死なない男に恋した少女3.命のカタチ (HJ文庫)

【死なない男に恋した少女 3.命のカタチ】 空埜一樹/ぷよ HJ文庫

Amazon

狗斗たちは町内の福引の特賞をゲットし、とある島へ温泉旅行に向かうことに。浜辺や温泉でのキャッキャウフフな展開はもちろん、肝試しイベントも! だが、バカンスを楽しむ狗斗のもとに【組織】の連絡員、ハルが現れた。狗斗と恭子はこの島で『任務』を遂行しなければいけないのか!?
このサブヒロインの久遠りんって、それこそ聖人のような善人として表現されているのだけれど、この娘の優しさや善意って全然相手のためにならないと思うんだ。自分を犠牲にして相手に尽くす、と言えば耳障りがいいけれど、心ある人からすると一方的な犠牲によって与えられる施しなんて、気分が悪いしとても素直に受け取れないし、喜べない。また、その相手が善意を解釈しないような心無い人間だとすると、そんな輩に一方的に何かを与えるということは、単に甘やかしてるだけなんですよね。社会に対して奉仕することは偉いことだと思うけど、謂れのない特定の個人に対する奉仕って、誰にとっても害悪でしかない。それを、このりんという娘はまるで理解していないわけで、危ういよなあ。問題は、作者もそれを理解しているのかどうかだけれど、健全な大人の代表格である狗斗の姉ちゃんがりんの行動に対して非難的な物言いをしていたのを見ると、やはり分かってて書いてるのだろう。その辺、りんがちゃんと理解し実感する展開があったらいいんだけど。このままだとろくな大人にならないぞ。

夏だ、海だ、温泉だ! ということで、より開放的な気分になってハメを外してしまうのが若者たちの夏休みである。我らが恭子さんも、ハメをハズして刺しまくり。
ザクザク。ザクザク。
……そろそろ警察につきだしてもいいんじゃね?
ただ恭子の狗斗への依存は性的なもののみならず、完全に普通の女の子としての恋心へと移行した模様。露天風呂で吐露した狗斗への素直な気持ち。あれはもう、聞いてたなら狗斗もわかるだろうに。もうちょっと扱い考えてあげなよー、と思いながらもあれだけザクザク好き放題刺されちゃ引くのもわからなくはないだけに、恭子がもうちょっと自重さえすれば丸く収まるんじゃないかと思うんだがなあ。
それでも、人並み(以上に?)幽霊を怖がったり、一生懸命水着アピールする恭子は可愛かった、非常に可愛かった。この殺人鬼、なにかと隙が多くていいなっ!
それ以上に、狗斗への真剣さは基本他人に無関心な彼へも伝わり出しているようで、狗斗の中でも恭子の存在が占める範囲が大きくなっていっているのがよくわかる。それと同時に、狗斗にとってりんという少女の存在もまた大きかった事が明らかになり、狗斗自身も自覚しだしているのは皮肉な話かもしれない。


空埜一樹作品感想