青春ラリアット!! (電撃文庫)

【青春ラリアット!!】 蝉川タカマル/すみ兵 電撃文庫

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出てくる連中バカばっか。破壊力抜群の、一直線に疾走する青春コメディ!!

「ッシャーッ! 行くぞコノヤローッ!」
 どこかの有名レスラーばりにマイクコールをし、全校朝礼の場で公開告白をした月島。その結果は──当然、停学処分となったのだった。
 バカの日本代表、月島を心配する者がひとり。友人の宮本である。失恋し、なおかつ停学のダブルパンチで傷心であるはずの月島を見舞うことに。その道すがらで出会ったのが、整った顔立ちながら愛想のかけらもない無表情の少女──長瀬だった。
 長瀬は「停学になってしまった月島先輩を慰めてあげたい」と殊勝なことを言う。どうも、月島に“ゾッコンラヴ”であるらしい。あの月島に“ゾッコンラヴ”なのに驚きつつ、自分に対してはなぜか横柄な彼女に怒りも覚える宮本だった。
 この奇妙な三角関係が、風雲嵐を巻き起こす事になり!?
バカばっかり、と言ってるけどこれは知能が低いという意味でのバカじゃなくて、割りに合わないと分かっていても愚直に自分の信じる道を行く、自分から敢えて貧乏くじを引くことを厭わないバカどもの物語。それも、何も考えずに突き進むんじゃないんですよね。ヘタレの宮本も、ストーカーの長瀬も、そして脳筋バカの月島も、それぞれ悩み迷いながら恐る恐る手探りで自分の為すべき事を模索しているのである。右往左往しながらこれでいいんだろうか、こんな事でいいんだろうかと迷い悩むのは青春の特権みたいなもの。それでいて、いざとなったら迷いも何も振り捨てて突き進むのはきっとバカの特権なのだ。傍から見たら何も考えていないと思われるかも知れないが、こうやって考えて考えて悩んだ末に、取り敢えず悩むのを止めてやる、考えるのは一旦停止、という結論をだすのは、それはそれでちゃんとしたひとつの選択なんですよ。その意味では、こいつらは三人とも良い意味で大馬鹿野郎どもなのです。

しかし、またこれは「変」な作品だなあ。新人賞に投稿する作品としては、ビックリするくらいに肩肘が張ってないカンジがするんですよね。物語の中に、一本でっかい幹がすっくと立っているかのように話の筋立てが単純明快であることに徹している。主要登場人物の宮本、長瀬、月島の三人が置かれた状況において如何なる思いを巡らせ、如何なる行動を取るのか、という点を見せる事に重点を置いて、どっしりと腰を据えているみたいなブレの無さは安定感を感じさせられる。普通はもっとゴテゴテと付け足したくなるものなんだけどなあ。アレも書きたい、これも書きたい、というふうに。そういうガツガツしたものを感じさせず、しかしギリギリに研ぎ澄まし余計な物をそぎ落とすような切羽詰ったような感じもなく、自然に「シンプル」たらんとしている、とでも言うのか。
この作風というか、作者の雰囲気は面白いなあ。

改めて、メインの三人に目を向けると、三角関係などとあらすじでは語られてるけど、ぶっちゃけこいつらってトライアングルは全然形成してないんですよね。全然ラインは通ってない。一人ひとり、完全に自立していて、それぞれが勝手に振舞っているに過ぎない。三人とも、お互いに何も期待してないし、頼ろうともしていない。自分のことについては全部自分でやろうとしてるんですよね。それでいて、友達を助け手伝う事については何の躊躇いも抱いていない。三人とも、勝手に友達のやろうとしていることに手を貸しているに過ぎないのである。それに関する見返りや、報いというのは最初から考えもしていない。ギブ・アンド・テイクじゃないんですよね。常に、一方的。それが自然に三人の間を循環している。そういう意味で、期待も頼りにもしていないのだ、こいつらは。
実に、奇妙で心地良い関係である。青春と言うには清々しすぎるくらいに。いや、この清涼感こそが本来の青春というものなのかしら。そう考えると、タイトルの青春ラリアットというのはよくこの作品の本質を捉えたもののように思えてくる。まさに、ラリアットみたいに問答無用で有無を言わせずなぎ倒す友情青春ここにあり、ってなもんだ。