それがるうるの支配魔術Game1:ルールズ・ルール (角川スニーカー文庫)

【それがるうるの支配魔術(イレギュラー) Game1:ルールズ・ルール】 土屋つかさ/さくらねこ 角川スニーカー文庫

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俺の前に突然現れた“世界災厄の魔女”こと不思議少女るうる。しかも俺のことを監視するから常に一緒にいるだと? 「その嫌そうな顔、3ptダウン」なんだそのポイント制は!? 新感覚魔術学園ストーリー開幕!
やっべえ、これは好きだわ。面白かったという以上に、好みを直撃している。元々、この作者のデビュー作シリーズである【放課後の魔術師】シリーズもあの知的で理性的なところが相当好きだったのですが、なんというかより自分の作風やスタイルというのを自覚した上で確信的にそうした部分をより強調して仕上げてきた、って感じなんですよね。
まあ、作者の作中でもあとがきでも公言して憚らなかったゲーム好き、という所をこうも作品そのものにのっけてくるのは予想外だった。何らかの形で絡めてくるとは思ってましたけど、作品の主題にしてくるとはなあ(笑
しかし、好きで好きでたまらない要素を基盤に持ってきたお蔭でか、作品全体にノリに乗ってるような漲る躍動感がひしめいてるんですよね。これは読んでて楽しくなりますよ。
なにより、これは発想がおもしろ素敵すぎます。いわゆるこれって、大規模かつリアルな間違い探し、という事になるんですよね。最初のるうるとのゲーム【ルールズ・ルール】というあの遊びが基本であり、魔術による改変の発見はそれの実地応用編。これが読んでて楽しいんだ。【放課後の魔術師】でも、日常パートでみんなで海外産のボードゲームをやってるシーンは毎回面白そうで読んでるこっちも楽しかったのですが、それを全編に押し並べてみた、という感じだろうか。勿論、純粋に遊びでみんなでワイワイやっているパターンと違って、魔術が絡む展開は、るうるに課せられた負債や事件そのものの深刻性も相まって決して軽い展開ではないのだけれど、小春に纏わる事件での二段重ねの間違い探しなんかは読み応えありましたしね。「なんとー!?」と唸らされた、あれは。いや、主人公の観察眼はたいしたもんだわ、あれは。ここで現れてる「間違い」って、決して非現実的なものじゃないんですよね。普通に前知識がなければ何ら気づかない違和感。それこそ、探偵的な観察眼が必要とされるところ。面白いのは、探偵による推理ものの場合と違って、こちらは間違いが指摘されると同時に誤魔化されてた認識が正常化し、その場に居る全員が「あっ!!」と驚きと共にあからさまにおかしかった所が皆の共通認識になるところ。これが、さり気無く痛快なんですよね。思わず、パンと手を打ちたくなるくらい。
うん、面白い。実に面白い。

登場人物たちも、土屋さんらしい情緒豊かであると同時に非常に理知的である所が好ましい限り。みんな個性的ではあるものの、無神経とは程遠いんですよね。これは、ある種傍若無人キャラである「るうる」も同様で、最初は人付き合いが乏しいせいか結構無軌道な言動に終始してるんですけど、付き合いを重ねるうちにその辺はすぐに修正されてきて、本来のものらしい良く相手の気持ちを考え、慮った言動を取るようになりますし。
そもそも、この娘は小動物系ですよね、これ。基本ベースは無表情系ですけど、見てると意外なほど表情がクルクル変わりますし、此処ぞというときには大きく破顔した顔なんか見せてくれる。まだまだ距離感の掴み方がわからなくて戸惑っている節もありますけど、人見知りもしませんし、主人公だけに心をひらいているというふうでもなく案外人当たりも良いですし。周りから避けられて、自分も事情から人を寄せ付けないようにしていただけで、ゲーム好き遊び好きというのも相まって、実のところ大勢でワイワイと賑やかにするの、好きなんじゃないのかな、この娘。
兎にも角にも、無表情系のくせに人懐っこく、それでいて儚げなところもあって、これは庇護欲を掻き立てられるタイプだわ。
んでもって、もう一人のヒロインが御剣事乃。この娘も、登場時からその途中でキャラの印象がガラっと変わったヒロインである。いや、この娘、マジで普通ならメインヒロインやるようなキャラじゃないですか? 最初の印象だとだいぶ感情的で堅苦しいというか偏屈な所のあるお嬢様タイプなのかと思ってましたけど、付き合ってるとサッパリとして屈託の無い性格が見えてきて、気軽に軽口をたたきあえ親しみやすく情に厚く、しかし強かで計算高い部分もあるという、なかなかに熱くて冷たいパーフェクト加減、結構前作の遥を彷彿とさせるところがあって、これはヒロイン力相当高そうなんですけど。

何れにしても、土屋さんの新作ということで期待していたものをさらに上回るものを送り出してきてくれた感じで、実に嬉しい限り。こりゃ、楽しみなシリーズがはじまりました。