キャットテイル・アウトプット! (MF文庫J)

【キャットテイル・アウトプット!】 神野オキナ/西E田 MF文庫J

Amazon

女装少年、少女を守る!乙女の園への潜入任務開始!?
七文字綴(ななもじつづり)は、超法的存在の組織“時限捜査官”の候補生。ある日、上官命令により、世界にとっての最重要人物とされる謎の少女・メアリーの護衛任務を遂行することになるが、潜入先の衣装として渡されたものは、お嬢様学校として有名な“聖メラヴィア女学院”の制服だった! さらにメアリーの隠された正体を知ってしまった綴は、メアリーと自らの正体を隠しつつ、女学院での護衛任務を遂行することになる。しかし、そこに二人を巻き込む黒い陰謀が……!? 神野オキナが送る、本格アクション第1弾!
ちょっ、これイラストレーターさんも違うし、あらすじなどでもまったく触れられてなかったから読むまで全然気がつかなかったんだけど、【あそびにいくヨ】シリーズのスピンアウト作品なのか!!
元々件のシリーズでもあったエージェントたちが暗躍するスパイアクションの要素をより高めた感じの話になってますね。ハイソサエティのお嬢様学校を舞台にした特殊な学園モノでもあり、スパイアクションものでもあり、と。元々、上流階級が集うようなお嬢様学校なんてのは、そこに通っている子女からして普通の学校よりも政治の闇に対する親和性が強いですから、百合百合しい女学園モノとハードなアクションが並列として処理できる非常に美味しい作りになってますよ、うんうん。
【あそびにいくヨ】がちょっと緩すぎて緊張感のなかった所があったのに比べて、こちらは決して緩さがないとは言えないのですけれど程よい緊迫感が持続していて、作者の作品の中では【疾走れ、撃て】タイプの方に近いのじゃないかと。メアリーのバックストーリーがあの「傭兵国家」出身というのも、エージェント色が色濃く出る要素になってるのかな。何れは【シュレイオー】組も出るのかしらん。
何よりこの物語を程良く引き締め、しかし追い込み過ぎずにゆったりとした雰囲気も併存させている要因となっているのが、主人公の片割れである七文字綴のキャラクターでしょう。この子が素晴らしいんだ。冒頭から別に隠してないし、あらすじ見ればわかるのでぶっちゃけますが、彼は彼であっていわゆる女装してメアリーの身辺警護につく、という形になるのですが、彼、良い意味で凄く余裕があるんですよね。女装男子、あるいは男の娘という類型は、圧倒的に小娘が多いのだけれど彼については「可愛い」じゃなくて、断然に「美人」というタイプ。それも容姿云々よりも内面が「美人」と言っていい。おとボク2の千早ちゃんに近いタイプと言ったらいいか。
シャープで冷静沈着でスマート、やることなすこと卒がないあたりは非常にプロフェッショナル、という感じなのだけれど、言動は研ぎ澄まされているというよりもむしろポワンとした余裕があって穏やかで気配り上手。傍にいてホッと安心させられる感じなんですよね。頼りがいがあってこちらの弱さを優しく受け止めてくれそうな女性的な包容力も醸し出していて、カッコイイのはすごくカッコイイのですけれど、男性的なかっこよさじゃなくて女性的、そう「美人」なかっこよさ。男女問わずに惚れ惚れするような。
これはいい主人公ですよ。物語を引き締め、アクションを映えさせ、登場人物同士の交流に彩りを与える。いや、主人公はあくまでメアリーの方なのかな。あくまで彼の役割は彼女のパートナーって感じですし。
そのメアリーの方も、実は【あそびにいくヨ】の方ではまるで印象残ってなかったのですが、エリスみたいな野放図な脳天気さはなくて、きちんと自分の任務に責任感と気負いを抱いている生真面目タイプ。あの種族特有の純真さも備えてますし、新しい土地での交流でいい成長をしてくれそうな、これも良い主人公だなあ。
いや、これは面白かったです。キャーティアと人間との関係もより深刻で真剣な形で突き詰めてくれそうですし、期待のシリーズだ。