魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる (ファミ通文庫)

【魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる】 根木健太/kino ファミ通文庫

Amazon

こんな魔法少女なんて、やめてやる――!!

あたしは望月瑠奈。魔法少女のアニメを観てる以外は普通の女の子。憧れの先輩もいたりして、それはもう完全完璧に普通の女子高生! だったはず……。「ボクと一緒に戦ってください」そう、神族に追われてるなんて宣う馬(魔族)に会うまでは。「瑠奈さん、今日から『慟哭屍叫【デススクリーム】セレンディアナ』です!!」こんな魔法少女かわいくねー! 神魔の諍いなんてカンケーないっ。あたしの日常を返せ〜〜!! 第12回えんため大賞特別賞のチョイ邪悪【わる】系マジカル・デス・コメディ!!
タイトルだけ見ると、主人公の望月瑠奈、無茶苦茶性格も根性も悪そうなどうしようもない娘と勘違いされそうだが、おおむねイイ娘です(笑
いや、機会があれば「馬」を闇討ち抹殺して契約を無かった事にしようと謀ったりするアクティブな娘ですけど、どう考えても無理やり契約させられた上に無理やり戦いに巻き込まれている以上、自衛措置とか正当防衛と考えてもいいんじゃないかと。
しかも、なってしまったのがどう考えても正義の魔法少女じゃなくて、毎回負けては「キーっ! おぼえてらっしゃい!」とヒステリーを起こしながら逃げ帰る立ち位置に居る悪の魔法少女の方。何しろ契約相手が、純然たる悪魔オロバスである。悪魔サイドである事は否定のしようもない。悪魔の連中は決して極悪ではないものの、イイやつらとはとてもじゃないけど言えない連中だしなあ。幸いなのは、敵対している神族の方も決して正義でも善人でも無いということ。さすがにホントにいい人達をぶち倒して回ってたら洒落にならないですもの。

という訳で、妙に暗かったり陰惨だったりすることもなく、わりと悲惨な目にあってるはずの瑠奈もめげたりへこたれたりせず、オロバスと丁々発止を繰り返しながらドタバタと大暴れしてくれるので、変にストレスが溜まることもなく、気楽に笑って楽しめる一作になっている。何より、どう見ても三下悪魔なオロバスと瑠奈のテンポの良い掛け合いがとにかく笑えて楽しかった。
あれだけ嫌がり、怒り狂いながらも何だかんだとオロバスの手伝いをしてしまう瑠奈は流されやすいのかお人好しなのか。まあ、隙あらばぶっころしてやる、と実際実力行使、闇討ち、流れ弾で抹殺を謀ったりと、結構根に持ってるんですけどね。でも、オロバスもあれで妙に憎めない性格で。瑠奈を魔法少女にしてしまう経緯を見ると相当えぐいし無理やり強制にも程があるんですが、あの情けない三下属性とギャグキャラらしいボロボロのボコボコにされながらのキレの良いツッコミ職人という立ち位置のお陰で、愛嬌があって憎めなくなってしまったんだよなあ。
ただ、このオロバスと瑠奈のキャラが立ちまくってる代わりに、他のキャラの存在感がややも薄くなってしまったのは残念なところ。神族側の魔法少女はまあともかくとして、出てくる他の神族にしても魔族にしても、オロバスに比べるとどうしても印象が薄くなってしまって、ラストバトルもいまいちやっつける相手がシャキッとキャラ立ちしてくれなかったので盛り上がりに少々欠ける事になってしまったかも。何だかんだとオロバスに情が移っちゃった瑠奈の優しい面とか、魔法少女なのにいつの間にか仮面ライダーになってたぜ、というセレンディアナの完全に趣味が入った能力、ギミックの数々とか見所はちゃんとありましたけど。
携帯に666と打ち込んでベルトのスロットルにはめ込んで変身とか、思わず吹きましたがな(笑

あれで瑠奈はデレると可愛くなるような感触があるので、実は人間形態になるとそこそこイケメンになるオロバスと憧れの先輩との間でフラフラしだすと、ラブコメ的にも面白くなりそうだ。百合百合な陽守の件もあるし。さらに、今回面白そうな立ち位置に居たのに特に活躍も深く関わる事もできずにいた兄ちゃんも加わってきたら、色々とこんがらがって良さそうなんだがなあ。あれで瑠奈はブラコンっぽいし。と、こうしてみると瑠奈の主人公として、ヒロインとしてのポテンシャルってめちゃくちゃ高いんじゃないだろうか。瑠奈なら何でもやれそうだぞ(笑
ということで、続編にはさらに期待。