俺の妹がこんなに可愛いわけがない 8 (電撃文庫 ふ 8-13)

【俺の妹がこんなに可愛いわけがない 8】 伏見つかさ/かんざきひろ 電撃文庫

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「私と付き合ってください」

 新たな局面を迎えた恋愛模様。
 そして──
「きょうちゃん。────おこるよ?」
「貴様等、そこに並んで正座しろ!」
「恋人ができたそうですね、お兄さん」
 俺の全方位土下座外交が幕を開けた。
 幼馴染みに三年ぶりのマジギレ予告をされたり、あやせに火あぶりにされかけたり──
「五更日向です。──こっちは末っ子の珠希」
 新たな登場人物も加わって高校生活最後の夏休みは毎日が大騒動だ。
 そんなある日、黒猫が『運命の記述』と題された予言書を見せてきて……?
 予言書に秘められた少女の“願い”とは!?
 兄妹の関係にも、一大転機が訪れる、人気シリーズ第8弾!
本当に全方位に対して土下座しまくりやがった、この兄貴w この巻だけで何回土下座したんだ、兄ちゃん。
という訳で、激動の第8巻。いやあ、色々な意味で想定していた部分を上回ってきた。黒猫に対する京介の本気度や、桐乃の兄への本心や黒猫と付き合う事に対する態度。そして何より、黒猫の姿勢が。
先の巻の感想でも触れているように、黒猫は桐乃から京介を奪うような真似はしないと考えてたんですよね。桐乃の兄への好意を尊重して、たとえ恋人になっても桐乃の居場所を取ってしまわないように立ち振る舞うものだと。実際、予想通り黒猫は告白することを事前に桐乃に相談していましたし、恋人として京介の部屋に遊びに来た時、桐乃をハブらず一緒に遊ぼうと働きかけていましたし(というか、黒猫が桐乃にあんなに素直に積極的に一緒に遊ぼうと誘ったのって初めてじゃないのか?)。ただ、あれ? と思うところもあったんですよね。黒猫の誘いを桐乃が物分りのいい妹の態度で退いてしまったシーン。そして、何よりあの黒猫の願いが描かれたノートの最後のページのイラストですよ。あの絵の描写を読んだ時、何か自分、黒猫の思惑について決定的に見誤っていたんじゃないかと、或いは過少に見積もっていたんじゃないかという感覚がモワモワっと湧き上がってきたのでした。
それまでのイメージからすると、桐乃の場所に黒猫自身が居て、逆に桐乃を黒猫たちが迎え入れる、という構図で黒猫の心象を捉えていましたからね。あのイラストの構図はかなり虚を突かれたんですよ。
ああ、逆だったのか、と。
だから、最後の唐突な展開は黒猫の思惑がわかるまでは何が何だかわからずに混乱させられましたけれど、彼女の意図がはっきりした後は随分とすんなりと納得させられました。それでも、黒猫があそこまで能動的で欲張りだったとは思わなかったなあ。京介はどうやら根本のところで理解してないみたいだけど、黒猫の理想が叶う為には、桐乃に彼氏が出来るなんてことは論外だと思うぞ。

それにしても、異性と付き合うのは初めて同士な黒猫と京介の初々しくも微笑ましい熱々っぷりにはニヤニヤしっぱなし。いやあ、黒猫がやたらと可愛かったのは当然として、それにも況して可愛かったのが京介兄ちゃんというのはどうなんだろう(笑 恋人が出来て浮かれまくってる兄ちゃんの可愛いこと可愛いこと。デートすればするほど黒猫に夢中になっていく姿は眩しいばかりで、この巻のヒロインは間違いなく京介でございました。
可愛い以上にキモかったけどな!!
最近の京介は妹に「キモッ!」と言われても「まさにその通り!」と諸手を挙げて賛同されても仕方ないくらいキモいぞw
でも、ここまで京介に本気で惚れられてたんだから、黒猫のやり方は家の事情が絡んだ上に理想を手に入れるためとはいえ、ちと直球すぎた気がする。女としてはもっと狡いやり方をしても良かったと思うんですよね。変なところで潔癖というか、正々堂々としているところがあるんだよなあ、瑠璃っぺは。現状で、既に桐乃は黒猫を充分認めてるんだから、何も一旦精算しなくても手練手管を駆使すれば現状を保ったまま理想型へとこぎつけることは不可能ではなかったはず。でもまあ、そういう腹芸が出来ない子なんだよなあ。すっげえ不器用だし。
それに、直球だからこそ、桐乃の本音を引き出せたとも言えるし。
本編初ですよ。桐乃があそこまで心底を底の底までさらけ出したのは。正直、桐乃があそこまで自分の想いをぶっちゃける日が来るなんて思わなかった。えっ、そこまで言っちゃうの!? と仰天したくらい、ぶちまけましたし。
とはいえ、全部告白してしまったとはいえ、その告白の「解説」はしてないんですよね。お陰で色々と解釈できる余地が残っている。今回はこれまでと比べても非常に分かりやすいとも思いますけどね。京介と兄貴の使い分けとか。案の定、京介はわかってないようだけど。でも、無意識下ではちょっとヤバくなってるかもしれないですね。事故って桐乃を押し倒してしまった時の反応なんか、前の時とえらく違ってしまってますし。あれはもう「妹」に対するものではなくなってるだろう。
そう考えると、黒猫の理想は着実に実現化しつつあるのかもしれない。

ラスボス化著しい麻奈実ですけど、果たして彼女は黒猫をどこまで危険視してるんだろう。えらい余裕だけど、彼女の解釈からすると一番着実にハードルクリアしつつあるのは黒猫其の人なんだけどなあ。黒猫が想像を上回る勢いで麻奈実のアドバンテージだった以心伝心の所帯染みた居心地良い女房ポディションを、初々しい恋人関係と並列して構築してしまっただけに、一体どうするつもりなのか。
今回、京介が麻奈実に一切相談もせず頼らなかった、というのはわざわざ印象づけて描写している以上、何らかの意味はあるはずなので、今後ラスボスの動向は気にしておいた方がいいかもしれない。

まあ、一番わけわからなかったのはあやせですけどね。彼女だけは何考えてるか本気でわからん。いや、ものすごく分かりやすい気もするんだけど、危なすぎて判断しづらいw

しかしこれ、この「俺妹」という作品としてのオチはどう締めるつもりなんだろう。なんか色々な方向に精算されちゃいましたし、結末が全然見えなくなっちゃったんだけど。そもそも、関係性を元に戻す必要だけはなかったと思うんだけどなあ。要は、桐乃の気持ちの落とし所を確保さえ出来ればよかったはずですし、それなら表面上の関係性は斯くの如き状態にしたとしても、京介に黒猫との事を「ああなった」と思ってしまう形にしたのはちとモヤモヤが残ったかな。出来れば、気持ちまで「精算」されてない事を願うばかり。それだと、黒猫さんが完全に二兎を追うものは一兎をも得ず、という有様になってしまい、ちょっと可哀想過ぎますからっ。まあ、自業自得な気もするけどw