小説家の作り方 (メディアワークス文庫)

【小説家の作り方】 野崎まど メディアワークス文庫

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「小説の書き方を教えていただけませんでしょうか。私は、この世で一番面白い小説のアイデアを閃いてしまったのです――」。
 駆け出しの作家・物実のもとに初めて来たファンレター。それは小説執筆指南の依頼だった。半信半疑の彼が出向いた喫茶店で出会ったのは、世間知らずでどこかズレている女性・紫。先のファンレター以外全く文章を書いたことがないという彼女に、物実は「小説の書き方」を指導していくが――。
 野まど待望の新作ミステリーノベル……改め、意表を突く切り口で描かれる『ノベル・ミステリー』登場。
うわっはあっ! そう来たか! そう来たか!!
野崎さんの作品ということで絶対に一筋縄ではいかないとは警戒していたけれど、まさかそっちの方向へとすっ飛んでいくなんて、どう予想すればいいというんだか。
そして、誰か【アンサー・アンサー】の人に今まで教えてあげる人いなかったんですか。なんであんなになるまで放っておいたんですか。あの様子だと一言変だよ、と言ってくれる人が周りに居たら、あんなにアレを拗らせてしまうこともなかったでしょうに。可哀想に、超絶偉そうに私は何でも知ってるよー、とばかりの登場を決めたのに、終わりの方借りてきた猫みたいにシナシナに萎びちゃってたじゃないですか。生まれてきてごめんなさい、みたいになっちゃってたじゃないですか。なんてダメッ娘な天才なんだw
あの様子だと、そのうち見た目には完全に普通になってしまいそうだ。取り敢えず、あと髪型についても指摘してやろうよ。

という訳で、それについては触れるとどうやってもネタバレになってしまうので手のつけようがないのですが、<この世で一番面白い小説>という「概念」とそれが及ぼす影響については、【[映]アムリタ】から始まった野崎まどという作家の備え持つ「究極の概念」の系譜だなあ、と納得。いや、それよりも前作の【死なない生徒殺人事件】で描かれた教育の概念と今作を並べてみると結構面白い対比になっているような気がする。ある意味、あちらとは正反対に突っ走っていることになるのか、これ? 知識と情報を並列化することで共通した統一人格を形成したあちらと違って、こっちはスタンドアローンが生み出される話なわけだし。しかし、うーん、考えてみるとスゴイ話だよなあ、これ。自分の中で芽生えた物語を実際に小説として出力したい、という物書きという人種が根源的に備え持つ、あの自分ではどうしようもない欲求であり業である衝動が、現実として無から有を生み出すことになったわけですからねえ。自我が衝動を生んだのではなく、衝動が自我を生んだと考えると、同じ系列の意識の芽生えを描いた話の中でも、これはやっぱり突拍子も無い、しかしこれぞ野崎作品、という佇まいだ。

ただ、そうした物語が真の姿を見せ始める前の、紫という少女と若い作家先生の奇妙な交流も杓子定規な性格で、でもどこか浮世離れした紫のキャラクターと相まって、どこか淡い青春小説っぽくて好きなんですよね。特に、紫と大学の学園祭に遊びにいく場面なんか、軽妙洒脱なノリとお祭りという名の異空間の雰囲気が相まって、森見登美彦的な独特のフワフワとした楽しい夢のような、あとに残る余韻があって、特に好きな場面だったなあ。

それにしても【アンサー・アンサー】の人は、返す返すも、残念だなあ(笑
頑張れ、超頑張れ!

野崎まど作品感想