物理の先生にあやまれっ! (集英社スーパーダッシュ文庫 あ 15-1)

【物理の先生にあやまれっ!】 朝倉サクヤ/pun2 スーパーダッシュ文庫

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新人朝倉サクヤのハイテンションテキストで贈る、
理系成分満載の学園ラブ&バトル!!

アキバに突如現れた巨大ゴーレム、通称“AAE”。
その存在理由を知る日米ハーフの天才科学者・真宮ソフィー村本博士の下に、日本中から集められた21人の高校生達…。キューこと橋良九星は“AAE”のパイロットとして名乗りを上げるが、黒髪に純白リボンの美少女、綾瀬川椛にその座を奪われ…。
てっきりタイトルからして物理法則を嘲弄するように能力者が好き勝手し放題する放埒としたキャラたちが出てくる話なのかと思ったら超巨大ロボットモノでした。そう言えばちょっと昔にこんな話のアニメあったなあ。何話か見てフェイドアウトしたので、内容はさっぱり覚えていませんが。
というわけで、世界各国の都市に現れた七体の謎のロボット。物理法則を超越した世界を容易に滅ぼせる凄まじい力を持ったその「兵器」の出現を前に、ロボットに搭乗する資格を得た子供たちは如何に振舞うのか。意外なことに、これって平和と抑止力についての話になってるんですよね。夢の超ロボットに対して幻想を植えつけず、まずそれが冷厳と「兵器」であることを認めた上で、その超絶的な力をどう捉えるのか。本来ここに国の思惑などが絡んでくるのだけれど、実際それらは国家の安全保障にロボットを利用しようと暗躍はするのですが、最終的にロボットの在り方というのは、そのメインパイロットの少年少女たちの純粋な思想、あるいは願いというべきか、そこへと決定されていくのである。あるパイロットは七体もロボットが存在するのは危険であり、一番強いロボットを選抜して安全保障を一元化するべきだと主張し、あるパイロットはこんな訳の分からない容易に世界を滅ぼせる兵器は、全部廃棄するべきだと主張する。面白いことに、どのパイロットたちも主人公を含めて自分のロボットたちに愛着のようなものは抱きつつも決して夢を見ていないんですよね。それがとても危険なものだと認めた上で、真剣に真摯にその危険極まりない兵器をどうすればいいのかを考えている。
そんな中で、主人公の主張がまた興味深いのだ。
彼もまた熱く明るく軽妙な男であると同時に軽挙とは程遠い理性的で思慮深い一面を有している人物だ。まず、ロボットの有資格者と名乗りでるまでに数日、きちんとあのロボットに乗ることの意味を自分で把握し、その決断の重さを理解した上で、資格を得たことを果たすべき責任と捉えた上で名乗り出るのだ。まずこの時点で素晴らしい。そこで彼は自分が唯一の有資格者ではなく、何十人もの同じ立場の人間が居ることを知って、責任の重さが自分一人に課せられているのではないことに安心し、自分は後方に回ってメインパイロットになるヤツの支えとなることも大事なことだ、という気構えを見せるのである。それは単に責任から逃げるのではなく、今は亡き父親が遺した言葉によって彼が持つ信念でもあったわけです。一旦彼はメインパイロットとなる綾瀬川椛の勘違い暴走っぷりに義憤して、才能なんざ知ったこっちゃねえ、てめえみたいなやつはメインパイロットなんぞにしておけねえ、俺がてめえを引きずり落としてメインパイロットになってやる! とライバル宣言をすることになるのですが、最終的にキューこと橋良九星は自分が先頭に立つのではなく、その信念に基づき椛を支え、やがては他国のパイロットたちをも支える事になるのですが、いい男なんですよ、こいつ。一件軽薄でお調子者に見えるんだけど、一本芯が通ってて肝心なところでブレない。世界の平和について夢見がちな事を言っているようで、ひどく冷静に物事も観ている。理想家であると同時に現実主義者でもあるんですね。だからこそ、超兵器たるロボットに対して否定も受容もせず、ただ在る事を志操するのである。いや、それが世界を滅ぼす力だからこそ、ただ在るだけで偉としては充分であり、その充分な偉を彼の思惑はきっちりと利用していると言える。その意味で、彼の思想は夢を見ているようで実に強かであり、支持の得やすさからしても狡猾ですらあるかもしれない。
結果として、各国のロボットとそのパイロットたちはその国の権利下に置かれたまま、きゅーだけが超国家的な立場にまつり上げられたのは、象徴的な展開と言えるのだろう。何故かそれがハーレムと同義になってしまったのは単なる偶然というか成り行きですよ?
そしてきゅーは鈍感ではありません。単に優柔不断なだけです。八方美人なだけです。余計だめじゃん。

私的にはソフィー先生が一番へちょ可愛くて好みだったなあ。一応、みんなの博士ポディションなのに解説役こそちゃんとこなしてくれるものの、いちいち発言がへちょくて超然からは程遠いんですよね。むしろ、構ってあげたくなるオーラがひしひしと発報されている。これで本当にへちょい人だったら単なる弱キャラなんですが、この人の場合やたらと得体の知れない何を考えてるかわからない所もあって、ギャップ萌えも完備。猫系の綾瀬川椛に、ワンコでドMな幼なじみの米国パイロットをはじめとして、ドイツやエジプトなどパイロット諸氏がヒロインとして登場するのですが、ここはソフィー先生一押しですよ。ラスト見るとこの人がやっぱり鍵を握ってるみたいですし。侮れん。