ガンパレード・マーチ2K(にせん)―北海道独立〈1〉 (電撃文庫)

【ガンパレード・マーチ2K 北海道独立 1】 榊涼介/きむらじゅんこ 電撃ゲーム文庫

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 幻獣との本土決戦に辛うじて勝利を収め、日本は平和を取り戻した。しかしその代償は大きく、政治は混乱、経済は疲弊し、そして決戦を戦い抜いた日本自衛軍は壊滅的ともいえる状態に陥っていた。そんな中、唯一不気味な沈黙を守るのが北海道だった。北海道は対幻獣戦に加わらず、無傷の軍を温存。難民労働者を吸収して日本最大の生産基地へと成長していた。本土での政争に敗れた軍産複合体はこの地に拠点を移し、日本政府への反撃の準備を整えつつあった。死の商人たちの夢見る独立国家とは? そして心身ともに疲弊の極に達した5121小隊は、再び立ち上がることができるのか? 新シリーズ、渾身の第1弾!!

これこそまさに「どうしてこうなった!?」、である。主戦派の幻獣王を討伐し、カーミラとミハエルという極東地域の幻獣を纏める王族と和睦を結んだことにより、長年に及んだ幻獣との戦争も何とか日本が破滅に至る前に終結を迎え、さあ平和が訪れた……とは行かないこの理不尽。
ユーラシア大陸を横断し日本に上陸してくるであろう幻獣を迎え撃つために、後方の生産基地として北海道を特区化した上に、大陸から逃れてきた難民を治安維持のために全部押し付けた結果、いつの間にか北海道は中央政府の力が全く及ばない、半ば独立した全体主義国家と変貌していた……って、ちょっ、おい!?
謎に包まれた第七師団とか、幻獣の東北侵攻にも沈黙を守り続ける北海道とか、私はもっとあの地域や軍部隊は神秘的な理由で戦争の枠外にいるのかと思ってましたよ。第七師団なんて、5121とは全く別の意味合いでの、自衛軍の決戦部隊なのかと思ってたのに。現実での自衛隊の第七師団が、唯一の機甲師団であるのと同様に。
まさか北海道がこんなことになってたなんて。中央政府の政治家や役人たち、幾らなんでもこれ放置しすぎだろう。それだけ、樺島財閥の威光が幅を効かせていたのかもしれないが。
もうこれ、なんて【征途】? だよなあ。ほとんどこれ、南北の分裂国家状態じゃないか。精鋭の特殊部隊がピンポイント上陸での強行偵察を行わないと情報も探れないって、ある意味大陸に対する捜索よりも危険度が高くなっているようだし。
問題は、現状の日本国が戦争による疲弊によって、北海道の生産能力がないと立ち直る前に潰れてしまいかねないということ。逆に北海道は本土と関係を完全に絶ってしまっても独立して生存出来るということ。
建前として、奴隷まがいの労働力として働かされ迫害されている大陸難民や不必要なほど管理されている一般市民を救済し、非人道的な実験を繰り返している軍研究施設の摘発と、北海道がかくまっている国家反逆者樺島財閥の関係者の逮捕の為に、という理由はあるけれども、一番切実な理由として最初に書いた北海道の生産能力が今の日本には必須な訳で……こりゃ大原首相も後には引けンわ。
待ち構えているのは、人間同士の戦争、それも同じ国民同士の血みどろの内戦である。
これまでも幻獣共生派テロリストとの戦い、という人間同士の血で血を洗う泥水を啜るような戦争は陰でずっと行われてきていたのだけれど、表立って同じ軍同士が砲火を交えるというのは…悪夢だ。これは滝川たち普通のメンタルしか持たない少年少女組が関わっちゃダメだよなあ。さすがにこればっかりは、精神が持たないだろう。それこそ、本物の戦争の犬とも言うべき人間でないと。
いずれにしてもこれ、ヘタをすると幻獣戦争よりも遥かにエグい戦争になるぞ。
言わばこれは清算である。生存戦争という極限の中で目を逸らされ、無理やり抑えつけられていた矛盾が、これまで秘され続けていた日本という国が犯した罪が白日のもとにさらされ、償いを求められているのだ。
戦争が終わりました。平和になりました。めでたしめでたし、とはいかないんだよなあ、現実は。むしろ、戦争が終わった後にこそ、積もり積もったツケが吹き出してくるのだろう。それを、この作品は如実に体現していると言えるのかも知れない。

シリーズ感想