羽月莉音の帝国 7 (ガガガ文庫)

【羽月莉音の帝国 7】 至道流星/二ノ膳 ガガガ文庫

Amazon

革命部VS.国家──全面経済戦争!
ロシアで宇宙ミサイル開発に着手した俺たち。だが、うまくいきすぎた。俺たちが開発した技術をかすめ取ろうとする某国は、ミサイル起動プログラムに必要な俺の眼球を奪うために諜報機関を放つ。極寒の地ロシアで、俺は沙織を連れながらの逃亡劇を強いられる。一方、俺たちをターゲットにした謀略に激怒した恒太は、その国に対し経済戦争を仕掛ける。株式、債権、石油市場に互いに介入し、莫大なカネを投じてつぶし合う革命部と国家。世紀のチキンレースが始まる ──。国際政治経済の先端を描く、ビジネスライトノベル最新刊!
と、とんでもないな、これ。100兆円を超える経済規模を有した組織が、後先考えずにその総力を投入して一国家を破綻に追い込もうなんて、あり得ないですよ。どう考えたって起こりえない。それも、個人の意思で、ですよ。たった一人の恣意的な意思によって、こんなとんでもない規模のお金が動き、経済が動き、世界が動いて一つの国家が、それもそんじょそこらの弱小国家じゃない、ロシアですよ、ロシア。ロシアが潰れようとしている。なにこれ、なにこれ、なんなのこれ!? まだこれ、革命部グループの利益に繋がっているなら理解できるし、おかしくもない。でも、実際には革命部はロシアを叩き潰すのと引き換えに、こちらも壊滅的な財政状態へと転落してしまっている。そもそも、この戦争を恒太が引き起こしたのは、幼なじみたちを助けるためというたったそれだけの為なのです。
あははははは、もうなにこれ笑うしかねえ。
同じ理由で軍隊同士が衝突する世界大戦が起こったって、ここまで唖然としなかったでしょう。兵士が銃を向け合うような、兵器同士が砲火を交えるような、そんな現場レベルの話じゃない。戦闘だの作戦だの戦略だの大戦略だのといった階梯を遥かに飛び越した、とんでもない事がこの巻では起こったんですよ? 王様や独裁者なんていう権力者程度では絶対出来ないようなレベルの事を、やってしまってる。いや、国という組織単位では絶対に出来ないことをやってしまってる。自分も潰れてもいい覚悟で国を指導してる人なんていないだろうし、そんな真似をしようとすればたとえ独裁者だってその時点で排除される。フットワークの軽さがそれこそ次元が違うのだ。たった数人の意思決定でこんな規模の経済活動が動いてしまうなら、しかも捨て身だろうと完全に私的な感情によるものだろうと拒否されること無く動いてしまうのなら、国なんて巨大な存在は絶対に勝てないじゃないか。だとすると、国家という組織の存在意義はどうなってしまうんだ? 国が個人の意志で潰されてしまうような脆弱な組織に成り果てたら、それは国民に対して責任を果たせないって事じゃないのか。実際、この巻でロシアは自分の国の国民を守れなくなろうとしている。
これは、国という単位が消滅しようとしている前触れだとでも言うのだろうか。だとすれば、すでに革命部の革命は核と大陸弾道ミサイルを入手する前の段階で佳境へと入っている事になる。
むちゃくちゃだ、ありえない。絶対にありえない、でもだからこそ凄い、とんでもない、なんてとてつもないスケールなんだ。
正直、たとえ革命がなっても沙織が望むような平穏な日常は、彼らには永遠に訪れないだろう。とてもじゃないが、この子らが畳の上で死ねるとは思えない。世界の枠組みにとって、彼らはあまりにも危険人物すぎるのだ。それこそ、彼らが望むような形の世界の枠組みを構築されたとしても、だ。

しかし、ここで巳継が沙織を選ぶとは思わなかったなあ。莉音は望んで身を引きそうではあるけれど……。

シリーズ感想