ガブリエラ戦記II 白兎騎士団の強敵 (ファミ通文庫)

【ガブリエラ戦記 2.白兎騎士団の強敵】 舞阪洸/優木きら ファミ通文庫

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大平原の覇権は誰の手に!?

団長ガブリエラの奇策により見事ル・アンヘルの街を守りきった白兎騎士団。だが敵国ルーアル・ソシエダイは、手を弛めることなく次の策を講じていた。対してガブリエラ率いる騎士団は、優秀な団員を召集した「白鷺」作戦を決行。しかしその戦略は、彼女にしてはどこか真っ当な内容で……!? 一方、大平原調略担当官アリアンレイの魔の手は、着実にル・アンヘルの街を呑みこもうとしていた――。最強乙女騎士伝説、三大国の思惑が絡み合う激震の第2巻!
あの作戦を真っ当として扱われるあたりに、ガブリエラがどれだけ今まで変態的な作戦を立案してきたかが如実に伺えてしまう。まあ作戦対象が大規模になればなるほど、奇策奇略の類は使える余地が少なくなってくるものだ。今回の策は十分奇策の類だったような気もするけど。でも、これが一定の規模を超えて戦略単位、大戦略単位、あるいは政治単位になってくるとまた奇想天外な発想が活きてきたりするので、ガブリエラの才能というのは並みの戦術指揮官や方面軍指揮官よりも、小規模の特殊部隊もしくは総司令官、総参謀長クラスの方が生きるのかもしれないなあ。とはいえ、今のところ白兎騎士団の団長になった意味があんまり見えてきてないんですよね。どうも最終的な決定権は相変わらずレフレンシアが握っているようだし、今のままならレフレンシアの懐刀として作戦参謀的な地位についていても差し障りはなかったように思える。
さて、戦況の方は一進一退、と言いたいところだけれど戦略的イニシアティブはどうも相手に握られているっぽい。これはベディスが無能というわけではないんだが、受け身に回されているという時点で劣勢は否めない。特にベティスに目立った失点があるわけじゃないので、これは敵国を褒めるしかないよなあ。イニシアティブを取られているということは、それだけこちらの選択肢や自由度が奪われるということだし、兎に角あらゆる場面で勝ちを拾っていかないとすぐに二進も三進もいかなくなってしまう。
今回、特に冒頭で不期遭遇戦を起こしてしまったのがめちゃくちゃ痛い。総兵力が一万に届かないような戦力であれだけ被害が出てしまったというのは、戦術的には引き分けでも戦略的に見たら大敗と言っても過言でない。これなら、普通に攻城戦をやって失敗して撤退した方が良かったかも、と思えるくらいに。負けても撤退戦で友崩れを起こさなかったら、ここまで被害はでないもんなあ。作中でも説明されているが、不期遭遇戦というものはこの時代レベルの合戦では有り得ないほどの損害が出てしまう。史実で特に著名な例をあげるなら、第四次川中島合戦がそれか。
いずれにせよ、この冒頭の会戦に出た被害でベティス側は相当手足を縛られる事になる。
そんなベティスをサポートする役割である白兎騎士団なんだが、苦しいのはやはりサポート役しか果たせない事なんだよなあ。白兎騎士団は精鋭であることは疑うべくもないのだが、如何せん動かせる戦闘単位が少なすぎるのがやはりネックになる。そんな戦力不足を補い、騎士団の特筆である個々の団員の能力の高さを生かすのがカブリエラの奇策になるんだが、所詮戦術的な奇策は奇策。揺るぎのない軍略と兵力を以て攻めこまれた時に、はたしてどれだけ対抗出来るのか。まあ、その揺るぎの無さを揺るがし、真っ当に攻めてこさせない事こそが戦争の勝利に不可欠な手練手管であるのも確か。そして、それこそがガブリエラやレフレンシアの得意分野のはずなのである。今の、彼女らが前線に張り付いている状況というのは、やっぱりよくないのかもしれないなあ。必要があるとはいえ。