ベン・トー 7 真・和風ロールキャベツ弁当280円 (ベン・トーシリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)

【ベン・トー 7.真・和風ロールキャベツ弁当280円】 アサウラ/柴乃櫂人 スーパーダッシュ文庫

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美味しいものには、毒がある!?
「このライトノベルがすごい!2011」第5位ランクイン!シリーズ第8作!

半額弁当争奪バトルに青春を賭ける佐藤洋は、ひょんなことから未曾有の経済危機に陥り、『変態』の二つ名を体現する日々を送っていた。そんなある日修学旅行で槍水が不在になる間、佐藤は彼女の縄張りであるスーパーを託されることに。しかし槍水と入れ替わるようにHP同好会に烏頭みことと名乗る美人OGが現れ、佐藤は彼女に翻弄されてしまうのだった。烏頭はかつてHP部が解散するに至った原因は槍水にあると告げるのだが――。毒を食わらば皿まで!「狼」の誇りを持って落とし前はきっちりつけろ!庶民派シリアスギャグアクション第8作!
まさかのアニメ化の一報に界隈が湧き立つ中で登場したシリーズ最新作。読んで改めて思ったが、この人天才だろう。完全に狂気を制御しきっている。それも、あらゆる種類の狂気を、だ。
これって、アニメ化にあたっての問題は、この【ベン・トー】という作品が内包する「狂気」を如何に見せるか、だよなあ。眼に見える部分である表層をなぞる事は幾らでも出来るけれど、はたしてそれだけではこの作品の本質とも肝ともいうべき部分をまるで見せることが叶わない気がする。差し当たっては、主人公佐藤洋のエキセントリックで一本スジの通った思考回路を映像という媒体でどれだけ見せられるのか、という所である。此処を取り逃がせば、この作品の本質は七割り落としたも同然だし。近年、ライトノベルがアニメ原作となるケースが物凄い勢いで増えているけれど、【ベン・トー】みたいな作品は、文章によって起こされた物語を映像に変換する難しさを思い出させてくれるような作品で、正直アニメ化についてはそれほど期待し切れないんだよなあ。
アニメ化の話はさておいて、本編の方はついにこれまで引っ張られたHP部解散の謎の一端を抱えて、OG【ウルフズペイン】烏頭みことが現れる。
まさか、ここまでべっとりと粘度の高い女の情念を、ベン・トーで見せられる事になるとは思わなかったなあ。今回当事者の一人である槍水仙は修学旅行で不在、著莪あやめも実家に帰っているなどして出番は非常に少ないのだが、なるほど今回の話に置いては槍水仙と著莪あやめは言わば登場してはいけない役だったんだなあ、と納得。洋にとって、二人は憧憬と安らぎの象徴みたいな所があるんですが、烏頭みこととの対立が深まる状況下で洋が二人と逢う事は精神的な敗北へとつながっていたわけです。修学旅行に行っていた槍水先輩はともかく、著莪については週明けには戻ってきてたわけで、逢おうと思えば逢えたはずなのに、実際一度心の安定を求めるかのように著莪に逢いに行こうとする機会があるのですが、結局二人の介入を許すこと無く洋の戦いは続くことになる。今回の話は洋にとっては完全にとばっちりなんですが、それでも女の愛憎入り交じった情念とも執念ともつかない怨念に絡め取られ、心竦んでしまう話であるわけです。そんな折に、毒に侵され心折れかけた有様であの二人に逢うというのは、やっぱりダメなんですよね。心の弱り方に「女」が絡んでいる以上、洋たち当人が意識していなくてもやっぱり関係性として「女」という括りが絡み付いているあの尊敬して慕う先輩と、気心のしれた幼馴染では、洋の狼としての部分を取り戻すどころか余計に殺してしまう可能性すらあったわけです。他のケースなら、二人ともこれ以上ないくら位頼もしい支えになれるんですけどね。
だからこそ、今回洋を復活させる役割を得たのは【オルトロス】や茶髪たちのような戦友たちでなければならなかった訳です。アレほどドロドロに渦巻いた人間関係の破綻と拗れ、縺れを半額弁当争奪戦という舞台に引き込みながら、最終的に、上手い弁当を激闘の末に奪取し、喰って堪能する、という狼の原点に立ち返る事の出来るこの作品は、やっぱりとてつもない。しかも、その原点こそが在るべき人の心の営みを取り戻し、傷ついた心や迷いを癒し、導く事になるわけだから、殆ど魔法みたいなストーリー構成である。
あれほどぐちゃぐちゃドロドロの話の流れの中で、しっかりと今回の【和風ロールキャベツ弁当】が究極へと至っていく過程がこれでもかとしっかりと描かれ、【真・和風ロールキャベツ弁当】という月桂冠の本命がドーーーンと登場する衝撃をきっちりと支えてるんだもんなあ。特に今回の最終決戦は、今まででも例を見ないくらい凄まじいメンツの揃った頂上決戦だった訳で、そんなメンツが奪い合う最上の財宝として【真・和風ロールキャベツ弁当】はばっちりちゃんと格を得ていたわけで……くっそう、やっぱりこの作品の食い物は有り得ないくらいウマそうだ。
でも、残念だったのは頂上決戦が本物の頂上決戦にはならなかったことだよなあ。正直、あのメンツでの本当の決戦をぜひ見たかった。特にウィザードは現れる事自体稀なレアキャラなだけに。オルトロスだって普段は狩場が違うんだし。
いやしかし、まだこれからも機会はあるか。ウィザードは帰国してしばらく此処にいるみたいだし、実のところHP部解散の真相は未だ全容は明かされてないわけですし、ウィザードと魔女の関係もまだ本当のところは見えてないですしね。

にしても、やはり茶髪はもう二つ名持ってもいいんじゃないのかな、という位に凄腕だよなあ。今回だって何気に一番イイところ持ってったし。というか、此処ぞという決戦で毎回いいところ持って行くわけだし。さらに、名無しの狼としてさらにウルフズカットの少女が登場。そうか、新入生か。まだまだ未熟で幼い狼なのが、そうか洋たちも戦場に立ちだしてもう後発が出てくるくらいになったんだなあ、という実感が。しかし、なんでおんなじ学校にも関わらずHP同好会に入ってくれないんだよ! まあ明らかに洋のせいなんだがw
その洋の爆笑過去回想は今までの中でもこの巻が一番絶好調だったんじゃないだろうか。本数も多かったし。こいつとその仲間の話はそれだけ本に纏めてもベストセラーになりそうなくらい面白いよなあ。革命話なんか、笑い死ぬかと思った。どんな光景だよ。

シリーズ感想