千の魔剣と盾の乙女2 (一迅社文庫)

【千の魔剣と盾の乙女 2】 川口士/アシオ 一迅社文庫

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育った島を出て冒険の旅へと出発したロックとエリシアたち。
最初の目的地にエリシアの生まれ故郷の島を目指す旅の途中、予想外のトラブルに見舞われたロックたちだったが偶然出会った魔斧槍使い(ハルバート)の少女に助けられるのだが、エリシアはそれが気に入らず、ロックとの仲がギクシャクする羽目に。
発売直後に増刷御礼、大人気魔剣ファンタジー、早くも待望の第二弾登場!
え;つ?あらすじにあるようなナギが原因でエリシアとギクシャクするような展開ってあったっけ。エリシアは突然に見舞われた結婚問題でそれどころじゃなかったんじゃなかったかな。というわけで、久々に帰郷したエリシアを待ち受けていたのは父親からの結婚しろという命令。エリシアとしてはもちろん承諾できる話ではなく、彼女としては実家と縁を切るのも厭わず、のつもりだったようだけれど、それは両親の居ないロックが強く引き止める。自分に家族が居ないから、家族の居るエリシアには両親をちゃんと大事にして欲しい、というロックの想いはこの青年の健やかさを示しているかのようだ。でも、心根こそ真っ直ぐで健やかで人間性は認められても、果たして結婚相手としてはどうなのか。エリシアからすれば、好きな相手なんだから何の問題も障害もないのですが(あるとすれば彼女当人のヘタレ根性か)、エリシアの父親からすれば娘を託す相手としてどうなのか、って所なんですよね。
エリシアに頼まれて、彼女と結婚を約束した相手として父親と対面する事になったロック。そこで彼は自分の所信を忌憚なく語るのですが……。いや、このシーンはちょっと笑ってしまった。シチュエーションとしては、完全に娘さんを嫁にください、と家に押しかけてきた馬の骨に、お父様お冠、という娘が家に結婚相手を連れてきました、というものなんですよね。そこで父親が対面した娘が連れてきた相手というのがまた、財産も安定した職もないくせに、夢物語みたいな目的を目をキラキラさせて語る若者、という典型的な「貴様なんぞに娘はやれん!」と叫びたくなる類の輩であったわけです。これは、エリシアの実家が都市有数の資産家であるというのを抜きにしても、普通の家のお父さんでも、「え、いや、ちょっと待って」と言いたくなる相手だよな、ロックってよくよく見ると(苦笑
それでも条件付きとはいえ、ロックにちゃんとチャンスを与えてくれたお父さんは、何気に懐の広い人なんじゃないだろうか。そして、ロックは自覚のないうちに自分で外堀を埋めていることに気づいていない、と。まあ、お父さんしっかりした人なので、ロックが自分の娘をまだちゃんと異性として見ていない事は気づいていらっしゃるようでしたが。しかし、どう間違ってもこいつと付き合ってたら娘が苦労する、と分かっていながら、試練を経てロックの人となりを見聞してのち、エリシアにじゃあ苦労してこい、とばかりに送り出せるこの人はやっぱり大物だと思う。いい両親じゃないですか、エリシア。どうして熟考と果断を合わせ持つ両親の娘が、肝心なところでロックに気持ちも伝えられずにマゴマゴしているヘタレになってしまったんでしょう(苦笑
家を飛び出し、親族筋の師匠に弟子入りして魔剣使いなんていうヤクザな業界に飛び込むような思い切りはあるのに。今回の試練についても、ロックにだけ任せてらんない、と自分も飛び込みで参加してるように、果断さについては充分あるんですよね、エリシア。ということは、彼女のヘタレさは男関係限定か(苦笑
今回のロックのライバルであり、エリシアの父親が結婚相手として連れてきたファビアスは、偏見も強く冒険を嫌うという意味では保守的だけれど、ちゃんと他人を認め、自分と違う考え方についても受け入れるだけの器量の持ち主であった事を考えると、お父さんの見る目ってのは全然間違っちゃいないんですよね。彼と結婚してたら、エリシアでなくても大概の女性は苦労しないし、普通に幸せになれたと思う。まあ、エリシア相手だとファビアスの方が苦労してたかもしれないなあ。ただ、彼女の面倒くささは付き合いに苦労してもそれを楽しいと思えるような種類の面倒くささだと思うのよ。ロックもエリシアのこと時々持て余しているようで、結構楽しそうですしね。男性に限らず、フィルなんかもそんな感じだよなあ。だからこそ、彼女と一緒に二人でロックの嫁に、なんてことを目論んでいるのかもしれないなあ。

ちょっと気になるのは、ロックの「魔王を倒す」という目的に対して、それがロックという人間に根ざしたロックの願いなのか、というところに疑問が差し込まれた所か。前巻でも師匠のため、という所に多少気になった所があったんですが、どうやらその辺の主体性が今後、ロックの道行に影を落とすことになりそう。

新登場のナギは、無事仲間として合流したものの、実のところあんまりこの巻では目立ってなかったような気が。取り敢えずは次の巻からかなあ。

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