半熟作家と“文学少女”な編集者 (ファミ通文庫)

【半熟作家と“文学少女”な編集者(ミューズ)】 野村美月/竹岡美穂 ファミ通文庫

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あ、あかんあかん、そのカップリングは危険過ぎる。ブレーキがついていないじゃないかっ! そっちの文学少女は他人に力を与え、元気にしてくれるという意味で稀有な人だけれど、ちょっとパワーがありすぎるんですよね。だから、内省的で腰の重たい人を相手にすることで丁度バランスが取れるくらいなんですよ。すぐに調子にのってしまういい意味でも悪い意味でも「お馬鹿」な人と掛け合わせるとエラいことになってしまうぞ! それぞれ一人ひとりでも周りの人達が頭を抱えるような「お馬鹿」なのに、掛け算してしまったらそれはもう惨劇ですがなw
個人的には彼は御同輩のお姉さん作家さんの方がお似合いだと思うんだけどなあ。あの人とは良い意味で足を引っ張りあえて、助け合えるパートナーになれそうな気がするのだけれど。

という訳で、最終巻は編集者として活躍する遠子さんに担当してもらってる、少々夜郎自大なところのある売れっ子高校生作家くんのコミカルな奮闘記でした。正直、たとえウェブ上の評価でも平均☆一つは相当だと思うぞw
遠子さんは相変わらずの遠子さんでした。もうそれなりの年齢になってるはずなのですが、この人はいつまで経っても少女だ。このシリーズには沢山の女性キャラクターが登場したけれど、どんな年齢になっても変わらず少女性を失わないでいるのだろうな、と思わされたのはやっぱりというか、文学少女を名乗ったあの二人だけのように思える。大人の女らしさとはとんと縁がないだろうな、というイメージだとも言えるけどw
だからと言って、セーラー服は無理があると思いますよ、遠子さん。似あってしまうのは逆に問題なんじゃないかと思われw
ただ、作家に作品を書かせるサポート役としての編集者としての姿勢や腕前には、かつて井上後輩と接していた頃のそれとは別格の、確固とした自分の仕事としてのスタイルを確立している。自分の役割への自覚と、作家に対する責任感。それはまさしく、プロの編集者としての姿勢だ。ああ、遠子さんもちゃんと社会人になったのだな、と安心するやらちと寂しいやら。井上くんとの仲は初々しいまでに順調のようで、実に幸いである。
しかし、この遠子さんの姿は作者の編集者に対する理想型なのかなあ。

そんな遠子さんに面倒を見てもらう本作の主人公くんは、いい意味でも悪い意味でも人生が陽性のヤツだった。まあ、このシリーズ本編に出てきた連中みたいに指先で触っただけでひびが入ってしまそうなほど繊細すぎる脆くて危うい心の持ち主に比べたら、よっぽど人生を健全に過ごせそうなイイ子なんだけどね。ちょっとでもこの子みたいに自分に自信を持ててたら、数々の登場人物たちももうちょっとイイ方向に舵を切れたかもしれないのに……ああいや、爪の垢を煎じて飲むなら、こいつよりも文学少女見習いの方がよっぽどいいか。

ともあれ、これにて文学少女シリーズも本当におしまい。こんなにホンワカと幸せな雰囲気で終われるとは思わなかったなあ。みなさん、お幸せに。

野村美月作品感想