スメラギガタリ―新皇復活篇 (メディアワークス文庫)

【スメラギガタリ 新皇復活篇】 宇野朴人/きくらげ メディアワークス文庫

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 1984年、帝都東京。若くも卓越した陰陽師として働く女性・土御門晴見は、ある日、かねてより陰陽寮による日本の呪的業界の一元的支配に不満を募らせていた在野の術士・芦屋道代から呪力蜂起の宣言を受ける。誘拐を予告された皇族の姫君・澄香内親王殿下を守るため、古くより皇室に仕える退魔の一族の末裔・殿克夜らと共に事態へ備える晴見らだったが、相手の思惑は彼女らの想像を超えたところにあった。
 一方、姫君の身代わりに攫われた華族の少年・継実夜統は、道代らと行動を共にしながら、帝都の裏側に隠された歴史の闇を知り……。壮大なる伝奇譚、ここに語りの口を切る。
これはこれは……何やら皆さん思うところは一緒のようで、なんでこれ電撃文庫の方で出さなかったの?(苦笑
見方によっては、同じ宇野さんの作品である【神と奴隷の誕生構文】よりもライトノベル色が強いように思うんだけどなあ。同じ現代陰陽師モノには富士見ファンタジア文庫はあざの耕平さんの【東京レイヴンズ】があるけれど、あの作品が呪術が色濃く社会に反映された世界観ながらも、「平成」という時代色が背景に建て込まれているのに対して、こちらは同じ現代ながら関東大震災や第二次世界大戦における東京空襲が回避されて、東京という都市や日本人の生活スタイルや文化模様が洋に染まりきらず和洋折衷の独特の雰囲気が醸し出されている。ちょうど、大正時代がそのまま映り込んできたかのような。関東大震災で倒壊したあの有名な凌雲閣が今も尚浅草の名物として賑わっている様子が描かれているのなんて、ちょっとした感動ものですよ。改装に改装を重ねて、だいぶ趣は変わっているようですが、あの凌雲閣が今もあるなんてロマンだなあ。
そんな、ハイカラとかモダンという言葉が似合う帝都を舞台に繰り広げられる陰陽合戦。メディアワークス文庫なので、陰陽道にしてももっと理屈っぽい学術的な意味での運用がなされるのかと思ったら、それこそ【東京レイブンズ】や【陰陽の京】ばりにど派手な術が飛び交い、式神が召喚されるバトルでありました。キャラクターからして、皇族のお姫様が女子高生ですよ。「〜〜じゃっ♪」という喋り方ですし。そこに、春見に殿克夜、継実夜統が加わって、「幼馴染」四人組ですよ。重ね重ね、なんで電撃で出さなかったのか、と。
在野の術師と陰陽寮の術師との対立という構図はいわば定番とも言うべきものなのですが、こちらの芦屋道代さんはもう一人の主人公とも言うべき一本スジの通った好人物で、彼女に協力する仲間たちも憎めない愛嬌の持ち主で、権力側に派手に喧嘩を売りつける姿は痛快の一言。それでいて、関係ない一般人はもとより敵である陰陽寮に対しても極力被害を出すまいとする姿勢は清廉で、その真の目的も重なって非常に清々しい人たちでした。
それでも、改革派とは言え晴見たちは権力の中枢に居る以上、道代たちを取り締まらなきゃならない訳で、晴見たちの方も快刀乱麻を断つようなイイ人たちだっただけに、両者の対立というのは見ていてもどかしいものがあったんですよね。
だから、二度に渡る直接対決の末に晴見たちが下した決断は、驚きであると同時にいやはや権力側の人間として大したものだと、その判断には感心させられました。幾ら改革派とは言え、なかなかそこまで割り切れないですよ。
新皇こと平将門については、随分と好漢として描かれてましたね。元々、国内屈指の大怨霊でありながら、その人物像については悪し様に言われない方ですが、それにしても憑依先の少年の鬱屈まで気にかけるような良い人っぷりを見せられるとなあ、照れる(笑

さて、肝心の夜統の抱え込む鬱屈の真相については結局語られなかったのには拍子抜けさせられてしまった。かろうじて、将門が垣間見た記憶によって断片くらいは見えたものの、結局一切語られぬまま、でしたもんね。ある意味キャラクターの顔見せ的な面もあった本作では触れず、次回以降で本格的にキャラを掘り下げると同時に扱う予定なのか。彼については澄香殿下が御執心なので、彼女が深く絡む形でないとまとまる話もまとまらないのでしょうし。この二人が仲睦まじく手を繋いでいる様子など、見ていて微笑ましいカップルだったので、出来れば次回はこちらをじっくり描いて欲しいなあ。道代姉さんは再登場希望。この人、晴見姉と絶対意気投合するタイプでしょw