神と奴隷の誕生構文 2 (電撃文庫 う 4-2)

【神と奴隷の誕生構文(シンタックス) 2】 宇野朴人/きくらげ 電撃文庫

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若き神が、その身を賭して世界を駆ける。気鋭のハイファンタジー第二弾!

 発展界による歪な歴史干渉。
 その脅威から後発世界を救うため、地上に舞い降りた一人の若き神クルァシン。
 敵対する最悪の暴神オルデンダラィムを退け、無事オルワナとの会戦に勝利したクルァシンは、ロケィラの皇女・セレィと共に、隣国アヌビシアと同盟を結ぼうと考える。彼女は近い未来、この世界を統一し、いがみ合う大陸全土に平穏をもたらすはずの、選ばれし少女だった。
 しかし、アヌビシアとの交渉が始まった矢先。若き神を狙って、“神狩り部隊”最強の男が別次元から襲来した。
その国産みの成り立ちから、他国、他民族への不信が根底にあるアヌビシア。深く暗い森の底で、視力を無くしその際立った聴力でもって不可侵を司る盲民族たちの鎖国国家。長年血で血を洗う戦争を繰り返してきた有角種と翼の民を纏め上げたセレィだが、ある意味発展界による分かりやすい侵略行為を利用しての和平だったこともあり、彼女がこののち大陸を統一するための力を持っているのかの真価が問われる最初のハードルがこのアヌビシアだ。武力を背景としながらも、それはあくまで交渉の場を成立させるためのカードとして。ただ力で相手を屈服させるのは征服に過ぎない以上、ここで彼女は他国を信じない民族に対して、武威ではなく志と利潤を以て信頼を得て、同胞として彼らを迎えなければならないという試練を得ることになる。
実のところ、ここからなんですよね。セレィが本当に王としての資質を示し始め、クルァシンと対等の同志として立ち始めるのは。一巻では打ち解け心許しあい認め合いながらも、まだセレィはクルァシンに一方的に教えを受け、導かれる立場だったのですが、むしろ此処では文化の衝突など未知の概念をクルァシンから学びながらも、多くを知るが故に立ち止まり迷いがちになるクルァシンを、セレィが逆に叱咤し、彼の迷いを晴らし、勇気を与える存在になっていくのです。導きの神と自称するクルァシンですが、果たして彼はそれを自分が導く者であるという自負から称しているのではないような気がしてきました。意識してか無意識か、彼は自分がこの地の民を導くと同時に、自分を導いてくれる存在を求めているのかもしれません。それこそ、果てのない贖罪の旅路を終わらせてくれる答えへと導いてくれる者たちを。答えをくれる人々を。
彼の懇願にも似た願いに、セレィは応え得るだけの存在へと成長してくれそうな手応えを、ここでようやく感じました。そして、新たに登場した盲民族にて天才と謳われるサーリャ。まだ見ぬ世界に恋焦がれ、世界の美しさを信じている彼女もまた、クルァシンの因業の旅路に光を与えてくれる存在になり得そうです。メリェは逆に距離感が近すぎて、彼女に取っての世界がクルァシンそのもの、となりそうなくらいだから、支えになっても導きとなるかは微妙なんでねえ。セレィ一人にクルァシンの闇を導く役割を担わせるのはちと酷な所があると思っていたので、サーリャの存在はクルァシンにとっても、セレィにとっても思っている以上に大きくなるのかも。
他者と交わることは、ある意味その純粋性を失わせ、侵略と同じように決定的に相手の存在を失わせしめてしまうものなのかもしれない。あるいは、自分が行なっている事は結局発展界の行う植民侵略と変わらないのではないか、という深刻な疑問に因われるクルァシン。しかし、他者と交わらないということは閉塞であり停滞であり衰退へと繋がるものである。特に、世界は閉じたままでは息苦しいばかり。交流によって生まれる変化は必然であり、健全な発展になるか一方的な搾取になるかは結局当事者たちの心づもり次第。
悪意だけじゃなく好意や善意が原点であっても、容易に交わりは相手を摩滅させることにつながりかねない以上、話はそう簡単じゃないのでしょうけどね。でも、セレィが語るように、サーリャが望んだように、世界の美しさとは止まって変化しないから生まれるのではなく、常に対流し、新しきを生み出すことによって発現するものなのでしょう。それを忘れない限り、セレィたちは上手くやれるはず。一度すべてを失ったクルァシンは、ここで再び得難い良き同志に出会う事が出来たんだなあ、とちと感慨深くなってしまった。

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