メグとセロン VI 第四上級学校な日 (電撃文庫)

【メグとセロン 6.第四上級学校な日】 時雨沢恵一/黒星紅白 電撃文庫

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今回のキーワード⇒「顧問のあの人」「ジャージ」「留学生」「メグとセロンの関係に変化」

 超お金持ちのご子息ご令嬢で美男美女ぞろいの新聞部部員、例の6人が巻き起こす今回の騒動は──「新聞部みんなで学校主催のオリエンテーリング大会に参加し(もちろんジャージ)、ある事情から1位を目指す!? ライバルとなるスキー部も登場しちゃったりして!?」と、「新聞部に短期留学生が来てなんかいろいろあって、そしてなぜかメグとセロンの関係に変化が起きちゃった〜!?」の中編2本。さらに“あの人達”が登場する短編2本も収録──というてんこ盛り! いつにも増してドタバタハラハラヘトヘトコソコソワクワクドキドキ、エ〜〜ッ!?なメグセロ第6巻。
 さらにさらに注目の“今回のあとがき”は──時雨沢恵一書き下ろし“あとがき特別企画掌編『セグとメロン』”!? いったいどんな話になっているのか? “メグとセロン”のスピンオフなのか!? もちろん黒星紅白が描き下ろす“あとがき”にも注目!
セグとメロン、スピンオフどころかまったく本編に関係ないじゃないか! だがしかし、ちょっと感動してしまった自分がいる。ベタな話なのに。いや、ベタなのか? 
いやー、やっぱりこのシリーズは安定して高い位置で面白いですねえ。話のテンポがまったく、絶妙を通り越して芸術的とすら呼べるところまで達しちゃってる。これほどのレベルで平易な文章を自在に踊らせることのできる作家がどれほど居るんだろう。メディアワークス文庫から出された詩集で思い知らされたけど、この人の言葉の選び方はやっぱすごいわー。
というわけで、短編連作形式で送り出されてきた6巻ですが、何気に今まででも一番のターニングポイントになったんじゃないだろうか。これほど話が動く出来事が起こった事はこれまでなかったわけだし。と言っても、今回はあくまで起承転結の起爆だけで、本当の動乱は次回以降となるので正しく導入編だったのですね。
その起爆に到るまでの過程の話も実に面白かった。何だかんだと紆余曲折してますよね、これ。発端がニックが棒術を得意にしてた事によってジェニーの好奇心が刺激されたところから始まった、と考えると。
ジェニーはバイタリティもあるし強かで策を巡らす頭の良さも備えていて、部長と呼ぶにふさわしい人材なんだけど、この新聞部のメンツにかかってしまうとどうしてもマスコットになってしまうんだなあ。ナータとニックの秘密を暴こうと画策して、何故か自分の恥ずかしい過去を逆に白状するハメになっていくジェニーには思わず同情してしまった。あれは、相手が悪いわ。ナタリアの押して押して押しまくりながら決して強引には感じさせない巧みな話術の誘導には感動してしまった程である。その脇ではニックが絶妙な合いの手で逃げ道を潰して行ってたし。なんでこの二人をいっぺんに相手にしようとしたんだか、もう(苦笑
と、オリエンテーリングそっちのけで駄べっているこっちの組と、ラリー、セロン、メグの一位取ったるぜ組との場面転換の繋ぎがまた上手いんだよなあ、これ。いや、途中までは単純に上手いなあと思ってただけなんだが、ジェニーの話が結論に達したときの、あのタイミングの良さにはびっくりしたの何の。あのシーン、二つの組をまったく関係なく別々に描いてたら、あのシーンにはそこまで驚かされなかったと思う。繋ぎの前後で文章が上手いことシンクロしてたからこそ、文章だけでなく現実までトドメで交錯するというオチが効いたんだよなあ、あれ。

留学生の話は、極めて珍しい二人称視点で描かれている。極めて珍しいはずなんだが、時雨沢さん的には別段普通に見えるのはなぜなんだろう。元々、この人の文章って普通の一人称とも三人称とも少し異なる独特の作風だからなのかな。妙にしっくりきてましたね、面白い。
このまま新聞部に七人目のレギュラー誕生か? ともワクワクしたんだが、さすがにゲストキャラだったか。残念。おなじみの六人に後輩が加わるとこうなるんですねえ。意外と外から見るセロンが、普段とちょっと違うキャラしてるんですよね。無口で物静かだけど、ここぞという場面でポツリと味のある発言するという、最初は距離感に戸惑うのだけれど慣れてくると小動物系の子には懐かれそうなタイプだな、これ。
同じく、他のメンツも概ね印象は一緒にも関わらず、ちょっとずつ思わぬ顔なんかが垣間見えて良かったですね、この話は。ちょうど、彼女が新聞部で扱った活動テーマとそのまま対比になってるのかしら。
これだけでも大変面白い話だったのですが、最後にジェニーの企みによって彼女がとんでもない爆弾を残していく事に。何気にそろそろこのシリーズもクライマックスなのかしら。

メグの弟のクルトが、初対面どころか顔も合したことのないセロンの妹のリィナに対して、初めての電話で一瞬にしてフラグ立てやがったのには、冒頭から爆笑させられた。すげえよ、この少年。セロンとまるで正反対のアグレッシブさだな、この子は♪

時雨沢恵一作品感想