神明解ろーどぐらす5 (MF文庫J)

【神明解ろーどぐらす 5】 比嘉智康/すばち MF文庫J

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ついに帰宅! 下校は家に着くまでが下校です!!
千歳のみならず、まりもや咲の危機をも察した十勝は、大胆にもクラスメイトたちの前でハーレム宣言をした! さらに集まってきた野次馬生徒たちが注視するど真ん中で、「うちのコトを好きだっていう確かな証拠見せて」と言うまりもにキスをした! 阿鼻叫喚に包まれる昇降口! ……果たして十勝は決死の覚悟で下校仲間を守りきれるのか? そして留萌を呪縛の檻から救えるのか!? 神聖下校物語、ついに完結! 「おまえみたいな野郎は許せねえ! いますぐ学校から出て行ってくれないか!!」――まさに下校。池田十勝、下校十段! 参る!!!
まさにこれ、大下校時代のはじまりである!
まあ表紙を見て欲しい。四巻でほど完成に至ったかと思われたものが、さらに進化していた驚愕。いちにいさんしいご、五人居る!?
いやあ、それにしてもすごかった。ものすごかった。特にすごかったのが、冒頭のシーンである。まさに騒乱、まさにカオス。十勝とまりもの二人のやり取りだけでも凄かったのに、それを見守る野次馬生徒たちのツッコミと存在感がとんでもないことになっていて、もう訳の分からない高揚感でテンションマックス。モブのくせに、君らちょっと個性ありすぎだよ! お陰で状況が煽られる煽られる。誰だよ、「はじめてのチュウ」を歌い出しやがったのは!(爆笑
4巻を読んだ時にはとんでもない引きにひっくり返ったものですけど、その引いた分の溜めを炸裂させた、凄まじいシーンでした。これは歴史に残るよ。
公然とした二股宣言、千歳もお前もさきっぽも全部オレの女宣言に、まりもも怒るどころが完璧に火がついちゃったもんなあ。この娘もすごいわー。
そしてこの名言である。
「ねえ、みんな。似合わないとか勿体ないとかって気持ちを恋愛に持ち込んじゃダメ。いい恋愛しようだなんてしちゃダメ。
この人になら、身も心もボロボロにされてもいいって思える人と恋愛すんの。
うちはこの男になら騙されたっていいと思える人しか恋愛はしないから」
まりも、覚悟決めちゃったーー!!
しかし、そのアドヴァイスは普通の女子には難易度高いですよっ。男を見る目がないと大変なことになりますよっ。幸い、まり姉が見込んでしまった男は、極め付きの漢でどう間違っても不幸にはさせてくれない大した野郎だからイイんですけど。ああでも、女の子にここまで芯の髄まで惚れられるって怖いくらいだよなあ。十勝はそれに見合うナイスガイだからいいんだけど。

安心したのが、まりもと千歳の仲直りが二人がちゃんと顔を合わせただけで自然にすんなりと出来てしまった所でした。留萌の計略でギスギスしてた二人だけど、千歳はどうやっても千歳に過ぎなくて、そんな彼女をまりもはやっぱり大好きだったんですよね。まりもにキチンと事情を話すことで和解するんじゃなく、話す前に二人に話をさせて、どんな理由があっても千歳もまりももお互いを嫌いになれない、向きあえばいつものように惚けた会話でほんわかと和んでしまう関係であることを示してくれたのは良かった。勿論、十勝がその前にまりもにキスをして、彼女に心の余裕が出来ていたからこそ、顔を合わせたときに普段どおりのやり取りになれたんだろうけど。それでも、これだけ心の距離が開いても、一度顔を合わせたらすぐに元通りってなってくれたら、今後何があってもこいつらはこんな風に仲良くなれるって信じられるじゃないですか。
千歳が癒し系すぎるのが原因かもしれないが、やっぱりさきっぽも含めて、この子たちの関係は一緒に居てこそ、映えるように思えます。素敵でした。

留萌の記憶によってようやく到底出来た連続少女殺人事件の犯人。彼が狙う千歳の周りに居ることで、ターゲットに含まれる危険性が出てきたまりもとさきっぽ。ついに彼女たちにも事情と留萌の存在を明かして、すれ違いを解消し、みんなで協力して通り魔に対抗する事になったのだが、此処からが生々しいというか現実的なところで、彼らの前に壁が立ちふさがる事になる。
犯人の正体がわかったのが留萌というオカルト的な存在のお陰である以上、通り魔が東神楽であると証明できないのである。警察に話しても、証拠も何もない以上、調べてももらえないし守ってももらえない。犯人も分かっている。狙われているのが千歳だともわかっている。にも関わらず十勝たちは犯人に対して手も足も出せないという状況に追い込まれていくのである。ただ、いつ彼が千歳やまりもたちに牙を剥くのかを警戒し続けなければならないという恐怖の日々。前作でもそうだったけど、こういうサイコな怖さを自然に描くんだよなあ、この人。
そして、警戒する十勝たちをあざ笑うかのように、巧妙に千歳に魔の手を伸ばす通り魔。絶望的な状況の中で、十勝、まりも、さきっぽ、留萌がそれぞれの持つ知識、経験、能力を活かして千歳の元へと駆けつける。
いざ恐怖が現実になった時に見せた十勝の漢っぷり、女性陣の健気さがまた胸をうつんだ。特に十勝は、紛れもなく「ヒーロー」。彼自身は自分はヒーローなんかじゃないと謙遜するけど、あんたがヒーローじゃなかったら何がヒーローだってんだ。自分への悪評を物ともせず、どころかそれを利用して女の子たちを守り、そして自らの身体を張ってみんなを守る。もう、めちゃくちゃカッコイイ。ここまでやられたら、もう何も言えんですよ。最初から言うつもりなんざ欠片もなかったですが、留萌を含めて全員貴方が引き受けなきゃ、誰も納得出来ないですよ。
ウヤムヤの結果のハーレムではなく、むしろこちらからお願いしますと頭を下げたいハーレムエンド。出来うるなら、留萌を加えてのあの屈託ない賑やかで楽しい下校エピソードをもう一話、もう一巻ニヤニヤしながら読みたかったですけどね。
4巻の超展開にどうなるかとハラハラしましたが、本当に素晴らしい作品でした。次回作も、ギャルゴ、十勝ちゃんに引き続くカッコイイ主人公、期待しております。

比嘉智康作品感想