変愛サイケデリック (電撃文庫 ま)

【変愛サイケデリック】 間宮夏生/白味噌 電撃文庫

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“変”ってサイコー! タブーなんてぶっとばせ!!
心揺さぶるドラスティック・ラブストーリー!


「ストレンジサイケデリコ」こと彩家亭理子(さいけてい りこ)は、その名の通り千光高校きっての有名な変人であり、変わった愛情を持った者が集まる「変恋部」の部長である。そんな彼女が「愛しいね」と目をつけたのは、春になると死にたがると噂のクール系男子・神宇知悠仁(かみうち ゆうじん)だった。理子は悠仁の言動が「変愛」に関係しているとにらみ、興味を持つのだが……。

前作「月光」と同じ世界を舞台に新たなキャラが紡ぎ出す、間宮夏生×白味噌コンビで贈る異色の青春“変愛”物語!

濃厚なまでの心理の駆け引きの中で垣間見える狂気と恋の緊迫感あふれる、いやそれ以上に恍惚感あふれるルナティック・ラブストーリー【月光】にて鮮烈なデビューを果たした作者のこれが二作目、続作なのである。世界観そのものは同じでも(舞台が同じ学校ね)登場人物を総取替えして繰り広げられるもうひとつのイカレたラブストーリー。ラブストーリー? 恋愛物語なんだろうか、これ。少なくとも主人公である理子に、変を愛する以上の愛情があるのかどうか疑問である。ましてや、神宇知悠仁に至っては。
必要と有らば、他人の心の領域にまで土足で踏み込むことを厭わないサイケデリコだけれど、今のところ彼女の欲求というのは好奇心を満たし、奇抜でエキセントリック、いやサイケデリックというべきか、そんな精神の形に直に触れて味わい舐め尽くす事、蒐集を望んでいるだけで、その精神そのもの、もしくはその精神の持ち主を所有したいという願望を持っている訳じゃ無さそうなのだ。それを恋情と言っていいものか、愛情と呼んでいいものか、ラブストーリーと語らって良いものなのか。彼女と彼の周りには、それこそ変であろうとも愛情には間違いのない、個人への執着の持ち主がいるだけに余計にその違いは際立って見える。
言わば、まだ彼女は自分にとっての愛を知らないのだ。知らないからこそ探している、見つけようとあがいている。ただ足掻くだけでは飽きたらず、好奇心の疼くまま、興味の迸るまま、愛おしさを覚える「変」を解体してその奥から幸せだとか愛とかいう自分だけのものを見つけようと走りまわっているのだ。意図して暴走しているとも言う。
図らずも前作の感想でこんな事を書いた。
冷静にして客観的、論理的に執行される、好奇心と欲望と感情に基づいた狂気ほど、本人たちにとって楽しいものはないんだろうなあ。狂気とは後悔するものじゃなくて、楽しむべきものなのかもしれない。それが恋ならなおさらだ。
理子は、先のヒロインである月森葉子のように慎重かつ巧妙なやり方ではないものの、実におおらかに奔放に自分の中の狂気に指向性を与え、その発散を楽しんでいる。自分の身を危険にさらすリスクすら娯楽に変換しながら。
こうして書きだすととてつもなく迷惑で有害な人物に思えてくるが、実際周りの人間からすると目も当てられないのだろう。かと言って、自分に対して真摯に接してくれる相手に対して、サイケデリコは決して迷惑を掛けることを顧みていないわけではない。実際、自分の暴走のせいで親友の円馬が怪我をし、あまつさえ自分を心配するあまりに精神の均衡を崩させてしまった時などは普通に落ち込み、反省し、普段の言動を自粛して大人しく振舞っていたりする。「変恋」に対する好奇心を優先させ、彼我の善悪や心の救済など自分の目的ではないと嘯きながらも、その実観察者にして蒐集者に徹することはせず、自分を慕ってくれる川合優衣の望みに対して彼女なりのアプローチを敷いていくところなど、外道の類ではあっても鬼畜ではない事が伺える。
彩家亭理子は何のことはない、普通に人を思いやる事のできる少女なのだ。その上でなお、人の心に土足でおじゃますることをやめられないあたり、業の深さを思い知らされる。当人も覚悟しているご様子だが、この調子だといずれ誰かに刺されそうだ。その前に、実際の殺害未遂者である悠仁が理子の形振り構わない欲求の解消を満たせる相手になれればいいんですがね。
あるいは、これは恋と愛の物語を見つけるために必要だった、準備にして下拵えの出会いの回だったのかしら。
もしそうだとしたら、理子と楽しく生きるという事を知った悠仁のこれから綴り出すおはなしにこそ興味をそそられるところなんだが。まあ、果たしてこの二人の間に変とは言えない愛情が芽生えるのかは怪しいところだと思うんだけど。「好き」とストレンジサイケデリコの宣う「愛しい」って、やっぱり違うものだと思うし。

所で、結局伊庵って「どっち」なんだ? てっきり部室でのやり取りは発言から普通に男だと思ってたんだが、その後の円馬とのやり取りの中の発言って、受け取り用によっては男のふりをしている女、とも取れるんですよね。その場合、何か事情を抱えてる事になるんだが。
円馬の方も忸怩たる思いを抱えたまま終わることになっているし、もしかしてこのメンツでもう一回続く可能性もあるのかもしれないな。

そう言えば、一瞬だけ前作の主人公、こっそり登場してましたね。最初、意味のわからない描写が挟まってるな、と思ったものでしたが、よく考えるとあいつ、喫茶店でボーイやってたっけ。

【月光】感想