うちの会長は荒ぶる虎猫に似ている。 (HJ文庫)

【うちの会長は荒ぶる虎猫に似ている。 】 空埜一樹/ろんど HJ文庫

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自称《天才》な高校生・郡武人。巨大学園を統治する《生徒会》入りを目論む彼は、転校初日に《会長》を名乗る少女・天音ミコから「我が生徒会に入らないか?」と誘われる。だが、彼女は本物の生徒会と対立する《裏生徒会》の会長だった!! ミコの想いに突き動かされた武人は、圧倒的な力を持つ生徒会の敵となり、熱いバトルを繰り広げることに!?
天才を自称し揺るぎない自信と自負を漲らせながら、夜郎自大に陥っておらず傲慢でも自意識過剰でもなく、弱きを知り悪しきを解し未熟を弁え他者と共に生きる事を当然とする。……なにこの主人公、完璧じゃね? しかも冷静沈着頭脳明晰な一面を一枚はげば、そこにあるのは熱く滾る激情の渦。むしろ熱血! 正直、この主人公に比べたら、彼が喝破したように生徒会長は凡庸で詰まらん人間だわ。あの生徒会長ってただの支配者で、全然指導者足り得てないし。
結局生徒会長がやっているのはただの減点主義、基準に達しなかったものを排除していっているだけで、創造的なことは何一つしてないんですよね。発展性の欠片もない。そんなの誰にでもできることで、彼がやっているのは単純に批判を封じ込め、有無を言わせぬようにしているだけ。つまらないつまらない、実につまらない。
しかし、残念ながら現状においてはこの生徒会こそが正当なる政権なのである。
ならば、裏生徒会というものは、この生徒会を打倒するために暗躍する反政府組織なのかというと、正しくもあり誤りでもあり。面白いことに、やや反則スレスレながらも裏生徒会の活動というのはあくまでルール(校則)に則ったものなのである。裏生徒会、天音ミコは非合法なテロリズムではなくあくまで正当な手段のもとに、生徒会の無謬が誤りであることを指摘し、その施政方針の転換、あるいは政権そのものの打倒を目論んでいるわけである。何だかんだと、これはまっとうな政治活動であるわけだ。
しかし、これまでの裏生徒会は、天音ミコひとりの組織であり、その活動には限界があった。まず人数がたった一人というのはやれることが致命的に限られてしまうし、実際これまでの活動は人脈と支持を得るためという目的があったにしろ雑務雑用の範囲を出ず、目立った動きに出た時も内実は生徒一人ひとりの自主的な活動をあくまで後ろから支援するもので、受動的な活動に終始していたわけである。これは数的な問題上に、ミコに高い理想と類まれなる行動力はあっても、それを具体的な成果に導く計画性、戦略性、企画立案能力にややも欠けた部分があったからだと思われる。恐らく、彼女はそれをある程度自覚していたのだろう。だからこそ、【天才】郡武人を裏生徒会のメンバーとして求めたのだ。自分の欠けた部分を補うパートナーとして。何より、自分の理想を共有してくれる同志として。
そして彼女の期待通り、彼は学校の現状を正しく見極めた上で生徒会ではなく裏生徒会に理があると認めて同志となってくれ、以降裏生徒会はミコがこれまで築きあげてきた信頼と人脈を活かした能動的な活動を開始する事となる。すなわち、守勢から攻勢へ。
反則を使わず、あくまで校則に則った上で生徒会の思惑を上回り、生徒会側の方針の誤りを痛烈にあげつらう策を打ち出すと同時に、生徒の悩みを克服させ、才能を伸ばすどころか活かす場を見出させる裏生徒会の活躍は、鬱積を吹き飛ばす痛快なものだった。

ただし、タイトルはやっぱり詐欺だよなこれ。ミコ会長、全然荒ぶってないし、虎猫って感じでもなかったぞ。奔放で快活だが、猫みたいに気まぐれで勝手気ままという感じでは全然なかったし。タイトルそのものは非常に印象的で良いタイトルなんですけどねえ。