アイドライジング! (電撃文庫)

【アイドライジング!】 広沢サカキ/CUTEG 電撃文庫

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超大型新人アイドルとちびっこプロデューサーのコンビが贈る新世紀アイドルストーリー!!

 アイドライジング。それはアイドルたちが己の夢と希望を懸けて戦う、新時代の一大エンターテインメント! 各企業の科学技術の粋を集めて作られたバトルドレスをその身に纏い、美少女たちは華麗にステージを舞う──!
『さぁ始まりました! 今夜はなんと採れたてぴちぴち産地直送アイドルの登場です!
 彼女の名前はアイザワ・モモ! とある事情で72万円が必要になり単身上京してきたばかりのモモちゃんは、ファッションモデルもびっくりな恵まれた体躯だけでなく、何より素朴で元気いっぱいな人柄を気に入られて急遽株式会社ミニテックスのアイドルになったそうです! そして彼女を支えるのは若手プロデューサーのオウダ・サイ!
 果たして凸凹二人三脚でどのような戦いを見せてくれるのでしょうか!? そして襲い来る難敵に打ち勝つことができるのか──!』
第17回電撃小説大賞金賞受賞作品。元ネタはやっぱりアイドルマスターなんだろうな、これ。アイドルひとりにプロデューサーが一人付くとか。72万円とか数字が恣意的すぎるじゃないか(笑
しかし、このアイドライジングなるエンターテインメント産業はジョービジネスとして実際よく出来ている、というよりも産業構造が結構生々しいくて好みである。純粋に格闘によって強さを競う純然たるスポーツではなく、むしろプロレスみたいなシナリオのあるショーという側面が強いんですよね。スポンサーである企業の技術力の宣伝の為に、バトルスーツに付与された特殊能力を一度はお披露目しなくてはならない、とか。新人は初戦はだいたい勝利を譲ってもらえるとか。バトルそのものも、ガチンコ勝負もあるにはあるけど演出と宣伝重視の戦いも実際多いようだし。ここらへん、なぜ「選手」ではなく「アイドル」として売り出しているのかをよく考えているビジネスなんじゃないだろうか。
勿論、出来レースばかりじゃただの芸事になってしまう訳で、此処ぞというときには本気同士の真剣勝負がなければ盛り上がりも頭打ちになってしまうわけで、多分これ、ちゃんと住み分けみたいにしてガチンコ勝負重視のアイドル、演出重視のアイドル、と善玉悪玉以外にも自然と分かれてきてるのだろう。
んでもって、この主人公であるモモは、アイドル業界の事を何もわからないまま飛び込んだ結果、ガチンコ勝負の魅力に引き込まれていくわけだ。そんな右も左もわからない新人素人の女の子が、恵まれたセンスと体格を武器にして、かつてアイドルを目指しながら夢叶わなかったプロデューサー・サイの助けを受けて強敵をなぎ倒していくサクセスストーリー、という王道も王道の真っ向勝負の物語である。
なんだけど……いや、王道だからこそ、か。ぶっちゃけ、この一冊でモモとサイの物語って殆ど完成しちゃってるんですよね。既に彼女らが望むべきステージにこの巻でたどり着いてしまったわけで、彼女ら二人としてはまだまだこれから始まったばかりなんだけれど、物語を読む側の立場からするともう見るべきところは無くなってしまった気がするのである。
そこで、視線が向くのがもう一人の新人アイドル、オリンちゃん。むしろ、最初から最後まで光り輝く日の当る道を歩んでいるモモよりも、オリンの方が設定が無茶苦茶面白いのだ。
一旦、採用試験に合格しながらも、突如割り込んできたモモに採用枠を取られて梨の礫で放り出され、それでも諦めずに粘って就活した結果たどり着いたのは、潰れかけのアイドル派遣会社。しかもそこで運用されてるバトルスーツは、失敗作として曰くつきの欠陥品。そして会社を一人で切り盛りしているオジさんは、一癖も二癖もありそうな食わせ物。そしてオリン自身もカワイコぶりっ子お手の物、その本性はひねくれ者の性悪猫で、しかし諦めの悪いしぶとく粘り強いタフネスガール。
どう考えてもこっち側の話の方が面白そうなんですが(笑
もし続編があるなら、絶対主人公はオリンを希望したいですね。悪役邪道の麒麟児と曲者プロデューサーが幾度も挫折を繰り返しながらも、やがてアイドル業界を引っ掻き回してのし上がり席巻していく物語、なんて方が絶対に面白そうで、読んでみたいですよw