やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫)

【やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。】 渡航/ぽんかん(8) ガガガ文庫

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青春は残酷だ!? ひねくれ男の妄言ラブコメ
孤独に負けず。友達もなく、彼女もなく。青春を謳歌するクラスメイトを見れば「あいつらは嘘つきだ。欺瞞だ。爆発しろ」とつぶやき、将来の夢はと聞かれれば「働かないこと」とのたまう──そんなひねくれ高校生・八幡が生活指導の先生に連れてこられたのは、学校一の美少女・雪乃が所属する「奉仕部」。さえない僕がひょんなことから美少女と出会い……どう考えてもラブコメ展開!?  と思いきや、雪乃と八幡の残念な性格がどうしてもそれを許さない!  繰り広げられる間違いだらけの青春模様──俺の青春、どうしてこうなった!?
なんで平坂さんが帯で推薦書いてるのかと思ったら、これコンセプトは【僕は友達が少ない】とおんなじなのか。ただ、あっちが友達が欲しいけど友達がいない連中の集い(というには友達欲しがってるのは主人公だけのような気が最近してるが)であるのに対して、こちらは友達なんていらねえ、と嘯く連中の集いというところ。しかも、キャラや環境がややもすっ飛んでいるあちらと違って、こっちは微妙に生々しくてヤダな!!(笑
ああでも、これ面白いや。ここで登場する人たち、主人公の八幡や雪乃を含めた連中はみんな痛ましい。性格がイタいのではなくて(多少そのきらいはあるが)、皆がまばゆいばかりの青春を送る中で、楽しい盛りのはずの学生生活を上手く送れずにのたうち回っている姿が痛ましいのである。かなりコメディちっくに重たくなく話しているから、変なシリアスにはなってないですけど、ここで描かれている彼らの心の傷というのはけっこう膿んでて傷んでいる。スクールカーストやコミュニケーションの失敗による人間関係の拗れなどによって、これまで散々傷つき痛みにのたうちまわってきた彼らは、孤独や孤高といったそれぞれの鎧に身を包んで他人を遠ざけ、独りで居ることでようやく安息の時間を得ることが出来ていたわけだ。
雪乃も八幡も、決して現状を不満に思ってたり、寂しく感じていたわけじゃないのだろう。私は、雪乃の刺々しい態度や八幡の腐ったヤサグレっぷりが、決して強がりや現状を変えようともがいていたためとは思わない。あれは、ある種の順応だったと思う。恨みも妬みも嫉みもあっただろう。でも、言い訳や正当化で彼らは現状を良しとしていた訳じゃないだろう。彼らは自分たちが孤独であることを諦めの果てだろうとなんだろうと受け入れ、覚悟し、謳歌するつもりだったはずだ。傍目から見たら寂しく欺瞞に満ちているかもしれないが、当人たちからすれば他人にごちゃごちゃ言われる筋合いのない、非難される謂れのない、蔑まれようとどうだっていい、生き様であったはずだ。でなきゃ、現実逃避の卑屈すぎるだろう。
でも、彼らは出会ってしまった。何となく、同じ時間と空間を、空気を共有するようになってしまった。いつの間にか、いつも自分たちを傷つけるだけだった「友達」という関係になっていた。
できてしまったものを、もう繋がってしまったものを、やっきになって否定し遠ざけようとすることは、それこそ今までの彼らの孤独という生き様が虚栄であり、現実逃避にすぎなかった証明になってしまう。雪乃も、八幡も、一度繋がったものを見栄や意地で蔑ろにすることはなかった。傷つけられた過去の記憶から臆病になりながらも、一度生まれた繋がりはちゃんと大切に守ろうとしてくれた。彼らは決して惰弱でしかなかったから独りだったのではないと、きちんと示してくれたのが、ちと嬉しかったなあ。こいつらのこと、好きになれましたよ。
八幡なんて、ほんと人間が腐ってるし、ひねくれてるし、ゆがんでるし、友達居無さそうなヤツなんですけどね。でも、悪いヤツじゃないですよ、性格がまがってるだけで。イイヤツなんですよ、性格が荒んでるだけで。
……色々と許してやってくださいw

しかし、こうしてみると何気に重要なポディションに居たのがチャラ娘の由比ヶ浜結衣だったのがよくわかる。元々クラスのトップカーストの一員で、自分の意見を持たず表層的に他人に合わせて薄く広い付き合いを得意としてる娘だったのに、いやだからこそなのか、その薄っぺらさを辛辣に雪乃に指摘された際に、普通なら正論だからこそ受け入れられないその直言を、素直に受け入れ、「ごめん、ちゃんとするから」と自分の枠を飛び出してのけた時、雪乃と八幡にも転機が訪れた気がする。あのシーンこそ、ターニングポイントだったのだろう。多分、雪乃と八幡の二人だけなら何も変わらなかったし、始まらなかったはずだ。
この後も、彼女は自分のクラス内での立ち位置を危うくする危険性を犯しながらも、自分の素直な気持ちにしたがって、かつての友達に傷つけられてきたトラウマを抱える雪乃や八幡の懐に無防備に飛び込み、彼らの強ばりを徐々に解きほぐしていくこととなる。彼女が秘めていた、八幡とのかかわりが分かったときは結構驚きでしたけど。クッキー作ってた時の相手のひとって、もしかしてもしかしてだったのか!?
最初は単純なお礼を言いそびれてたもどかしさと好奇心だったんだろうけど、どこらへんから本気になってったんだろう。やはり、あのクラスでの揉め事の際だろうか。あそこで、八幡と雪乃の行動は際立ってたもんなあ。

とりあえずちゅうに病は、可愛い幼女な妹ならともかく、むさくるしい男のクラスメイトだと普通に勘弁な♪

ともあれ、期待以上に面白かったです。個性的なメンバーが揃っている割に、決してエキセントリックでも突飛でもありすぎず、どこか地に足の着いた学校というコミュニティー内での人間関係の描き方は、良き青春モノになってたんじゃないでしょうか。真面目一辺倒じゃなく、全体の雰囲気は通して明るく素っ頓狂で、雪乃と八幡の丁々発止に結衣が無防備に飛び込んでくる掛け合いも非常に楽しいものでした。
これは、もっともっとこの子たちの話、読んでみたいですね。続きを強く希望します。


PS:先生の男前でスタイリッシュな佇まいとは裏腹に、男運なさそうな所が大好きですw