俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる (GA文庫)

【俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる】 裕時悠示/るろお GA文庫

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 妹みたいな可愛い幼なじみ・千和。
「絶対やだ! やだやだっ! あんたなんかが彼とつきあうなんてぇっ!」

 銀髪お嬢サマな帰国子女・真涼。
「あら、幼なじみごときにそんな決定権があるのかしら?」

 ――おお、どうしてこうなった!?
 俺は平穏な高校生活を望んでいたのに、真涼と<秘密>を共有したためムリヤリ彼氏にされてしまった!
 ヤキモチを爆発させた千和が叫ぶ。
「あたしだってモテてやるもん!」
 何かを企み、真涼が微笑む。
「では私達がサポートしますね?」
 千和の彼氏作りになぜか協力するハメになった俺の運命やいかに!?

 裕時悠示×るろおが贈る、両手に花?のらぶ×らぶコメディ!
え? これタイトル違うでしょう。正確には【俺の彼女が俺と幼なじみをペットにして弄りすぎる】じゃないかな、かな?
いやしかし、このタイトルはいいなあ。小説にとってタイトルとは看板です。特にライトノベルみたいに流れの早い業界では、一目でグッと関心を引き寄せ、興味をそそられるタイトルというのはまず最初に手を取らせるという意味で非常に強力な武器になる。勿論、そこで中身が伴っていなければ打ち上げ花火で終わってしまうのですが、しっかりと面白いと読者の心を掴むものでさえあれば、ガーーーッと物凄い勢いで売れていく可能性は並みの面白い作品よりも大きくなるでしょう。あの【俺の妹がこんなに可愛いわけがない】なんかはその典型な訳で。
その意味では、この作品も充分に狙いに来て、それが空転せずにうまく仕留めてる感じだ。レーベル側もプッシュしてきてるみたいですしね。
基本的に、タイトルと違って胃が痛くなるような修羅場展開は今のところなく、GA文庫では今のところ見なかった駄弁り系のサイドに置かれるような作品になるのですかね、これは。何やら独自の部活を新たに起てて、主人公と真涼、千和の両ヒロインの三人で、千和の恋愛力を鍛えていく、なんて活動をしていくわけですから。
勿論、駄弁り系とは言っても和気藹々と仲良く遊ぶわけでも、タイトルのように主人公を挟んで取り合いの修羅場になるわけでもなく、隠れ女王様だった真涼によって主人公は首根っこを抑えられ、お馬鹿な千和は真涼の口八丁によっておもちゃのように弄られ踊らされ遊ばれるという、何このプレイ?(笑
実際、千和の遊ばれっぷりは、もはや悲惨を通り越して痛快ですらある。普通なら「もうやめてあげて! 千和のHPはとっくにゼロよ!」な事をうまく丸め込まれて乗せられて、結構な勢いで羞恥プレイ状態の凄いことをやらされてたりするのですが、これで千和はケロッとしてるんですよね。これ登校拒否になるレベルだろう。って、これで学校に出てこれなくなる子は、そもそもこんな事仕出かさないか。人前でやるには恥ずかしすぎるだろう、これw あれでウケはとれたかな、と平然と嘯く千和は、もしかしたらとんでもない大物なのかもしれない。関わり合いたくない類の、だけどなw

親に捨てられた事から、恋愛に対して嫌悪と拒絶感を抱いている主人公鋭太。理由は分からないものの、鋭太を上回る激情を胸に、恋愛を憎悪している真涼。そんな恋愛を憎むもの同士が結んだ偽装(フェイク)カップルに、不器用に突っかかってくる幼なじみの千和。千和にとっては、恋愛を毛嫌いしている鋭太に自分の想いを告げるというのは、長年タブーだったのでしょう。彼が恋愛を嫌うようになった理由を彼女は近くからつぶさに見て知っているし、彼が自分に求めているものを承知している。それなのにもし自分が恋愛感情を鋭太に抱き、それを共有してほしいと願っていると知られたら、そこに待っているのはお前もかという失望、あるいは落胆、そして嫌悪? ただ振られるだけでは済まないという予感。二度と元の関係には戻れないという恐れがずっと彼女に二の足を踏ませていたのだとしたら、鋭太と真涼が付き合い始めるという現実は青天の霹靂だったに違い有りません。
認められるはずないじゃないですか。
でも、だからと言ってじゃあ自分も本当は好きでした、なんて安易に口走れるほど鋭太と千和の関係は軽くなく、彼女の抱いていた恐れは重かったのでしょう。彼女の不器用で、ある種無様ですらある空回りにはそれ相応の理由があり、それ以上の必死さがあったわけです。
真涼はそれを見て、どう思っていたのか。
最初に鋭太をフェイクの相手として選んだのは、本当に彼女が語った理由だけなのか、本心を殆ど語らない真涼ですから想像するしかありません。が、彼女が千和を突き放さず、むしろ取り込みおもちゃにして遊んでいた、ということは彼女の必死さに対して何か思うところがあったのは間違いないはず。好きという気持ちに必死な千和が眩しかった? 自分の憎悪を否定されているようで認められなかった? それとも単純に羨ましかった? おそらく、一言で言い表せないような複雑な感情を、真涼は千和に抱いていたような気がします。
そして、間違いないのはそんな千和の必死さが向けられている鋭太を、取られたくないと思う気持ちが真涼の中に生じていること。単なるフェイクの彼氏ではなく、あれほど毛嫌いし憎んですらいた恋愛の対象となりかけていること。鋭太を取られたくないという気持ちと、それが恋愛感情であると認めることは、多分真涼の中ではまだイコールに出来るほど割り切れているのか、決心できているのか定かじゃないですが、どうやら本当の修羅場へと発展する舞台は整い始めている御様子。
千和にしても、真涼にしても、今まで否定したものを肯定しなければ、相手に大事なモノを取られてしまうという状況に陥り始めているわけで、この時点でもうなかなかの修羅場状態なのかもしれないですね。

何にせよ、とんでもなくイイ性格をしたヒロイン真涼に、お馬鹿チワワな幼なじみの千和、そしてかつて夢見る少年だった現実主義の恋愛アンチ主人公。この三角関係、期待してた以上に面白かったです。次回以降も楽しみ。