ひきこもりの彼女は神なのです。 (HJ文庫)

【ひきこもりの彼女は神なのです。】 すえばしけん/みえはる HJ文庫

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高校進学を機に、とある学生寮での新生活をスタートさせた名塚天人。だが、彼が本来入るべき部屋には"冥界の王"を名乗る少女、氷室亜夜花が居座っていた! 天人は自分の居場所を確保するために、亜夜花をあの手この手で誘い出そうとするが……。幻獣、怪物、神話の神々。人ならざる者達が集う街を舞台に繰り広げられる"超日常"ストーリー、開幕!!
ほのぼのホームコメディと見せかけて、また随分とエグい話を持ってくるなあ。すえばし作品はキャラを甘やかさないのがデフォルトなのか、殺伐としているのが基本なのか、容赦が無いのが基準なのか。
これって詰まる所、主人公の天人含めて自分の居場所を作ろうとして失敗に失敗を重ねたその末に、小さな居場所を見つけるお話だ。結局のところ、彼ら彼女らが踏み外した失敗は無かった事に出来ない取り返しの付かないもので、既にその苦悶に対して諦めている子、新しいやり方を模索している子、現在進行形で踏み外していた子、とそれぞれに展望はお先真っ暗だった訳だけど、その取り返しの付かない状況の中でそれを踏まえた上で無力を噛み締め、前向きに頑張ろうじゃないか、という……前向きな結論になってるのか? これ。
一応、無関心、逃避、投げやりという停滞から、足掻いて足掻いて少しでも変えられる所は変えてやる、という所までたどり着いたんだから、多分前向きな話のはず。そこに到るまでが随分とひどい話になってるけど、主人公はよく頑張ったと思うよ、うん。一度大きな挫折を既に経験した上で、一度諦め逃避し身の丈にあった生き方をしようと自重し、その上で諦めずみっともないと自覚しながらもがいてもがいて、誰にも当たらず助力を乞うても頼り切らず、足掻いて足掻いてその結果として絶対的な絶望を覆し、ほんの僅かとはいえ希望を得て、可能性を取り戻せたんだから。自らの恥を知りながら、しかし敢えて恥を呑める男は文句なしにカッコイイもんなんですよ。どれだけみっともなくても、無様でも。
ちょっともったいなかったのは、せっかくの寮モノにも関わらず、同じ寮のメンツが亜夜花とウルリカ以外殆ど話に絡まなかった事かなあ。ただ、あのメンツは一筋縄じゃいかない、というか亜夜花と千那以外はどうも人間としてのまともなメンタリティを持っていない様子なので、どう考えてもアットホームな話にはならないんですよね。家族モノとして話を転がしていくには絶望的なメンツであるわけで、そっち方面には話は進展しなさそうだなあ。どうにもこうにも殺伐とした話になっていきそうで、なんともはや。
ところで、概ねこのニュートラルハウスの寮生たちの正体は推察できたんだが、本気で大物しか居ませんね。亜夜花からしてもっとマイナーな神様かと思ったら、どうやら北欧神話でも相当の大物ですし、兄弟は無価値の堕天使に豊穣神。姉妹については多分、ギリシャのあの二人。あるいはケルト神話の方か。彼女らだけは判断材料が少なすぎて、わかんないんですよね。今名乗ってる日本名は全然あてにならないしなあ。