エアリエル〈3〉偽りの黒い椿 (電撃文庫)

【エアリエル 3.偽りの黒い椿】 上野遊/夕仁 電撃文庫

Amazon

「私はマコトのことが好き──!」
美少女パイロットとの恋と冒険の物語、第3弾!


 お互いの想いを伝え合ったはずのミリアムとマコト。しかし、豪華客船でのキス以来、二人の仲はなぜかぎくしゃくしてしまっていた。
 そんな時ミリアムが、反政府勢力レヴァンテの任務で潜入捜査をすることになる。潜入先は、ミリアムの父の会社を廃業に追い込んだ航空機メーカー社長の別邸『椿の館』だった。しかもその館は、うら若き乙女しか入ることができないという。ミリアムが心配なマコトは、なんとか一緒に任務に就こうとするが ──!?
 恋と冒険の物語、第3弾登場!
今回のサブタイトル、意味深でどこかほの暗い展開を予想させる不安を掻き立てられるような文句で、前回の婚約者だったお嬢様が凄まじく病んでしまったのも相まって、相当壮絶な展開が待ち受けているのかと覚悟していたら……ちょっ、そういう意味だったのかよ、偽りの黒い椿w
しかも、内容ときたらダークサイドに突入どころか、前回で気持ちを確かめ合ったミリアムとマコトが二人きりで敵地に潜入し、敵地にも関わらず二人きりで甘々な雰囲気をダダ漏れにしながらイチャイチャしまくるという、ある意味予想を斜め上に上回る凄まじい展開に。ミリアムさん、ツンデレこじらせ過ぎ!!
マコト以外に肌をみせるつもりなんかないんだからねっ! とか、ツンツンしながらも言ってる内容が態度と逆すぎますから。
しかしまあ、上野さんが本格デレ展開を描くとこんなにも甘々なシロモノになってしまうのかー。作者のこれまでのシリーズって、【彼女は帰星子女】は心通じ合っても恋に溺れるような展開にはならなかったし、【銀槌のアレキサンドラ】はそうなる前にシリーズ途絶しちゃったものですから、実のところ作者のこういうラブラブな話って初めて読むんですよね。しまったなあ、まさか一旦青信号になったら主人公もヒロインも立ち止まることすらしないイケイケ展開の使い手だったとは。豪速球じゃないか。
今回はミリアムの実家の会社の直接の敵である企業家のもとに潜入して、不正の証拠を握るというサスペンスでもあり復讐劇でもある手に汗握る展開だったはずなのだけれど、ミリアムにとってマコトと恋仲になれたというのは良い意味で過去に拘泥しなくてよくなった、という事のようで。勿論、会社の敵をとって現政権にダメージを与えることは大切な事なのだけれど、それは怨みや憎しみ、復讐の為というよりもマコトとの未来をより薔薇色で過ごしやすい世界にするため、純粋に将来のために、という前向きな姿勢へと移り変わっていくのがよくわかる。ただイチャイチャしてるんじゃないんだよ。ただイチャイチャしてるようにしか見えないけど!(笑
もうこれは、お幸せにー、というしかないね。
ただ、この二人はこのまま仲睦まじく頑張っていけばいいんだろうけれど、ほかの女性陣はというとなかなか厄介な進路へと進んでいる。愛しい婚約者を奪った泥棒猫を仲間ごと殲滅するために、独自の戦力を整えつつあるヤンデレお嬢様に、確固とした信念を拗らせて国をどんどん窮屈な方向へと知らず知らず追いやっている女宰相閣下。ヤンデレお嬢はともかくとして、女宰相の方は難しい立場だよなあ。ただ、彼女には賛同者じゃないけれど理解者となろうとしている人がいるので、その人がもうちょっと積極的に彼女の蒙を啓いてくれさえすれば、国の進む方向ももうちょっといい方に変わりそうなものなんだが。いや、実際に良い方に進むかはわからないけれど。閣下は今の国づくりを正しいと思っているわけですしね。でも、そんな彼女に正面から意見する人はやはり居るべきなんでしょう。殿下は、それを怠っているようだ。彼の忠実な僕であるリータの憂鬱を見る限り。
個人的には非合法な形で政権を転覆させられて当然、と思うほど宰相閣下はひどいことはしていないと思うので、特に今回ミリアムの会社が潰されたのが政権そのものの意思ではなく一部の利権主義者の横暴によるものだと分かった以上は、テロリズムで政治が変わるのではなくちゃんと真っ当な政治的なアプローチで穏当に変わってほしいものです。ミリアムとマコトの将来も、その方がちゃんと幸せになれるでしょうし。

1巻感想