死神少女と1/2アンデッド (ファミ通文庫)

【死神少女と1/2アンデッド】 佐々原史緒/kyo ファミ通文庫

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死と生の境界を越えて出逢ったふたりのダーク・ミステリ!

海辺で遺体となり発見された冬哉は、恐怖に満ちた夢を見て蘇生した。だが心音もなく姿も鏡に映らず、屋内外に佇む霊が見える……。そんな異常を隠し日常に戻った彼のクラスに突然、あの夢で見た大鎌の少女が現れた! 戦慄し逃げる冬哉に、少女は迫る。「鏡を返せ」と――。それが己の死の真相を忘却した"半死人"冬哉と、迷える魂を彼岸に送る"渡し"那由子の奇妙な関係の始まりだった。死と生の境を越えて出逢ったふたりのダーク・ミステリ・ロマンス!
おおおっ、佐々原史緒さんの久々の新作はガチのホラーなのか。いつもの何だかんだとコミカルなノリは影を潜めて、抑制のきいた文章でジワジワと現世と幽世の狭間で交錯する死者と生者の邂逅を描いている。それでも佐々原さんらしいのが、ヒロインの死神少女の天然マイペースっぷりである。最初出てきた時は、人間の常識も情理も通用せず、理解もしてくれない本当の意味で恐ろしい人外なのかと思ったら……ただの食いしん坊キャラじゃねえか!(笑
明らかに理性よりも本能、厳密には食い気が勝ってるし。人外だから人間の常識が通用しないというよりも、単に常識知らない気にしない関係ない、というだけみたいじゃないですか、これ?(苦笑 那由子、君、自分の無くした鏡に執着し、探して現世に来たの、あとに行くほど忘れてないか? 折角認識を惑わせて転校までしてきたのに、学校にも登校してこず、それで死神として働いているのかと思ったら、単に食い倒れツアーに勤しんでただけだし。ほんとに何しに来た!w
まあこの娘の惚けっぷりで随分と和まされてる。彼女がもし真面目なキャラだったらこの作品、もっと重々しく陰鬱な話になっていただろう。主人公の冬哉が、佐々原作品の主人公としては珍しく芯が定まってない弱キャラというのもあって、快刀乱麻を断つような展開とは行かず、ジクジクと膿むように話が進んでいきますからね。何しろ、あだながチャラ眼鏡、だからなあ。でも、悪いヤツじゃないんですよ。ヘタレで事なかれ主義だけど目の前のことに見て見ぬ振りが出来ないだけで、充分に主人公の資質はあります。泣き言を言いながらも行動できるのなら、後悔しながらでも渦中に飛び込めるのなら、ヘタレだろうが自己薄弱だろうが芯となるものが無かろうが、そんなものは進んだ先で見つけりゃいい話。頑張れる奴は、半分死んでようがこれ以上なく主人公です。そんなこんなでチャラチャラしてて初期の期待値が低い分、これからは株上がりっぱなしですよ……多分。

しかし、今回はあくまで導入編だなあ。何しろ、冬哉を取り巻く状況が未だにまったくはっきりしない。結局、彼は何らかの理由で死んだものの、何故か生き返り、しかもその際、那由子の鏡を取り込んでしまっている上に、亡霊のたぐいを見ることが出来るようになってしまった、という現状がなんとか把握できていた段階で、なぜ今みたいな事になってしまったのか、発端から原因からさっぱりなわけですから。だからこそ、ラストに明らかになった新事実が衝撃的な引きとなっているのですけれど。これは凶悪な引きだよなあ。なんとか戻ってきたはずの日常が、俄然、様相を変えてくる事実な訳ですし。これで長く待たされるとキツいんですが、既に4月末には連続刊行する予定のようなので、ホッと安心。これは畳み掛けないといけませんものねえ。