ゴールデンタイム2 答えはYES (電撃文庫)

【ゴールデンタイム 2.答えはYES】 竹宮ゆゆこ/駒都えーじ 電撃文庫

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 圧倒的なオーラを放ち、自称完璧、その実ちょっと残念なお嬢さま、加賀香子。彼女は独自のシナリオによって定められし幼馴染との運命の結婚が破綻してちょっと傷
心気味。
 一方、サークルの先輩、リンダは面倒見のよい気さくでいい人かと思ったら、実は万里の高校の同級生で、しかもどうやら浅からぬ仲だったようで、その事実をひた隠
しにしていた。
 記憶喪失男、多田万里の心はそんな二人の狭間に立たされて千々に乱れる。サークル活動や、コンパを経るうち、その心の距離は離れ、また近づいていく。
 万里が二人に向けた問いかけの、その答えとははたして──?
此処に至って、この【ゴールデンタイム】は【とらドラ、】とは登場人物たちの在り方が全く違う事が見えてきた。一巻で何となく感じていたものが具体的に形になってきたというべきか。これが高校生と大学生の違い、というものなんだろうか。
基本的にこの【ゴールデンタイム】の登場人物たちは、人間関係の距離感に対して非常に敏感で慎重である。常に彼らは彼我の距離感を測り続けている。そこに無自覚や考え無しの行動が介在する余地はない。距離感を測れない無神経な振る舞いは、まず第一巻において香子が完全にダメだしを喰らって痛い目を見たことで、この物語上ではルールから逸脱した許されない在り方であるという事が示されてしまっている。故に、香子もそうした振る舞いは卒業して、この巻では他者と同じく自分の感情をコントロールしてまず距離を測る事に勤しんでいる。
お陰で、ここで描かれている人間関係は建前と本音が物凄い勢いで乖離して行っていると言っていいだろう。表向きな賑やかに過ごしながら、その実内面を見てみるとまるでジェンガでもプレイしているかのように恐る恐る慎重に臆病に、緊張感に指先を震わせながら、相手の顔色を伺いながらパーツを抜き、上に積み上げる作業を行っているようなものだ。感情に任せた勢い任せの行動は、即座にタワーをグラリと大きく揺らしてしまう。それを恐れ、怯え、彼らはぎこちなく距離感を測り、自分が彼らと彼女らとどういう関係を構築するべきかを模索し続けているのだ。
疲れないんだろうか、この人たちは。
あるいは、一般的なコミュニケーションとはそもそもがこういうものなんだろうか。何も考えず、何も測らず、他人と付き合えるというのは幻想なのだろうか。気のおけない関係というのは、ファンタジーにすぎないのだろうか。
他人と本気で真剣に付き合うというのは、相手を想い慮るということは、真に友情や愛情を交わすということは、そもそもこう言うことなんだろうか。
だとしたら、そりゃ確かに疲れる。しんどい。どうでもいい相手と適当に、上っ面だけの関係を維持しているだけの方が楽に決まってる。
それでもなお、他者を求めずには居られないのなら。相手を理解したくて、理解して欲しいと思ったら、頑張るしかない。諦められないのなら、疲れても、しんどくても、一生懸命投げやりにならずに緊張感を維持し続けないといけないわけだ。
だからこそ、酒だ。酒酒酒だ。この巻でみんながやたらと酒を飲み、酔っ払い、我を忘れてハイテンションに酒をかっ食らうのは、多分そうしないとやってられないからだ。持たないからだ。高校生の頃のように無自覚に、無鉄砲に突っ走るだけの果敢で無謀な幼さを失ってしまったからこそ、大学生は酒をかっ喰らうわけだ。
何事にも自由であるということは、かくも人をがんじがらめにしてしまうのか。大変だねえ。
それでも、身動きが取れなくなってるわけじゃないんですよね、彼らは。ちゃんと、機を測っている。はたして、それが適正な機会なのかは、それこそ踏み込んでみなければわからないわけだけど。しかし、香子からすればこのタイミングを逃せば、万里との縁は永遠に絶たれてしまう、と考えたのは当然の状況でしたから、彼女からすれば万里に対して幾らかでも想いがあるなら、こうするしかなかったんだよな。今の彼女には、万里しか居ないも同然なんだし。はたして、本当に万里が好きか分からなくても、まだ幼馴染に未練があったとしても、万里の背中にしがみつくしかなかったわけだ。それが一番良い選択肢だと思ったわけだ。
仕方ない、という言葉が心象として出てくる時点で、読者の視点としては拗れるとしか思えないのが心苦しいところ。おまけに、万里の側もリンダという爆弾を抱えたまま、さらに地雷を踏んで沈静化していたはずのものに火を付けちゃった節もあるわけだし。
胃と肝臓、どっちが先に破裂するかのチキンレースになりそうな予感w

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