烙印の紋章〈8〉竜は獅子を喰らいて転生す (電撃文庫)

【烙印の紋章 8.竜は獅子を喰らいて転生す】 杉原智則/3 電撃文庫

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オルバ、決断す!
英雄への道を描くファンタジー、第8弾!


 銃撃を受け昏倒したオルバ。そして戦場で行方不明となったビリーナ。二人が身動きの取れないなか、メフィウスの再侵攻にそなえて西方各地より援軍がタウーリアへと集結してくる。
 一触即発の事態を前に、回復したオルバはとある決断をくだし、シークを密使としてアプターへと向かわせる。一方、その頃アプターでは、オルバの元部下たちの身に危機が迫り、またビリーナにも怪しい影が忍び寄っていた。
 はたしてオルバの決断とは、そしてビリーナの運命の行く先は!?
ビリーナとオルバ、この二人の運命はこれほど強固に絡まっているのに、どうしてこんなにもすれ違い続けるのか。今回ばかりはついに合流か、と思ったんだがなあ。いや、合流こそしなかったものの、オルバは今度こそ間に合ったと言える。兄や幼馴染の時はついに力及ばず、手を伸ばす機会すら得られず、失った事をあとになってようやく知るばかりだったのだけれど、ビリーナにはギリギリ間に合った。本当にギリギリ、それも運が良かったとしか言い様のない状況で。でも、あそこでオルバがビリーナ危機一髪の場面に遭遇できた事そのものが、オルバが行動を決断したため、皇太子として再び表舞台に出る決心を固めたため、ビリーナを助けるのだと思い定めた為なのである。運命が味方したとは言え、オルバ自身の意思が守りたい人を守れたわけだ。
なるほど、そう考えるとオルバにとってビリーナという人は既に兄たちと同列に扱われてるって事なんだよなあ。ビリーナ行方不明の報を聞いた時のオルバの焦燥、兄たちの時のように自分は手遅れだったのかと悔やむ様子を見るとわかるとおり、オルバにとってビリーナは兄たちの時と同じように人生を賭けるに値するだけの重きをなす相手になっていたわけだ。全くこの二人、殆ど行動を一緒にするどころかここしばらく逢ってすらいないというのに、人生をひっくり返されるほどの影響を与え合っているというのも不思議な話だよなあ。
尤も、彼と彼女が人生を揺り動かしているのはお互い同士には限らないんですよね。オルバと共に戦い、あるいは敵として戦った西方諸国の諸将や王族、あるいはメフィウスのローグ将軍など心ある人物たち、他にもビリーナの兄たちのようにオルバと逢う事で著しく在り方を変えた人達がいる。
面白いことに、この作品に出てくる登場人物って普通の戦記物からするとどうにも一流には成り切れない二流どころの有能ではあっても欠点も多い飛び抜けたところのない将帥や政治家ばかりだったのですが、これらの人たち、オルバと関わることでみんな一皮剥けだしてるんですよね。特に顕著にその辺が描かれてるのがビリーナに次兄なんだが、彼に限らず次兄の軍師や西方諸国の諸将もどうにも物足りなかった部分が今となっては見違えているのである。アークスのおっさんは相変わらずのような気もするけど(苦笑
オルバ自身も見違えるように以前と比べて成長しているのですが、その影響は彼一人に留まっていないのだ。それも、才能を開花させるという点にとどまらず、保守的で内に篭りがちな考えから、視野が広がり新しいものを受け入れる余裕を得て、思考の柔軟性と開放性を獲得しているような気がするのである。
まさに、新たな時代の風をうけているかのような。
時代が激動を迎えようとしている中で、確かに新しい風が吹きはじめようとしている気配が色濃く感じられるのである。
そして、その風の中心となる人物が、再び表舞台に立ったわけだ。
これは燃える。燃えざるを得ない。
本番、此処に開幕である。

シリーズ感想