ムシウタ11.夢滅ぼす予言 (角川スニーカー文庫)

【ムシウタ 11.夢滅ぼす予言】 岩井恭平/るろお 角川スニーカー文庫

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クリスマスの約束、“始まりの三匹”の謎
すべてが明かされる!! シリーズ、クライマックス!


“虫憑き”を捕獲し管理する最強の中央本部が何者かに侵略され、赤牧市が正体不明の霧に包まれた。史上最悪の事態の真相を確かめるべく、単身赤牧市に潜入した“かっこう”は、不完全な“虫”に襲われている少女を助ける。ミッコと名乗る少女は「私の家族が誰かを“喰べ”てしまったのかも」と“始まりの四匹目”が存在するかのような予言を告げる。街に不完全な虫が大量発生したいま、かっこうはこの世界を止めることができるのか――!?



「……ッ! ざけんな! てめぇが"ふゆほたる”を守ってどうすんだ!」
「てめぇが守らなきゃいけねぇ一号指定は、今も眠ってるあの女のほうじゃねぇのかよ!」
霞王さんが、大助の野郎に言ってやりたかった事を全部言ってくれました、ありがとう、ありがとう。
もうね、なんでそんなに詩歌ばっかり特別扱いするんだと。彼女と交わったのは、ほんの僅かな一時に過ぎなかったのに、大助が詩歌だけ接し方が違うのが、まるで好きな女の子に夢中みたいな態度を取るのが、どうしても憤懣やるせなかったんですよ。利菜だって、結局あんな事になってしまったのに。どうして詩歌なんだと。
亜梨子をどうするんだと。あの娘は、大助たちを信じて、いつか起こしてくれる日が来るのを信じて今も眠りについているのに、おのれ〜〜〜。
そんな憤りを、全部霞王が肩代わりしてくれたので、思いの外スッキリしました。この娘はちゃんと覚えてくれてたんだなあ。むしろ、あれでアンネは亜梨子派だったもんなあ。そりゃ、許せんぜ。

というわけで、ようやく本編の方でも亜梨子の存在が明確に示唆されるようになってきた上、彼女が自分と共に眠らせたあの「不死のムシツキ」の正体も明らかに。というより、概ね虫に纏わる諸々は今回の話で明らかになったのか。今まで正体から目的からすべてが謎で、ある意味始まりの三匹よりも不気味な存在だった魅車の素性と目論見もだいたい今回の一件で見えてきた、というもののまだまだよく分からないんだよなあ。過去は分かった、現在も凡そ、しかし彼女が未来について如何なる展望をいだいているのかがまだ見えてこない。彼女は、いったい何を望んでいるのだろう。そもそも、彼女には虫に憑かれるような夢はなかったのだろうか?
そして、彼女が語る一号指定の真実。これって、前の巻でハルキヨが語った内容とほぼ一緒なんですよね。ということは、ハルキヨと魅車は単に協力しているという以上に、考え方を共有しているのか。考え方を共有しているということは、もしや目的すらも共有している? このシリーズで、何を考えているかわからないのが特にこの二人なんですよね。その二人が同じ方向を向いているとしたら、それこそがこのシリーズのクライマックスに至る何かになりそうな気がする。

さて、話の内容だが、正直、前半の話の展開については乱暴極まりないと思う。そもそもキーパーソンとなる四人の繋がりが理解出来ない。たまたま顔を合わせるに至っただけの四人に、なんでそんなに即座に切っても切れないような絆が結ばれたんだろう? お互いを理解し合う暇すらなかったのに、出会った瞬間から運命の出逢いだったかのように互いが掛け替えのない仲間になってしまっていたのが、さっぱり納得できなかった。納得させてくれるだけの、積み重ねもロジックもなかったもんなあ。そういう前提の関係でないと話が始まらないとはいえ、ちゃんとそういう人間関係になるべくしてなったという理屈を見せてくれないと、?マークが乱舞するばかりだった。
それでも、今のように虫が蔓延る原因と結果が明らかになったのは大きい。未知を未知でなくすことこそが、討滅あるいは克服の第一歩であるのだから。正体さえ分かっていたら、もし倒したとしても本当に倒したか、もう新たな虫が現れないのかも判別出来ないですもんね。

そして、三匹のうちの一匹、浸父との決戦。むしばねに中央本部含めた全支部参戦の総力戦。なんですがっ、実のところまだ役者は全然揃ってないんですよね。逆に言うと、浸父の相手ならこのメンツだけでも十分だったということか。ハルキヨ一派は不在だし、チャミたちも居ない、権力者たるあのお嬢も居なけりゃ、何よりあいつが居ないなんて話にならない。

むしろ、クライマックスはこれからなのだろう。その上で、最後に魅車が発した驚愕の指令。これ、素で「は?」となりましたわ。
え? なんで? 何がどうなってるの?

岩井恭平作品感想