わたしと男子と思春期妄想の彼女たち 1 リア中ですが何か? (ファミ通文庫)

【わたしと男子と思春期妄想の彼女たち 1.リア中ですが何か?】 やのゆい/みやびあきの ファミ通文庫

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愛欲まみれの超いまどきリア中ラブコメ爆誕!!

日々愛欲に悶える中学生・峰倉あすみ。ある朝、怪しい虚無僧に渡されたコンタクトレンズを通して彼女が見たものは、水着やブルマ、メイド服を纏って教室を占拠する《妄想少女》たちだった! 彼女のいない男子なら誰もが望む妄想の彼女。だが、あすみの愛する高柳君にはいない!? 学校一の《妄想美少女》リサたちと、奪・高柳君に燃えるあすみの恋はどうなる!? 第12回えんため大賞優秀賞、学校では教えてくれない愛欲まみれの超いまどきリア中ラブコメ!!
これは面白い面白い!! 完全にコレ、中盤からのブースト型じゃないですか。序盤は微妙とまでは言わなくても、若干ノリが掴めなくて読むスピードがあがらなかったのですが、中盤人間関係が複雑に絡み合っていることが発覚した上にそれが現実にヒズミとなって大きな事件となっていくあたりから加速度的に面白くなってきて、一気に読んでしまえました。
この主人公にしてヒロインたるあすみがまたいいんだ。いい意味でも悪い意味でもすんごいアホの子なんだが、発想がとにかくすっ飛んでて思わず落ち着けと言いたくなる、いや落ち着こうが冷静になろうが慌てようがヒートアップしようがアホの子はアホの子なので、その面白すぎるポンポンとマシンガンのように放たれる発想の愉快さは治らないので、むしろ落ち着けというよりも賢くなれよ! と声を掛けたくなるような有様で。笑える笑える。
序盤、高柳くんがなんであすみの事を「アホあすみ」と、幾ら幼馴染とは言え女の子に対して小学生みたいな物言いをするのかと首を傾げ高柳くんのお子様っぷりに苦笑いしていたのですが、序盤はあすみの本性というかリミッターがまだ外れてなかったんですな。後半に行くにつれ、これまた加速度的にアホの子らしさを全開、あるいは全壊にしていくあすみの姿を見て、恐ろしいほど納得してしまった。これは「アホあすみ」だw
てっきり高柳くんは凄く小さな頃の印象そのままに幼馴染の事を見ているのかと思っていたのですが、現在進行形じゃないかw 考えて見れば、高柳くんには妄想彼女が発生していなかったのである。あれらが現実と妄想の食い違いによって湧き出るものだとするならば、高柳くんは概ね正確にあすみの事を捉えていた、という事になるんですな。まだまだ彼もお子様であることは間違いないのだけれど、なんだよ可愛い男の子じゃないか。
そして、あすみも愉快で痛快な「アホの子」であると同時に、将来ののびしろは抜群なのである。高柳くんを中心とする人間関係の複雑な絡まりあいを発端に、あすみに提示されるのは人の心の弱さと容易に負の連鎖へとつながっていく人間関係の脆さ。それとは逆に、辛い中でも挫けない人の心の強さと、近視眼的な感情に任せない、優しさの連鎖を繋いでいこうという意思。それを、あすみは男の子たちの理想によって出来上がった、妄想であると同時にある意味彼らの内面の具現化である妄想少女たちの交流と友情、そしてあすみに彼女たちを見ることの出来るコンタクトレンズをくれた虚無僧(和尚?)に説諭によって知り、実感していくことになるのである。そこであすみが体得していくのは、ただ表面的な好きだ嫌いだの向こう側にある、本当の愛情の存在。そして、それを抱けるに足る大きな人間性を持つということ。
今でも充分、面白おかしく愉快痛快で可愛らしいあすみなのですが、もしこのまま彼女の中に生じた成長への自覚がそのまま健全に高じていくのなら、この娘、将来は抜群に「イイ女」になりますよ。既に、その萌芽は一連の事件を通じて、周りのみんなが感じ始めているはず。特に、高柳くんなんかはあれ、相当驚いているんじゃないかね。今はまだ自分がなんやかんやと口出しして導いてやらなきゃと思ってしまうような、手のかかる妹のような、何をしでかすかわからない「アホの子」なのですが、うかうかしているといつの間にか自分を追い越して手の届かないような所に行ってしまうんじゃないか、なんて事を思いめぐらしてしまうんじゃないかという程に。
まだ、焦る段階ではないでしょうけどね。いやほんと、この高柳くんも中盤超えてあすみとの本当の幼馴染関係が見えてくると、可愛い男の子だってのがよくわかってくるんだ。
そもそも、あすみの高柳くんへの接し方って、あれそういう意味だったのか。
最初は変に猫被ってて高柳くんなんて余所余所しい呼び方して、幼馴染というには微妙な距離感があるなあ、と幼馴染スキーとしてはあんまり好きなタイプの幼馴染関係じゃないなー、と思ってたんだけれど、段々と高柳くんと喋るときだけ妙なお嬢様口調になるあすみの様子が面白くなってきてたんですが……、あれ、猫被ってたんじゃないかったのか!! なんか、小学生ほど子供じゃなく、高校生ほど外面が整っていない、子供と少女の狭間の時期である中学生っぽさが凄く感じられて、いいなあ、いいなあ。
そう考えると、これって正しく中学生のラブストーリーなんですよね。しかも、ただの子供の恋に恋する物語なんかじゃなく、ちゃんと将来へと繋げていけるだけの本当の愛情を育てていけるだけの、人としての成長を描いた、素敵な青春モノ。
これは、思っていた以上に素晴らしいお話でした。積んでしまっていたのを、続刊が出るのを機に発掘して読んだんですが、これは早く読んでおくべきでした。続きも勇んで買うつもり。あの愉快なあすみを追っかけるだけでも楽しいですわ。