自分が【黒い羊】というダークヒーローをこの悪徳の街でやる事で起こる影響について、真剣に向き合わなければならない状況へと追い込まれている。
面白いことに、前巻にしてもこの巻にしても、悪魔との婚姻の指輪が示した彼女の善行って、【黒い羊】として行った事じゃなくて、コンスタンティンとして行った事に反応してるんですよね。はたして、彼女はそれに気づいているのか。【黒い羊】は正義の為なんかじゃなく、結局は自分が暴れたいが為にやっているに過ぎない事を、彼女はちゃんと自覚しているので、何となく承知しているのかもしれないけど。
何れにしても、エリカが全部事情を知った上で味方になってくれたのは大きいなあ。これまで小さい頃から男として生きてきて、同性の友人がいなかったコンスタンティンにとって、エリカの存在はかけがえのないものになりそうだ。問題は、エリカが相手が女と分かっても、構わずゴーゴーの戦闘態勢を崩さない所だけど(笑

さて、あの悪人ヒースですらコンスタンティンに対して思うところ有り、胸に煩悶を宿している中、たった一人我が道を威風堂々と突き進むのが、女領主グロリアである。この人だけは、迷いがないよなあ。自分が正しいと信じ込んでいるタイプじゃないんだが、領主としての自負が悩んだろ迷ったりするような遊びを自分に許していないかのように見える。
とはいえ、その本心の奥底、領主としての鎧を取り払った奥底に迷いや躊躇いのひとつもないとは思えないので、実のところ本当に迷いも何もなく自分の生きざまを見いだしているのは、彼女に仕える代官のレオンなのかもしれないな。
むしろ、最近はこっちのグロリアとレオンの関係の方が気になってきた。

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