死なない男に恋した少女2.日常のカケラ (HJ文庫)

【死なない男に恋した少女 2.日常のカケラ】 空埜一樹/ぷよ HJ文庫

Amazon

蹴られようが殴られようが刺されようが轢かれようが死なない男、乃出狗斗に、天才殺人鬼・桐崎恭子が恋をした。理由は「何回刺しても死なないから♪」。今作では、狗斗と恭子の学園生活をフィーチャー。はたして「死なない男」と「天才殺人鬼」は、普通科の高校でどんな風に過ごしているのか? 皆さん興味ありませんか? 必読です!
ちょっと恭子さん、人肉を刺したり斬ったりを自慰行為に例えるならちと性欲過多すぎやしませんか?(苦笑
別に欲求不満というのでもあるまいに、一日にそう何度も刺さないと我慢出来ないって、歯止めが効かなくなってるにも程がありますよ。殺人鬼をやってた頃よりも衝動は高まってるんじゃあるまいか。そりゃ、まともなメンタルの持ち主なら愛のないセックスよりも、恋心をときめかせながらのセックスの方が夢中になるんだろうけど。それだけ恭子も浮かれてる、と捉えればいいのかな。ある意味、猿になってるよなあ。若い若い。刺される狗斗にしちゃあたまったもんじゃなさそうだが。
ただ、恭子の浮かれっぷりが空回りしているのも事実なんですよね。可哀想だが今のところ、狗斗の恭子への感情というのは、同情というのが一番近いと思われる。情が移って、それだけで彼女の人生背負ってやろう、とまで思い込むあたりこの男の精神面も相当箍が外れてると言えるのでしょうけど、彼、人生を背負うのと感情を請け負うのとをイコールで見ていないようなんですよね。どうも恭子から、肉袋としてではなく異性として惚れられているという事実をいろんな人から言葉で指摘され、実際に恭子の態度から本当なのだろうと認めながらも、実感出来ていない様子。もっと誠実に対応してあげてもいいとも思うんだが。恭子からすると、狗斗の態度って生殺しなんですよね。自分の殺人鬼としての業にあれだけ深く付き合ってくれながら、異性としてはまともに相手もしてくれないし、気にもとめてくれない。宙ぶらりんでこれは結構キツい。殺人鬼としての負い目がある恭子からは、なかなか積極的になれないですしね。あるいは、実際の恋人として扱ってくれなくても、性欲のはけ口扱いでもいいから乱暴に扱ってくれた方がまだ彼女としては慰められるのかもしれない。それらしい言動はこぼしてますし。優しく親身になってくれるのに、肝心なところでは無関心、という扱われ方は繰り返しますけどキツいですよ。
そう考えると、狗斗という人間はどこかオカシイと言えるのかもしれない。あれだけのことを恒常的にされながら、恭子に対して見返りや代償を求める気が一切ないわけですから。単に優しいとか面倒見がいいというよりも、自分の価値に対して無関心、という感じがあるんだよなあ。自分を大事に扱っていない、自分に価値を認めていない、あるいは無意識に自分を人間扱いしていない、とでも言うのか。なんか、そういう傾向がある気がするんですよね。決してそう明示されているわけでもないし、普段の言動で自分を蔑ろにしている様子はないんですから。

何にせよ、狗斗の自分への扱い方や接し方がぞんざいだから拗ねてしまったり、自分よりも久遠りんを気にかける姿に嫉妬したり、そもそも自分にそんな事を考える資格がないことに落ち込んだり、と完全に恋する乙女になってる恭子が思いの外可愛かった。いやあ、もうちょっと大切にしてやりなさいよ、狗斗は。

話の中身の方は日常パートにおける現状の二人の関係を描くのが中心で、肝心の殺人鬼関連の話はかなり中途半端な事に。パターンのように殺人鬼とバトル、というふうにしたくなかった、というのはわかるんだが、あの終わり方はしっくりこないぞ。ただ、割り切れないのは恭子の現状も同様なので、どちらかだけ片をつけるというのもすっきりしないといえばそうなのだけれど。

1巻感想